「教育が一番効率的な支援だと思うのです。本人だけでなく、子や孫にも影響を与えることができますから」

一般社団法人キリマンジャロの会代表 岩男壽美子さん

 アフリカ大陸の東部に位置するタンザニア。アフリカ最高峰キリマンジャロの麓にある、バンガタという小さな村に全寮制のさくら女子中学校がある。岩男壽美子さんが開校に尽力し、運営に携わっている学校だ。

 「長年教師をしてきましたが、まさか、自分がアフリカで女子教育に携わることになろうとは、思ってもいなかったですね」とほがらかに笑う岩男さん。

 彼女がタンザニアとのつながりをもったのは2008年のこと。岩男さんはその時すでに、一般的に定年退職となる年齢を超えていたが、長年の友人からタンザニアの貧しい女性を支援する活動に協力を求められると、すぐに応じた。

 最初に行ったのは、商いを営む貧しい女性たちに少額融資を行うマイクロクレジットによる支援だった。しかしほとんどの女性たちは、手にした資金でいつも販売しているバナナをいつもより多く仕入れて売るのが精いっぱいで、バナナでケーキや、マフィンを焼くなど付加価値を生むアイデアを試みる人はいなかった。

 数少ない成功例となったのは、お針子の仕事をしている女性で、宣教師に習ったという丁寧な縫製技術と勤勉さによって仕事を増やしたという。

 その話を聞き、岩男さんははっとした。貧困問題を根本的に解決するためには、まず教育が必要なのだと。また、日本も明治時代に外国から来た牧師や宣教師が学校をつくり、その学校が現在でも続いていることや、岩男さん自身もそうした学校の卒業生であることを思い出し、「今度は日本が世界のために役に立つ番」と使命感にも似た思いが込み上げてきた。

 時を同じくして、タンザニアで共にプロジェクトを進めてきた知人から、学校建設のための土地提供の申し出もあり、岩男さんは学校設立に向け本格的に動き出す。日本政府や企業に働きかけ、資金の援助やそれぞれが得意とする分野での物品の提供を依頼して回った。

桜色のリボンの制服を着た生徒たち

 岩男さんは、アマゾン ジャパンにも世界の名作と日本文化が伝わる英語版の本の提供を依頼。書籍事業部は選書に関して岩男さんと話し合いながら、世界の名作『あしながおじさん』『風と共に去りぬ』。日本文化を紹介する『Introduction to Japanese Culture』。小説の『草枕』『海辺のカフカ』。漫画の『ドラえもん』『ちはやふる』など、年齢や興味に沿って読み進められるバラエティ豊かな346冊を選び、タンザニアに送り届けた。

 そうして迎えた2016年1月。真新しい校舎に30人の生徒たちが入学し、さくら女子中学校が開校。現地採用の先生のほかに、日本からも4人の先生が赴任し、指導を開始した。

 そのうちの1人の今野愛子さんは、「タンザニアでは、小さい頃から本が身近にあったという生徒はほとんどいません。寄贈いただいた本の中には、漫画や物語なども含まれていますので、生徒たちが読書に親しむきっかけになればと思います」と話す。

 生徒たちが目指すのは、男性社会の中でも活躍しやすい、助産師や医師、教師など。なかには大統領になりたいと大きな夢を語る少女もいる。
 
 岩男さんは、「教育が一番効率的な支援だと思うのです。物資を支援しても、利益を受けるのは一世代だけです。でも教育は、教育を受けた本人だけでなく、子どもや孫、そしてその周囲の人たちにも影響を与えることができますから。生徒たちには、本を読み、物事を深く考えられる人になってもらいたい。さまざまな文化を学ぶなかで日本人の勤勉さや几帳面さも身に着け、しなやかな人に成長してもらえたらうれしいですね」と期待を寄せている。