カスタマーレビュー

2016年12月17日
(お手数ですが)俺の前レビューを読んでいただければわかるように、自宅が地震で全壊した。
「2000年建築基準」どころか、「1981年改正建築基準法」よりも以前に建てられた家なので、「ダブル震度7」には耐えようもなかった。
嫌でも建て替えなければならない状況は、嫌でも「家について勉強しなければならない」状況でもある。
「なぜ倒れたか?」で始まる本書は、そのスタートになる本といってもよい。

前半(PART1~4)で熊本地震の詳細な被害状況と原因を、後半(PART5~7)で建物の倒れ方や筋かいの強度に関する疑問などが述べてある。
大地震発生からわずか4か月あまりでここまでの内容の本を出版できたというのは驚きだ。
このスピード感は、「早く本当の事が知りたい。そして先に進みたい」と考えている被災者も大いに助かる。

前半、とりわけ詳細に調べてあるのが、「2000年基準(新耐震基準)の建物であるにもかかわらず倒壊した家」の事だ。
一例として調査された倒壊家屋の耐震等級は「2」だった。これは2000年基準の1.25倍(地域係数を加味すると1.12倍)であったが、本震で1階層崩壊した。
日経ホームビルダーのチームと協力者たちは、実地調査やシュミレーションを重ね、「地盤」「筋交い」「耐力壁」そして「直下率」・・・と、倒壊した原因を突き詰めてゆく。
木造住宅のモデルでシュミレーションをした大学教授は述べる。
「前震と本震を入力した場合の最大変位は、本震だけ入力した場合の2倍超。2回続けてこのような大きな地震動を受ける場合、現行の耐震基準を何とかクリアできる程度の耐震性能では大きな被害になる」と。
地震後に行われたネットアンケートによると、実務者(家の作り手側)の3割が「今の耐震基準では木造戸建住宅は大規模半壊する」と回答している。「倒壊する」「全壊する」まで含めると、何と5割を超える。

後半には、実物振動破壊実験で、「長期優良住宅」の耐震基準を満たした木造3階建て住宅が倒壊した過程と原因が述べられている。
実験は、試験体が3階建てであり、かつ、長期優良住宅が想定する地震波よりも強いものが用いられたこともあり、「想定を超える力が加われば倒れる」という当たり前の事実ではあったものの、これを単に「力学現象」とみるのではなく「人が住む建築物」として虚心坦懐に受け止めるべきであると述べてある。
建築業界全体が「想定を超えても倒れてはいけない家づくり」を目指すのなら、地震国の未来は多少とも明るい。

「PART6」は「筋かい」について述べた章。
筋かいの角度や高さ、柱間隔に関する規定は、「建築基準法」も「木造住宅の耐震診断法」も記しておらず、作り手側の判断に委ねられているが、高さ約2730~3000mm、柱間隔910mmが標準的。角度は70~75度になる。
角度が急すぎたり緩すぎたりすると筋かいの強度は下がる。
また、「たすき掛け筋かい」の場合、筋かいに「節」がある場合などについて、大学教授が「私がお答えします」と分かりやすくまとめてある。

本書を読むと、「壁量計算」「N値計算」「アンカーボルト」「ホールダウン」「ほぞ」「出隅の仕口」などの“建築ワード”が頻繁に出てくる。
「用語説明」などのコーナーも無いので素人にはややとっつきにくい。
オールカラーで写真も図も豊富だけれど、どちらかといえば実務者(住宅メーカー)側が読むべき本だろう。
しかし、「家を建てる」という人生最大の買い物をする状況にあっては、面倒でも“建てる(依頼する)側”が勉強しておかなければならない。
何の知識も持たずに住宅展示場の営業担当者の一方的な話を聞いても、カタログを読んでも、構造見学会に参加しても、なんだかよく分からず茫然とするだけだ。
大地震のあとは売り手市場となる。数をこなすためにメーカーに手抜きをされてはたまらないし、依頼側も「建築とかよく分からないので全てお任せします。とにかく早く作ってほしい」では後々後悔するかもしれない。
俺のような被災者だけではなく、マイホームを夢見る若い夫婦からリフォーム・耐震補強を考えておられる方まで、事前に読んでおく価値がある本だと思う。
ちなみに住宅展示場で「直下率」について尋ねたところ、「何ですか直下率って?」と聞き返した営業が複数人いた<(_ _)>
38人のお客様がこれが役に立ったと考えています
0コメント 違反を報告 常設リンク

商品の詳細

5つ星のうち4.4
10
¥2,640+ Amazonプライムなら、お急ぎ便が無料