「一つの目標に集中したからこそ、問題や失敗があっても何とか解決する力がついたのだと思います」

株式会社nana music 文原明臣さん 辻川隆志さん

文原明臣さん

 「離れた場所にいても世界中の人が一緒に歌い、ハーモニーを奏でる。そんな感動的な体験を日常的に行うことも、オンライン上でなら実現できると思ったんです」と静かな口調で話す文原明臣さん。

 もともと音楽好きだったという彼が、そのアイデアを思い付いたのは、スマートフォンを初めて手にした2010年頃のこと。スマートフォンの簡単に録音できる機能に着目した彼は、自分の歌声を録音し、その音に更に自分の声を重ねてコーラスが作れることに気づいた。

 そして、自分が録音した音源をインターネット上で公開し、そこに音を重ねる機能のあるアプリを作れば、誰かが演奏した伴奏に歌声を重ねるなど、見知らぬ人ともセッションができるかもしれないというアイデアが浮かんだ。

 しかし、当時の文原さんには、高度なプログラミングの技術はなく、知り合いもいなかった。そのため協力者を探して、東京へ向かう。そこで偶然出会ったのが、システムエンジニア歴30年の辻川隆志さんだった。

辻川隆志さん

 親子ほども年が離れた辻川さんに、約5時間かけてアプリのアイデアを熱く語ると、辻川さんは協力を約束。二人でプランを練り、資金を集め、デザイナーやプログラマーなどのスタッフを増やしていった。サービスの基盤を置くサーバーには、世界へのサービス展開も視野に入れ、低料金で利用でき拡張性も高いアマゾン ウェブ サービス(AWS)を選び、開発を進めた。

 そして2人の出会いから約15か月後の2012年8月、音楽SNSアプリ「nana(ナナ)」がスタートする。nanaはインターネット上で音楽のセッションができるサービスとして、スタート直後はいくつかのメディアでも紹介され注目を集めた。しかし、その後は利用者数が伸びず、低迷。スタートから1年後には資金がほぼ底をつくという危機に陥り、退職するスタッフも現れた。

 そんな中でも辻川さんは残り、個人的に受注した仕事で生活費を稼ぎながら文原さんをサポート。文原さんも利用者と実際に会い交流するイベントを開催するなど、利用者の増加につながるアクションを続けた。

 その甲斐あってか、その後ようやく資金を調達することができ、新たにスタッフを雇用。地道にサービスの改善を行うと、利用者数が順調に増加していった。

 現在ではダウンロード数が200万を超え、世界113カ国で利用されるサービスに成長。昨年主催した音楽イベントには、nanaの利用者20組が参加し、約1000人が来場した。また、nanaで発表したオリジナル曲が人気を集め、CD化され、カラオケにも配信されたアーティストも誕生するなど、利用者の活動にも新たな展開が生まれつつある。

 自分でも歌をnanaに投稿しているという文原さん。苦しい時期を乗り越えることができた理由を尋ねると、「とにかくnanaを作りたいという気持ちが強かったからだと思います。一つの目標に集中したからこそ、問題や失敗があっても何とか解決する力がついたのだと思います」と語る。

 苦労を共にしてきた辻川さんも、「低コストで利用できるAWSを使っていたので、資金が苦しい時にもサービスを続けることができました。実際に自分たちが作ったサービスを利用して、たくさんの方が交流している姿を見られたことも心の面で大きな支えでした」と微笑む。

 文原さんたちが目指すのは、音楽を通じて世界中の人たちのコミュニケーションが活性化すること。「nanaを世界中の人が日常の中で当たり前のように使い、気軽にセッションが生まれるサービスにまで成長させたい。まだまだ目標の半分にも至っていません」と自分たちを奮い立たせている。

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