カスタマーレビュー

2010年12月20日に日本でレビュー済み
ようやく読み終えたという感じです。しかし、御巣鷹山篇からぐいぐいと物語に引き込まれていきましたが、最後はあっけない感じがしました。決して勧善懲悪のハッピーエンドを求めているわけではないのですが、ここで終わり?という気がしないわけではありません。

最初から一貫してあった事は、主人公に共感出来る事はありませんでした。時代背景なのか、一つの会社に勤め上げるという事なのでしょうが、あまりにも家族や自分を犠牲にしてまで何を守りたかったのか、正義なのだとは思いますが・・・個人的主観として理解出来ませんでした。これは、少し前に読んだ不毛地帯も同様です。

全巻を通して、やはり御巣鷹山篇から、フィクションなのかノンフィクションなのか、あくまで物語だと思って読もうと思いながら、特に企業や政治家などは実在する事柄と混ざってしまい、混乱しながら読み進めてしまいました。国見会長にしても、鐘紡とリンクさせると逆に物語にも没入しにくい感はありました。(今となっては。)

それほどまでに、日航機事故は、当時小学生だった私の記憶の中でも鮮明ではあります。それだけに、ご遺族のお気持ちであるとか、当事者の方々などの事を考えると、波紋の多い小説だと言う事は難なく創造出来ます。しかし、読者としてはつい何が真実なのか?と考えたくはなるのですが、著者の小説を書く意図や目的を考えると、そこがポイントではないのではないかとも感じ得ます。

メディアすらも、真実を書いているのか?と疑わしいですから、こういった切り口で問題定義をする小説があるのは良い事だとは思いますし、山崎豊子さんの小説には、読者を惹きつける取材力と文章力があるなと感服しました。性善説か性悪説かと言えば、性悪説なのでしょう。ブロンクス動物園の鏡の間の「世界で最も危険な動物」で自身が映される描写などでもそうなのでしょう。

それにしても、読後は利権構造と人間の欲望にまみれて少し気分が悪くなる感はあります。国民航空の再生にしても、最悪な航空事故にしても、最終責任者がいないまま、再生も空の安全も、遺族への補償にしても、なし崩し的になってしまいながらも、”企業は存続”していく・・・。現実では、JALは破綻し、税金を投入し再生をさせようとしていますが、それすらも疑いたくなるような気持ちです。

現在、政治にしても、政権交代されましたが、詰まるところ最終責任者がおらず、責任を取ると首相を変え、政権を変え、これは日本国そのものの存在なのではないかとも思えます。「責任」とは何なのでしょうか?小説に登場する人物一人一人に立てば、恩地の正義があれば、行天の「また別の正義」があるのだとは思います。

一体誰が悪いのだろうか?とつい犯人捜しをしたくはなるのですが、それはやはり人間の欲望の恐ろしさではないのかとも感じました。つまり、各々の立場に立てば、インセンティブは違うのでしょうが、それにもある程度は致し方がない部分もあるとは思いますが、モノにも限度があり、また「最終責任者なき組織」の中で個の欲望が泥沼のように渦巻くと救いようがないのだと・・・。

同様の事が、日本国の結末にならないことを祈ります。
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