3年前からテレビゲームの一切を辞めた私にしてみれば、懐かしい感慨もあるのがこのVR(ヴァーチャル・リアリティ)。最近、自分の5歳になる甥っ子を遊園地に連れていった時のこと。ジェットコースターを、私が死んでも乗りたくない!と恥も外聞も無く「説得」するザマを甥っ子に笑われた。私は、小さい頃から車酔いや船酔いしやすい体質なので、VR酔いやシミュレーター酔いもするのは明白だからこそ、テレビゲームでもこの類は絶対にやろうとも思わなかった。著書を読もうと思ったのは、1978年(!)にヴァーチャル・リアリティという言葉を作ったジャロン・ラニアーの本を読んだ(参照「
人間はガジェットではない
」)ことを、その時ふと思い出したからだ。
この本にもラニアーはちょくちょく出てくるが、他にもアフォーダンス理論のJ・J・ギブソン(参照「
生態学的視覚論―ヒトの知覚世界を探る
」)とか、V・S・ラマチャンドラン(参照「
脳のなかの幽霊
」)、今や古典ながらも、結構有名なサイバーパンク小説、ウィリアム・ギブスン「
ニューロマンサー
」あたりは、押さえておきたい。するとこの著者の「感覚」が掴めてくる。
「
バイオハザード7
」をVRでやったことのある人は、わざわざこの本を買ってまでVRの危険性を検証する必要はない。ゾンビ映画の好きな著者でも、VR利用したゾンビを倒すゲームをやりたくないとこの本で述べているが、その懸念は見事に当たっている。原因は、カプコンも、バイオハザードが「回を追うにつれて初期より怖くなくなった」というユーザーの意見を「正直に」取り組みすぎたせいだ。要するに、多くの人間は、自らの無意識の欲求や潜在的な嫌悪感まで冷静に観察できないことを、カプコン側が理解していなかったからだ。だから「
バイオハザード7
」では、アマゾンのレビューに「怖すぎて最後までプレイできない」とたくさんレビューが書かれてしまったのだ。これは実証済なほど明らかだ(笑)。それでもなぜかと、知りたい人はこの本を読むか実際にゲームをプレイするといい。
多くのテレビゲームは、テレビのフレーム(境界)があることで心理的「安心感」を得ているのだ。その安全性が打ち破られる怖さを表現すると「
貞子
」(笑)とかになってしまう。「境界」を打ち破ることは、多くの恐怖や笑いの源泉なのだ(ホラーを描く漫画家は総じてギャグも面白いのは、受け手の「安全性」か「危険性」への保証のベクトルの違いで起こる。「境界を侵す」という意味で行動の源泉は同じだ)。このことを「象徴的」に勉強したい人は、文化人類学や民俗学を勉強するといい。事例は沢山ある。
この本の欠点は、文章だけでは著者の楽観的な考えがどこから来ているのかが、テクノロジーに疎い人にはわかりにくいところだ。著者も懸念している通り、VRはあまりに没入しすぎることと、現実世界の時間経験とを、トレードオフに容易にしてしまうことなどを挙げている。これは以前でもネトゲ廃人を生み出した事例や、SNS中毒を生み出した側面からでもすぐわかるが、新しいメディアやテクノロジーは、必ず人間に負の側面を映し出すものだ。勿論プロパガンダへの利用の危険もある。
Youtubeでも、ナチスドイツのプロパガンダ映画が沢山視聴できるが、映像へのコメントを見ると「平和な映像だ」「ナチスはもっと評価されるべき」とか好意的な評判が増えている。「平和な音楽だ」というコメントもある(私は草森紳一「
文化の利用 (絶対の宣伝 ナチス・プロパガンダ4)
」にも、この意味で同じレビューをした)。
けれどインターネットに映像を無差別に掲載するのを見るにつけ、今更何を言っているのか?
