カスタマーレビュー

2018年6月2日に日本でレビュー済み
久し振りに本書を再読したのだが、あまりの面白さに時を忘れて読み耽り、結局、夜を徹して一気読みをしてしまった。なんとまあ、こんな面白い作品だったとは !!
初版発刊は平成8年。戦記物が好きな私はタイトルにひかれて迷わず購入、リアルタイムで読んだ。あの頃は私も若かった。当時の私の感性では本作品の面白さを十全には理解していなかったようだ。
だから読み返した事は大正解。危うく本書の本当の面白さを知らずに死ぬところだった。
あぶねー(笑)。

後半半分を費やされた伊58潜水艦と重巡インディアナポリスの駆け引きと戦いの描写は圧巻 ! 手に汗握るとはこの事だ。 「Uボート」や「U-571」「眼下の敵」などの潜水艦映画を観た事もあって、爆雷を受けた時の衝撃や艦内の凄惨な状況が脳裏に映像として浮かんでくる。
また、著者の微細に拘った筆致がリアリティを生み、緊張感を高めている。潜航が長引き、酸素不足になった艦内の描写を読んでいると息苦しくなってくるほどだ。
伊58とインディアナポリスが邂逅に至るまでの経緯が、両艦を操舵する永井少将とマックベイ艦長が昔日に知り合っていたというエピソードと共に語られるという構成も見事。そのエピソードが伏線となり、クライマックスで両勇が対戦した時、相手の裏の裏をかくという心理戦となって生かされ、ボルテージをいやが上にも上げている。
この伏線回収もお見事。

終戦年の7月、南太平洋上において伊58がアメリカの重巡インディアナポリスを雷撃、撃沈したのはまぎれもない史実。著者の言によれば、史実半分、虚構半分との事だが、よくぞここまで微に入り細に渡って調べ、うまく虚実取り混ぜて描いたものだと思う。
しかも、これが著者のデビュー作とは!

エピローグはグッとくる。
永井少将の指揮のもとで万難を排して、2名の殉職があったにせよ、生長らえて帰港できた事を著した最終章は感動的である。
私は艦の甲板での、永井少将の訓話の箇所を読んで不覚にも落涙してしまった。そして彼の男気にも…。
倉本艦長が涙と共に下令した「永井少将閣下に対し、敬礼 ! 」は読者の気持ちを代弁した言葉でもある。永井少将へのリスペクトを、倉本艦長と回天搭乗員をはじめとする乗組員たちと共に、我々読者も体験するのである。
最後に、艦を去る永井少将に対し、倉本艦長が「総員!帽振れ!」を下令する。静かに去り行く永井少将の背中を見た気がした。

感動した。この最終章を私は嗚咽と共に読み終えた。
そして、ラストのなんという余韻だろう。

こんな骨太で男気溢れる小説を読んだのは久し振りだ。イメージで言うと、映画「七人の侍」を観た後と似たような読後感を私は持った。

「雷撃深度一九・五」を読み終えた今、この感動の余韻にしばらく浸っていたい。
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