カスタマーレビュー

2018年5月25日に日本でレビュー済み
日本最古の物語である竹取物語、日本人であれば子供の頃から知っている人が多いあまりにも有名な話です。
今まで散々アニメ化や絵本化されている作品です。

「かぐや姫の物語」は、手描きの絵が動いているような映像表現がとても懐かしく、温かい。
CGやデジタルでの表現が多いアニメ業界ですが、今作は手作り感のある「絵」を見ているだけで感動します。

水彩画の美しさ、線画の力強さ、色彩の優しさ。とにかく絵の魅力が素晴らしい。

ストーリーも素晴らしい。かぐや姫の喜怒哀楽に感情移入してしまいます。
かぐや姫の幼少期を丁寧に描いているのですが、それが後半やラストシーンに深みを与えています。
全体を通してみると、はっきり言って辛くてせつなくて悲しくなる。決して明るい話ではないです。

幼少期の姫は毎日が楽しくて幸せだった。
都に出てからの姫はカゴの中の鳥状態。毎日退屈で辛い日々。
どうしようもないクズ男どもばかり寄ってくる、今で言うセクハラパワハラばかりです。
翁は結婚こそが姫の幸せと望んでやまない。そんなことは望んでいないのに。
姫は板挟み状態でどんどん追い込まれていきます。

幼少期に出会う「捨丸」はジブリ版のオリジナルキャラですが、
かぐや姫の辛さを表現する上で必要不可欠な人物であると思います。
不倫じゃんなどと言った薄っぺらい感想もよく目にしますが。

特に斬新だったのはラストシーンです。月の天人がお迎えに来るのですが…

この物語において、「月」とは「あの世」。
あの世へ帰ると言うことは「死」を意味します。「無」になると言うことでしょうか。
「阿弥陀聖衆来迎図」が出てくることでその意味がわかります。
つまり、地球は「この世」なんですね。生と死の表現が素晴らしく斬新でした。

地球に想いを寄せたことが「罪」、地球で生きることが「罰」。
この辺のことをしっかり解釈できるかできないかでこの物語の評価も変わってくると思います。

人間の「生」の尊さ、辛いことが多い世の中だけど「生」は尊い。
かぐや姫は「死」を目前にして「生」の素晴らしさを痛感し月に帰る事を拒絶します。
問答無用で月から迎えにきた仏様は衣を着せてしまいますが。

かぐや姫が最後に地球を振り返るシーンが本当に感動します。
月へ向かう(死へ向かう)途中、色もモノクロになっていきますが、一瞬ですがモノクロになった色が鮮やかに戻ります。
この瞬間、かぐや姫は地球での記憶を思い出したはずです。目からは涙が溢れています。

こんな素敵な作品を世の中に残してくれた高畑勲監督、あなたは偉大です。
何度も何度も繰り返し観ていたいと思える最高のアニメ映画です。
本当に感動しました。素敵な作品を届けてくれてありがとうございました。

今作においては音楽も素晴らしく、サントラもお勧めします。
主題歌である「いのちの記憶」もいつまでも心に残り響く曲です。
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