カスタマーレビュー

2019年10月13日に日本でレビュー済み
本書のあとがきに「感動したことを書く、あるいは心が激しく動いたことを書く、この本に集めた小説はすべてそういうシンプルなものです」とある。なるほど、そういう作家だろう。だからこそ、私は保坂和志氏の「猫小説」を読み続けてきたのだ。この著者の猫を愛でることばには偽りがない。登場人物たちのさりげない会話に、いつも思いがけない深みがある。大事件など何一つ起こらない淡々とした日常の描写に心がなごむ。『ハレルヤ』を見つけたときにも、「おっ、新作が出たのか」とさっそく入手。しばらくツンドク状態だったが(この作家の本は、ツンドクだけで安心だ。時間ができたら読もうと楽しみに毎日を暮らせる)先ごろ、実家の猫の死をきっかけに、ついにこの本を読むに至った。闘病中の猫の話だった。だが、読みすすめるうちに「闘病」しているのは猫ではなく、なんとか猫を一日でも長く生かそうとする人間の方なのだと思わされた。猫は闘わない。猫はただありのままに、一回性の限られた命を生きているだけだ。これもまた、あとがきに「世界があれば生きていた命は死んでも生きつづける。世界があるからこそ命は無になることはない。」とあったのが、実に保坂氏の作品らしい味わいだった。
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