カスタマーレビュー

2023年1月1日に日本でレビュー済み
IIIではベルリとアイーダの秘密が明かされ、ラライヤも復活し、ドレッド率いるトワサンガ軍やヘルメス財団の作ったカシーバ・ミコシやクレッセントシップ登場など物語が大きく動き出します。
既に登場済みのアメリア軍、ゴンドワン軍、キャピタル・ガードやキャピタル・アーミィ等それぞれの勢力が独自の思惑で行動するため、少しでも目を離すと理解が追い付かなくなります。
できれば1シーンごとに各勢力の誰がどういう行動をしているか整理しながら視聴することをお勧めします。

さて、本作には過去の富野氏作品からのセルフオマージュが多く登場します。
例えばベルリとアイーダの関係はキャスバルとアルテイシアの関係のオマージュと言えます。
マスクはシャアのオマージュですし、バララはララァやフォウ、ラライヤの容姿や金魚のチュチュミもロランとの関係を想起させるものがあります。
他にも沢山のオマージュが存在します。

何故このような表現をするかと言えば、それは「∀ガンダムで出来なかった富野氏自身に対する救いを表現するため」です。
∀ガンダムによる既存文明の破壊という最悪の結末を招いてしまった過去の歴史は、封印しておきたい人類の汚点ということで「黒歴史」と表現されました。
∀ガンダムでは作品中それら過去の歴史を清算し、月と地球との新しい関係を模索する姿が描かれました。これは、宇宙世紀に対する救いではありますが、ガンダムという作品を作ってしまった富野氏自身への救いとまでは言えないものでした。
この救いを実現するためには、もう一度過去の宇宙世紀作品を意識した設定や人物を用意したうえで、宇宙世紀が辿った凄惨な歴史とは異なる未来を示す必要があったのです。
これがベルリやアイーダの行動によく表れています。
両親を殺され、アイーダと離れ離れになる原因となったドレッド軍に対し、ベルリは復讐しようとすることはありませんでした。
アイーダも同様で、恋人を殺したベルリに対する怒りや悲しみを上手く消化し、ベルリとの関係が決定的に悪化することはありませんでした。

確かにガンダム作品に精通しているほど本作がつまらなく見えてしまう面もあるでしょう。
ベルリやアイーダを、恨み骨髄で相手の一族を殺しきるまで許さないシャアのような性格にした方が、よほどガンダム作品らしい人物だと思います。
しかしそれは過去の富野氏であり「封印されるべき黒歴史」を再び辿ることになるのです。
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