上位の批判的レビュー
5つ星のうち3.0銀河の歴史がまた一ページ
2016年2月19日に日本でレビュー済み
小説版を読んだ上での感想です。切り離して感想を述べるのは難しいので漫画のみでの感想ではありません。ネタバレも含んでいます。
とても意外なことに銀英伝の漫画化です。荒川版アルスラーンはよほど成功したんでしょうか?ただ作画がフジリューと聞いて読む前は不安でした。封神繋がりもありますし、コミカルな中にたまにダークな作風は創竜伝ならわかります。しかしまさかの銀英伝。事前公開されたイラストもヤンとラインハルトが子供に見えて不安はさらに増加。
不安の中で読んだ1巻は、意外なことに地味でした。良い意味で。話の進行を大胆に変更しているのは正しいだろうと思います。小説通りにやると、まず最初の帝国成立までの背景説明で一話終わります。そこをすっ飛ばしても、いきなりの艦隊戦というのは連載漫画ではハードルが高すぎます。まずは中心人物に読者に愛着を持ってもらうため、生い立ちから始めるというのは連載漫画という形式では理解できます。ヤンではなくラインハルトというのも頷けます。黙々とツボを磨いている子供を書いても後々に繋がりにくいでしょう。その点、ラインハルトの子供時代はある意味ドラマティックでわかりやすい復讐譚&サクセス・ストーリーなのでハードルも低いです。
小説版のラインハルトは子供の頃から将来皇帝になる以外の道はなさそうなキャラでしたが、漫画版ではより子供らしさが強調されています。漫画版のラインハルトを見るともしあのままアンネローゼに見守られて成長していれば、別の人生もあったかもしれないと思えます。それだけに一層悲劇的です。アンネローゼの描き方も良かったです。とても重要な人物でありながら、小説版では出番が少なすぎて今ひとつ謎の女性です。思慮深く大人しい女性なのかと思えば、緊急時はアクションこなしたりもしますし何を考えているのか捉え切れない部分がありました。でも1巻を読んである程度納得できました。アンネローゼは子供だったんですよね。でも年寄りの愛人になるのは嫌だとワガママをいうほど幼くはない。諦めるしかないと理解していて、でも弟を諭すほど大人でもない。アンネローゼの悲しさがよく伝わってきました。この二人の描かれ方は良かったです。また、年嵩の子どもたちに呼びだされたラインハルトが、反撃の際にちゃんと石を握りしめていたりする点も原作を読んでいればニヤニヤできてよかったです。
しかし全体的な感想で言えば、まだ1巻だけではなんとも言えません。ラインハルトやアンネローゼに比べるとキルヒアイスがギャグ顔に傾きすぎているように見えますし、重厚さが薄れて軽めに仕上がっています。今後登場する膨大な登場人物(とくに中年男性)をどこまで描き分けできるのか不安もあります。ヤンは後ろ姿しか出ていませんがシルエットが少し気になります。ガニ股?O脚ぽく?見えますね。猫背ならイメージ的にわかるんですが。それに外伝までフォローしているようで完結までどれくらいかかるのか?田中芳樹作品の漫画化は頓挫してばかりですが、本編に外伝プラスでどこまでいけるのか?漫画としてはかなり地味に進んでいますが雑誌はどこまで許容してくれるのか?いろいろ不安です。不満ばかり言いましたが、2巻に期待したいです。