どんな「メディア」でも危険であり、「毒」でなかったことなど一度として歴史上存在しなかったのだ。一番の危険なメディアは「言語」である。超保守的な最悪主義者の私からすれば明白だ。けれど「沈黙すぎる幸福」とはある人の名言であるが、「黙して動せず」とは人間いかないものだ。
新しいメディアで騒ぐのも結構であるし、善用できる面もあるのでVRの良い面も否定しない。けれどメディアの発展は、人類のテクノロジーの開発と切り離せない。口語から文字を生み出し、書物というメディアから、印刷技術の発展、そして音声の伝達、ラジオの普及、映像メディア、テレビの普及、コンピュータの開発、インターネットによる映像、音楽の爆発的伝搬、コンピュータテクノロジーの向上によるVRの促進。これら全てが歴史の功罪を生み出してきたことは事実だ。
私的にはメディアの普及で、どんどん人類は最悪の方向に向かっているとしか思えない。歴史を通じて人類による<共感性>の暴走は、どこへ向かおうとするのか?正直考えると怖くなってくる。
VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学 (日本語) 単行本 – 2018/8/8
Jeremy Bailenson
(原著),
ジェレミー ベイレンソン
(著),
倉田 幸信
(翻訳)
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その他
倉田 幸信
(翻訳)
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本の長さ364ページ
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言語日本語
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出版社文藝春秋
-
発売日2018/8/8
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ISBN-104163908846
-
ISBN-13978-4163908847
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
VRを新しいゲームや映画の一種だと思っていると、未来を見誤る。このメディアはエンタテイメントだけでなく、医療、教育、スポーツの世界を一変させ、私たちの日常生活を全く新たな未来へと導いていく。その大変革を、心理学の視点から解き明かそう。現在のVRブームは、クラウドファンディングから始まった小さなVR機器メーカー「オキュラス社」をFacebookが巨額で買収したことから始まった。世界を驚かせたその買収劇のわずか数週間前、マーク・ザッカーバーグは本書の著者の研究室を訪れ、最新のVRを自ら体験していた。そこでザッカーバーグが味わった衝撃が、この本には詰まっている。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ベイレンソン,ジェレミー
スタンフォード大学教授(心理学、コミュニケーション学)。同大学でバーチャル・ヒューマン・インタラクション研究所を設立し、所長を務める。ノースウェスタン大学で認知心理学の博士課程を修了。VR(バーチャル・リアリティ、仮想現実)研究の第一人者。現在のVRブームの発端となったフェイスブックによる「オキュラス」買収直前には、マーク・ザッカーバーグCEOがベイレンソン教授の研究室を訪れ、教授が制作した最先端のVRを視察していた。心理学者としてキャリアを始め、人々のコミュニケーションについて研究を行う中で、VRが人の心理や行動に大きな影響を与える、従来にないまったく異質なメディアであることに注目。以後、VR心理学の専門家となる。
倉田/幸信
1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。朝日新聞記者、週刊ダイヤモンド記者、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集者を経て、2008年よりフリーランス翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
スタンフォード大学教授(心理学、コミュニケーション学)。同大学でバーチャル・ヒューマン・インタラクション研究所を設立し、所長を務める。ノースウェスタン大学で認知心理学の博士課程を修了。VR(バーチャル・リアリティ、仮想現実)研究の第一人者。現在のVRブームの発端となったフェイスブックによる「オキュラス」買収直前には、マーク・ザッカーバーグCEOがベイレンソン教授の研究室を訪れ、教授が制作した最先端のVRを視察していた。心理学者としてキャリアを始め、人々のコミュニケーションについて研究を行う中で、VRが人の心理や行動に大きな影響を与える、従来にないまったく異質なメディアであることに注目。以後、VR心理学の専門家となる。
倉田/幸信
1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。朝日新聞記者、週刊ダイヤモンド記者、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集者を経て、2008年よりフリーランス翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2018/8/8)
- 発売日 : 2018/8/8
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 364ページ
- ISBN-10 : 4163908846
- ISBN-13 : 978-4163908847
-
Amazon 売れ筋ランキング:
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- - 4,953位心理学入門
- - 5,152位心理学の読みもの
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ベスト500レビュアー
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16人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2019年1月9日に日本でレビュー済み
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本書は、仮想現実(バーチャルリアリティ、VR)の技術と、それを使用した様々なコンテンツの現状を解説したものである。著者はスタンフォード大学の教授で、VR研究の第一人者だ。VR技術とコテンツが今後急速に普及していく一方で、VRの仕組みやそれが脳に与える影響、またそもそもVRが何に役立つのかといったことの理解が世の中で広まっていないことを著者は問題視しており、それが本書の執筆の動機となっている。
