漸近論は修士レベルの統計、計量経済学には必須のツールである。しかし、その厳密な理解と利用にともなうハードルはかなり高い(とくに独学する者にとって)。本書のレベル感は、van der vaartやshaoやlehmanのテキストが読みにくい分厚い難しいと思う人にとってのTips集、読みやすさ的には舟木確率論の漸近論特化版といえるであろう。1章ごとに1定理(と補題いくつか)と簡潔ながら、演習問題(なんと解答つき)が各章に5つほどついており補完的なトピックを扱っているため、網羅性はそれほど下がっていない。 ちなみに原書は1996年発行、原稿が作られ始めたのは20年以上前とのことなので1976年前後。主要な漸近論のツールが作られていた時代に編まれていった講義ノートが元である。ただ、記法がぐちゃぐちゃしていたり、花文字の印刷が汚かったりと内容以外の読みにくさがなかなかしんどかった。しかも、原書はamazonだと1万円超える。日本人でよかったと思える瞬間も味わえる。