重力の虹ほどわからなかったわけではないが、やっぱりよくわからなかった。
でも、重力の虹の時もそうだったが、ただよくわからないわけではないから、ピンチョンにひかれてしまう。
そのわかるところ、とは要するに歴史的事実や人間性に対する懐疑である。それらは衝撃的である。
ピンチョンの作品を読むと、たくさんのことを教えてくれる、しかもそれはいわゆる学校で先生が教えてくれるようなやり方ではなく、世界のありのままをごちゃまぜにして、突然どっきりみたいに思いきりぶつけられるような感じである。重力の虹はそれがすさまじかった。V.はそこまでではない。でも二十五歳の若者が書いたデビュー作なのだから、十分すごい。
V.とは何か……ぼくが思うに、下巻の後半に出てくる『私は二十世紀』で始まる詩にヒントがあるのではないか。『私』(V.)はいろんな場所にいろんな形で現れる、それをステンシルがパラノイア的につなげていく。V.の見出し方、つなげ方はその人次第。そう考えると、上巻に出てくる空電はまさにV.的だ。受信者は空電という自然現象の中になんらかの意味を読み取ろうとする。そう考えると、V.とはこの世界そのものの象徴なのではないか。
このように、ピンチョン作品には解釈の楽しみがある。作者の広げた網の範囲が広いから、その中で読者は自由に泳ぐことができる。
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