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カスタマーレビュー

2019年5月17日
以下ネタバレ含みます。

大変な力作でした。
例えるなら細かく設計され緻密に組み立てられた建築物のようです。
伏線が豊富に張り巡らされ、ミステリとして上質なだけでなく、運命に翻弄された悲劇的な人物の痛ましさを見事に表現しています。
しかも面白いのは、彼らの心理を直接描写するのではなく、刑事(途中から元刑事)の謎解きの過程で否応なく読者に想像させる構成をとっていることです。
明かになった事実の圧倒的な悲劇性が、読者の心を締め付けます。
この小説には、1973年から1992年の19年間に現実の日本社会で起こった出来事がいくつか登場します。
小説内で起こる出来事を現実の出来事とクロスさせることによって、読者のミスリードを誘ったり、作品に自然さや説得力を持たせています。
例えばオイルショックによるトイレットペーパー買い占め事件。寺崎の事故死を引き起こした亮司による車への細工の事実が(これは、亮司の所有している本のタイトルによってほのめかされています)、この奇妙な現実の事件によってうまく隠されています。
亮司が藤村都子レイプ事件の際に菊池文彦を陥れようとした時には映画『ロッキー』が、金城と松浦が堅気の仕事で生きて行こうと前向きな気持ちを抱いていた亮司を再び犯罪の道へと引き込んだ際には『スーパーマリオ』が登場しますが、これらの作品の人気ぶりは彼らの行動の動機付けに説得力を持たせます。
そして宮崎勤による事件は、亮司が父親を殺害した動機を笹垣が理解する上で重要な示唆を与えます。笹垣は弥生子から桐原洋介の少女性愛の趣味の話を聞いた時点(1987年)では、洋介による雪穂買春の事実に気付きませんが、その後宮崎勤が逮捕される出来事があり(1989年)、篠塚一成から川島江利子レイプ事件の話を聞いて(1992年)、ようやく雪穂自身が大人による買春やレイプの被害者だったことに気付きます。ここでも、現実の日本社会で起こった出来事が話にリアリティを与えることに貢献していますし、それどころか笹垣が事件の全貌を理解する上で重要な役割を果たしています。
作者は想像の産物である小説を現実とリンクさせることによって得られる効果を理解した上で、意識的にこの手法を用いているものと思われます。そしてそれは成功していると思いました。
この小説は、今枝直巳の活躍に焦点が当てられている第十章を除いて、全ての章で亮司と雪穂が犯す犯罪が描かれています。今枝の死が一つのきっかけとなって、笹垣と篠塚一成がつながり、笹垣と栗原典子がつながります。笹垣は一成の言葉によって亮司の父親殺害の動機に気付き、栗原典子と会うことによって亮司の一成に対する不正(ハッキングによる篠塚薬品の社内情報の漏洩)を知り、それを康晴に報告する過程で偶然亮司による松浦殺害の物的証拠を発見します。
無駄な人物や無駄な場面というものが存在せず、全てが完璧に計算され、緻密に物語が組み立てられています。
何かに憑りつかれたように犯罪を繰り返す二人を、笹垣は偶然に助けられつつも執念で追い詰め、亮司の(おそらく)自決によってこの悲劇は幕を下ろします。
読後は、達成感や喜びよりも、一種の空虚感、呆然とした感情に支配されます。子供の頃の二人を飲み込んだ暗黒の底知れぬ深さと冷たさを思うと、犯罪者とは言え同情の念を禁じ得ません。
作品の叙事詩的なスケール、二人を見舞った運命の救いのなさ、徹底した抑制的表現、読後の余韻の大きさ、それらに読者は圧倒され、打ちのめされます。
質の高い大作を読む醍醐味を十分に味わわせてくれる作品でした。
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