Life after redundancy

 梅原さんが小説を書き始めたのは12年程前、高校生の時だった。大学時代から本格的に作家を志し、小説に没頭する。社会人となってからも、勤務時間以外は寝る間も惜しみ、平日も深夜まで執筆活動を続けてきた。彼の戦いは常に孤独だ。彼が小説を書いていることを知っているのは1人の友人だけで、「人に気兼ねせずに書きたいことを書くため」と家族にも、同僚にも話していない。梅原涼という名前もペンネームだ。これまで何度も出版社が主催する新人賞に応募したが、門が開くことはなく、悔しさを1人で飲み込んでは、読者を持たない小説がいくつも積み上げられていく歳月が過ぎた。

 そんな静かな生活に変化が訪れたのは、2012年12月。日本でも販売が開始されたAmazonのKindleが梅原さんの元に届き、Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)の存在を知った時からだった。

 「それまで新人賞を獲る以外には、小説家になる道はないと考えていたのですが、KDPでは作品を自分で販売できると知り、大学時代に書き、自分でも良く書けたと思っていた『お前たちの中に鬼がいる』をその日のうちにアップロードし、KDPで販売することにしました」

 それは作家・梅原涼がこの世界に誕生した瞬間だった。長編小説『お前たちの中に鬼がいる』は、テレビゲームの要素を盛り込み、状況が繰り返しリセットされる不条理なホラーから、ミステリーに切り替わる斬新な展開が話題となり、AmazonのKindle本ベストセラーのTop 10まで上り詰める。これまで埋もれてしまっていた作品が、多くの人から評価されたのだ。

 「たくさんの方に読んでいただくことができて、素直にうれしかったです。販売初日から作品が売れ、無名の自分の作品を買ってくださる方がいることに驚きましたし、やった!と思いました。初めてカスタマーレビューが掲載された時も、とてもうれしかったですね。販売数が伸びるにつれ、自信が深まりました」

 Kindleでの販売開始から半年が過ぎた頃、出版社から打診があり、書き下ろし短編を加えた改訂版の『お前たちの中に鬼がいる』が、単行本とKindle版で2013年11月に発売された。斬新なホラーミステリーの作家として梅原さんはメディアからも注目を集め、広く認知される存在となる。現在は数社から執筆依頼を受け、構想を練っているところだという。

 「Amazonのランキングで注目されたことをきっかけに、出版社から本を出版でき、執筆を依頼していただけるようになりました。次回作も、皆さんに楽しんでいただけるような、エンターテイメント性のある作品を書きたいと思っています」

 新人賞獲得という呪縛から解き放たれた梅原さんは、ようやく得られた読者の期待に応えたいという、作家としての使命感を強く感じているようだ。しかしその一方では冷静に自己を見つめ、1人の表現者として自分が何をしていくべきかも模索している。

 「作品を発表することは、社会とのつながりを持つことだと思うので、これからもどんな反響があるのか楽しみです。自分はまだ作家としてスタートしたばかりで、つまずく可能性もありますから、しばらくは仕事と作家活動を両立していくつもりです。いつかは自分の納得のいく文学作品を書きたいと思っているので、とにかく書き続けて力をつけていきます。書き続けていく自信はありますから」

 梅原さんは現在28歳。今日も全力で小説と格闘している。


「たくさんの方に読んでいただけて、素直にうれしかったです」
梅原 涼さん

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