カスタマーレビュー

2017年1月6日
私は、昨年、恵比寿のパシフィックファニチャーサービスで開催されていた著者の岡本尚文さんの個展で
この写真集を買いました。
A&WやPIZZA IN などをはじめとした英語表記のサインや看板、店舗。
また夜空を頻繁に行き来する米軍機や、延々と続く基地のフェンスなど...。
沖縄に存在しつづけているアメリカとその痕跡が、写真家の意志と視点で丁寧に切り取られていて、
そこに変な郷愁や感傷などが加えられずに、淡々と撮影された風景写真です。
昼間の太陽のもとでは、沖縄の風景としてすっかり馴染み、
善くも悪くも見慣れてしまったそれら「アメリカ」が、夜の暗闇の中で不思議な存在感を放っていて、
なにか、こころが、ざわざわっとしました。

また、この写真集に寄稿されている、社会学者の岸政彦さんの文章がとても素敵です。
私は岸政彦さんをこの写真集で初めて知り、『断片的なものの社会学』をすぐに購入して読みましたが、
この写真集に描かれている文章は、まるで『断片的なものの社会学』の中の一編のようで、
やさしく、せつなく、そして読んだあとに何かがザラッと残ります。
以下は、その『彼方と過去 ― 存在すべきではなかったものたちの存在』からの一節です。
“「沖縄のアメリカ」の痕跡は、その多くが、1950年代に残されたものだ。
だからそれは、はるか遠い彼方からやってきたというだけでない。
それははるか遠い過去からやってきたものだ。
彼方と過去。ここにはふたつの距離がある。
これは、そこにあってはいけなかったものの存在の物語、
出会ってしまってはいけなかったものたちの出会いの物語である。”

この写真集の沖縄の夜の風景には、数点の写真をのぞいては、まったく人影がありません。とても静かです。
なのに、写真を見ていると、何故か不思議とアメリカンミュージックや米兵でにぎわっていた
当時の喧騒までもが聴こえてくるような気がしてきます。
まさに岸さんが書いている「はるか遠い彼方」と「はるか遠い過去」が、
一枚一枚の写真の中に凝縮されているように感じました。
そして私は、この「現在」の写真たちはまた、「はるか遠い未来」へと続いていると思うのです。

私はこの写真集と出会って、あらためて沖縄で起きていたことについて考えたし、またそこから、
私たちが生きているなかで抱えている答えの出ない様々な矛盾のようなものについても、
考えるきっかけとなりました。
久しぶりに、とても素敵な写真集と出逢えました。
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