読後の感想は、「ずいぶんあっちこっち行ったなぁ。最終的には1冊の本としてまとまっていると思うけど、でも、誰も”超満足”とは言わないだろうな」というものでした。だって、UXという広大なエリアを、多数の著者が「ビジネスの現場で」という括りだけで自分の得意な分野について好き勝手に論じているんですもの…。
ただ、9つからなるそれぞれのChapterを1つずつバラのものとして見ていけば、それぞれが論じているポイントは分かりやすいと思います。
以下、もくじに私の簡単な主観的紹介を加えてみます:
Chapter1 UXとはなにか? (田平 博嗣)
UXの定義から始まり、「サービスデザイン」という言葉で語られがちな調理器具とスポーツ観戦というオフライン事例へ。
■ Chapter2 UXと顧客エンゲージメント (原 裕)
顧客が新たな顧客を作っていくというエンゲージメント・モデルの説明と無印の担当者へのインタビュー。
■ Chapter3 UXが企業にもたらす価値 (井登 友一)
モノからコトへ、コトからサービスへ、サービスから経験へ、経験からシステムへという変遷を大局的に解説。
「ユーザー中心から社会中心へ」という世の中の志向性の変化とその背景も説明されていて、個人的には前半の山場です
■ Chapter4 UXブランディング (明海 司)
一連の経験をユーザー中心に設計するのがUXデザインであり、それをも包含する概念がUXブランディングである。
■ Chapter5 Webサービス開発プロジェクトにおけるUXデザイン (塚本 洋、川田 学)
Webサービス開発にUXデザインが重要なわけ。そして事業会社がUXデザインを取り入れる際の注意事項と壁の越え方。
■ Chapter6 BtoBビジネスにおけるUX (橘 守)
UXを「顧客の視点で自社を見て、全体最適を提供する」とシンプルに捉える。BtoBのそれは課題解決でありそれをやりきること。
■ Chapter7 コールセンターにおけるUXとカスタマー・エンゲージメント (萩谷 衞厚)
コールセンターは人が直接介在するエンゲージメントの現場。単なるコストセンターではなく組織連携のハブとなり得る。
■ Chapter8 UXの採用プロセス (坂本 貴史)
UXをユーザー本来の目的達成に連なる一連のプロセスとして捉え、各ステップごとに根拠を残しながらリンクさせていく。
ビジネス上の課題に対し、ワークショップの強みを最大限に活かす方法が解説されています。後半の山場です。
■ Chapter9 オムニチャネル時代におけるCX/UX:エンゲージメント・コマース(奥谷 孝司、原 裕)
短期的なコンバージョンに引っ張られて、焼畑的な作業になっていないか? CX設計こそマーケティングの最重要タスク。
こうして書き出してみると、実は拡散と収束を繰り返しながら本質に迫っていくという、デザイン・シンキングでよく使われるアイディエーションのプロセスが採用されていそうな気がします。
なお、出版記念セミナーのことも含めてブログ記事を書いています: 『UX × Biz Book』読書 & セミナー参加メモ
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