80年代に思春期を迎えた私にとって、リアルタイムで初めてフリートウッド・マックを聞いたのはこの作品。美しいジャケットと当時、「リトル・ライズ」などシングルがヒットしていた事で聞くようになった。「ファンタスティック」や「噂」などを聞いた今となっては当たり前だが、当時個性的な3人のボーカリストがいることに驚いた。この作品は70年代の名作と比べると、シンセを多用した当時らしい音作りのイメージがあるが、2017リマスターを改めて聞くと、こんなシンプルな音だったっけ?と驚く。リマスター効果で音の間がよくわかる。彼らのソングライティングの能力とバンドの演奏力がいかに素晴らしかったか思い知らされる。さて2枚目だが、デモでさえしっかり作り込まれている印象。⑤Book of Miraclesはインストだが、なおさらメロディーラインのすばらしさがわかるし、丁寧に作っているのがよくわかる。スティービー・ニックスは⑨のJulietではランスルーだからと手を抜かず、本番さながらに歌っており、最後にI thought that was wonderful! と2度も叫んでいる。
タンゴ・イン・ザ・ナイトは素晴らしいソングライター集団として、そして優れたポップ、ロックバンドとしてその才能と実力を見せつけた最後の作品かもしれない。30年経っても古さを感じない、軽やかで華やかな楽曲に感激する名作だ。