本書では、VRの実用的な活用事例がいくつか紹介される。例えば、NFLの選手がバーチャル空間で攻撃の練習を行い、本番の試合でそれを見事に成功させる。アメリカで起こった同時多発テロが原因でPTSDに苦しむ患者に対し、テロ当日を再現したVRを見せて治療を行う。重度の火傷治療を行う患者にVRのソフトをプレイしてもらい、治療の痛みを劇的に和らげる。VRで社会見学を行い、生徒の学習に使用する。どのコンテンツも非常に完成度が高いものとして紹介されており、一度は経験してみたいと思わせるような内容である。
一方でVRは、その臨場感から人はあたかも現実の体験をしたかのような感覚におそわれ、結果脳に強烈な影響を受ける。この強い没入感から来る危険性に著者は言及し、VRの使用に際しては様々な警告を発するのだ。(暴力的なVRゲームなどはその典型例だ)VR経験のマイナスの影響として著者は、暴力の行動モデリング、現実逃避、過度の利用、注意力の低下という4点をあげる。
「現実世界でしたいと思わない経験を、VR経験としても作ってはならない」と、著者は最後に主張する。個人的には、暴力行為や性描写の強いVRに強い懸念や恐怖を感じた。個人で楽しむだけであればいいのだが、それではすまなくなることは、往々にして起こり得る話だ。また第七章で紹介される「アバターの活用」もユニークだが、現時点ではやや現実味に欠ける。とは言え、全般的に今後の動向を注視したい分野の話題と言えよう。
本書では、VRの実用的な活用事例がいくつか紹介される。例えば、NFLの選手がバーチャル空間で攻撃の練習を行い、本番の試合でそれを見事に成功させる。アメリカで起こった同時多発テロが原因でPTSDに苦しむ患者に対し、テロ当日を再現したVRを見せて治療を行う。重度の火傷治療を行う患者にVRのソフトをプレイしてもらい、治療の痛みを劇的に和らげる。VRで社会見学を行い、生徒の学習に使用する。どのコンテンツも非常に完成度が高いものとして紹介されており、一度は経験してみたいと思わせるような内容である。
一方でVRは、その臨場感から人はあたかも現実の体験をしたかのような感覚におそわれ、結果脳に強烈な影響を受ける。この強い没入感から来る危険性に著者は言及し、VRの使用に際しては様々な警告を発するのだ。(暴力的なVRゲームなどはその典型例だ)VR経験のマイナスの影響として著者は、暴力の行動モデリング、現実逃避、過度の利用、注意力の低下という4点をあげる。
「現実世界でしたいと思わない経験を、VR経験としても作ってはならない」と、著者は最後に主張する。個人的には、暴力行為や性描写の強いVRに強い懸念や恐怖を感じた。個人で楽しむだけであればいいのだが、それではすまなくなることは、往々にして起こり得る話だ。また第七章で紹介される「アバターの活用」もユニークだが、現時点ではやや現実味に欠ける。とは言え、全般的に今後の動向を注視したい分野の話題と言えよう。
2018年8月12日に日本でレビュー済み
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巻を措く能わず、です。
著者は、スタンフォード大学教授(心理学、コミュニケーション学)。およそ20年、VRを研究している第一人者。VRが人の心理や行動に大きな影響を与える、異質なメディアであることを、多くの実験や実用事例で明かしていきます。
2000人超のPTSD患者の治療に効果があったり、プロスポーツ選手の訓練に活用されて記録更新に貢献したり、といった多くのプラス効果が示される一方、ゲームであってもVR内の殺人は生々しく罪悪感を残すから、1人称視点の暴力ゲームを作らないと開発者が決めるほどに、使い方を誤ると脳に多大なマイナスの影響を与えることを示しています。
人類にとって諸刃の剣となるVRは、想像以上のスピードで進歩し、社会に浸透しています。この事実を多くの人が早く知って、対応しないと大変なことになると警鐘を鳴らす良書だと思いました。
一見、難しそうな話ですが、原文も翻訳も良いためか、素人の私にも、とても面白く読むことができました。
著者は、スタンフォード大学教授(心理学、コミュニケーション学)。およそ20年、VRを研究している第一人者。VRが人の心理や行動に大きな影響を与える、異質なメディアであることを、多くの実験や実用事例で明かしていきます。
2000人超のPTSD患者の治療に効果があったり、プロスポーツ選手の訓練に活用されて記録更新に貢献したり、といった多くのプラス効果が示される一方、ゲームであってもVR内の殺人は生々しく罪悪感を残すから、1人称視点の暴力ゲームを作らないと開発者が決めるほどに、使い方を誤ると脳に多大なマイナスの影響を与えることを示しています。
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一見、難しそうな話ですが、原文も翻訳も良いためか、素人の私にも、とても面白く読むことができました。
ベスト500レビュアー
筆者はスタンフォード大学の心理学、コミュニケーション学の教授。特にVRが人間の心理や行動に与える影響を研究している。
2014年、フェイスブックがオキュラスを20億ドル超で買収する数週間前にマーク・ザッカーバーグが筆者を訪れた場面から始まる本書はVRの可能性について如何なく解説している。
VRをトレーニングに取り入れることでQBとしてもチームとしても成績が急上昇したNFL(アリゾナ・カーディナルス)のベテランQB、気候変動の原因が何であるかを理解させる為に有効な方法としてのVRによる異常気象「体験」、同時多発テロによるPTSD患者の治療の一環としてトラウマ体験の記憶を呼び戻す為のVR利用、薬に頼らず痛みを和らげる手段としての「VRディストラクション(気をそらすこと)」、集中力を高め、経験から吸収する子供の学習に多大な効果が期待出来るVRなど、今後の適用範囲は更に拡がっていくことが予想される。
その一方で、強力な印象を残す働きがあることから、強力なプロパガンダや情報操作に利用される危険性も秘めている。筆者はVRが脳に与え得る4つのリスクとして、「暴力行動モデリング」「現実逃避」「過度の利用」「注意力の低下」を挙げている。
また、どのようなコンテンツを目指すべきか?という問いに対しては、それがVRである必要性があるのかどうか、という視点を持つこと、ユーザーを「VR酔い」させないこと、ユーザーの安全を最優先することを挙げている。
VRの無限の可能性・有用性とそれに伴う危険性・リスクについて多くの気づきを与える一冊である。
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