タイトルからは「女性の話をまとめた本」という印象を受けますが、読後感としてそういう
印象はあまり強くありません。これは作者が書いているのは男性や女性というよりは「人間」
そのものであるためかと思います。そしてそれは、SFのフレーバーが強い作品でも、童話や
古典を下敷きにした作品でも強く浮かび上がる作者の特長で、それは本作でも如何無く発揮
されていました。
逆に「女性」を扱った作品を求めている方にこそやや物足りないかもしれませんが、漠然と
した短編集にするよりも本の売り方として「分かりやすい切り口」は必要なので、タイトル
も本のまとめ方も悪くないとは思います。
後書きで野菜の話がありましたが、この本は、戸田誠二作品の中ではサラダのようなイメージ
です。「戸田誠二のベストの本を薦めてくれ」と言われたときにこの作品を挙げる方は多く
ないと思いますが、切れ味は相変わらずです。肉や骨を断つ切れ味とは別に、野菜をスッと
切るような。これもまた戸田誠二の重要な持ち味の一つだと思っています。
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