ボッツマンは「シェア」という本を書いたことで有名です。この本は、シェアリング・エコノミーの潮流をいち早くキャッチした本でしたが、本書も中身を読むと著者の先見性を感じました。確かに「信頼」という概念自体は古くから存在していますが、デジタル時代では信頼の形が大きく変わっている、いまはその過渡期であるという主張です。昔はコミュニティ内での信頼しかありませんでしたが、ついで国や企業、マスコミなど「制度」に対する信頼が生まれてきた。そして第3の波として「分散化された信頼」がデジタル技術の進展によって生まれているのです。
本書の面白い点は、「信頼が分散化された」で本が終わっているのではなく、実は一周して集中する、あるいは向きが逆になるような動きもあることを指摘しているところです。例えば中国では社会信用制度ということで国民全員の格付けスコアをつける試みが始まっています。これは信頼の向きが逆になったと言えるでしょう。本来的には、国家がどうやって国民に信頼される存在になれるのかを考えるわけですが(特に選挙で政権が選ばれている国では「国民の信頼を得る」ことが最重要ポイント)、中国で導入されつつある制度では、「国民がどうすれば国に信頼されるようになるか」を考えるようになります。ある人物が、政府が好まない行動をとると、その人の格付けが下がり、日常生活に支障が出るような世界です。これは訳者後書きにも書いてあったように、ジョージ・オーウェル的な世界を想起させますが、個人的には古代中国の科挙制度が国民全体に適用される、というようなイメージも浮かびました。ただし、科挙であれば試験が終わってしまえば高得点を取らなければというプレッシャーは無くなりますが、中国の社会信用制度は終わりがなく死ぬまで息をつく暇がないということでしょう。
「信頼」の構築の仕方、誰が誰に対して信頼を構築するのか、などが大きく変わりつつある時代だというのは本書を読んで間違いない気がしました。5年後、10年後に振り返ると本書が指摘するポイントの重要性はさらに高まっているのではないでしょうか。
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![[レイチェル・ボッツマン, 関 美和]のTRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか](https://m.media-amazon.com/images/I/41OZh90Z9aL._SY346_.jpg)
TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか Kindle版
新しい「信頼」がビジネス、経済、社会を動かす!
政府や企業、マスコミへの不信感がこれほど強いのに、他人の口コミで宿泊先やレストランを選び、知らない人が運転する車を頻繁に利用するのはなぜだろうか?
前作『シェア』で共有型経済を提唱した著者が、急激なパラダイムシフトのなかで企業・個人がデジタル時代の「信頼」を攻略する仕組みを解説。
ウーバー、アリババ、エアビーアンドビー…
成功者は「信頼の壁」を打ち破る!
これまでとは違うやり方で何かをするときに「信頼の飛躍」が起きる。それによって人々は「信頼の壁」を飛び越え、新しい可能性が生まれる。アイデアやミームを意外な形で混ぜ合わせ、新しい市場を開き、これまで想像もできなかった新しいつながりや協力が可能になるのだ。
(本書より抜粋)
「信頼の3原則」でビジネスチャンスをつかむ
・馴染みのないものを身近に感じさせる「カリフォルニアロールの原則」
・自分の得になることを知らせる「メリットの原則」
・独自の影響力をもつ人を味方につける「インフルエンサーの原則」
政府や企業、マスコミへの不信感がこれほど強いのに、他人の口コミで宿泊先やレストランを選び、知らない人が運転する車を頻繁に利用するのはなぜだろうか?
前作『シェア』で共有型経済を提唱した著者が、急激なパラダイムシフトのなかで企業・個人がデジタル時代の「信頼」を攻略する仕組みを解説。
ウーバー、アリババ、エアビーアンドビー…
成功者は「信頼の壁」を打ち破る!
これまでとは違うやり方で何かをするときに「信頼の飛躍」が起きる。それによって人々は「信頼の壁」を飛び越え、新しい可能性が生まれる。アイデアやミームを意外な形で混ぜ合わせ、新しい市場を開き、これまで想像もできなかった新しいつながりや協力が可能になるのだ。
(本書より抜粋)
「信頼の3原則」でビジネスチャンスをつかむ
・馴染みのないものを身近に感じさせる「カリフォルニアロールの原則」
・自分の得になることを知らせる「メリットの原則」
・独自の影響力をもつ人を味方につける「インフルエンサーの原則」
- 言語日本語
- 出版社日経BP
- 発売日2018/7/20
- ファイルサイズ2479 KB
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
新しい「信頼」がビジネス、経済、社会を動かす!政府や企業、マスコミへの評価は最低でも、ネットの見知らぬ人間の口コミは信用する。そのような「信頼革命」はなぜ起きたのか?ビジネスや社会はどう変わっていくのか?前作『シェア』で共有型経済を提唱した著者が、急激なパラダイムシフトのなかで企業・個人がデジタル時代の「信頼」を攻略する仕組みを解説。 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ボッツマン,レイチェル
作家、ソーシャルイノベーター。前作『シェア』で提唱した「共有消費」は、タイムズ誌による「世界を変える10のアイデア」に選ばれた。2013年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、WIREDなどで寄稿編集者を務めるほか、インターネットとテクノロジーを通したシェアリングエコノミーの可能性やビジネス・社会における変化についてコンサルタントや講演などを行っている。またオックスフォード大学サイド・ビジネススクールで「協働型経済」コースを教えている
関/美和
翻訳家。杏林大学外国語学部准教授。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
作家、ソーシャルイノベーター。前作『シェア』で提唱した「共有消費」は、タイムズ誌による「世界を変える10のアイデア」に選ばれた。2013年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、WIREDなどで寄稿編集者を務めるほか、インターネットとテクノロジーを通したシェアリングエコノミーの可能性やビジネス・社会における変化についてコンサルタントや講演などを行っている。またオックスフォード大学サイド・ビジネススクールで「協働型経済」コースを教えている
関/美和
翻訳家。杏林大学外国語学部准教授。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
著者について
レイチェル・ボッツマン
作家、ソーシャルイノベーター。『シェア』(2010)で提唱した「共有型経済」は、タイムズ誌による「世界を変える10のアイデア」に選ばれた。
2013年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、WIREDなどで寄稿編集者を務めるほか、
インターネットとテクノロジーを通したシェアリングエコノミーの可能性やビジネス・社会における変化についてコンサルタントや講演などを行っている。
またオックスフォード大学サイード・ビジネススクールで「協働型経済」コースを教えている。
関 美和
翻訳家。杏林大学外国語学部准教授。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。
訳書に『シェア〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略』レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース、『ゼロ・トゥー・ワン』ピーター・ティール(以上NHK出版)、
『Airbnb Story』リー・ギャラガー(日経BP社)、『誰が音楽をタダにした』スティーヴン・ウィット(早川書房)など。 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
作家、ソーシャルイノベーター。『シェア』(2010)で提唱した「共有型経済」は、タイムズ誌による「世界を変える10のアイデア」に選ばれた。
2013年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、WIREDなどで寄稿編集者を務めるほか、
インターネットとテクノロジーを通したシェアリングエコノミーの可能性やビジネス・社会における変化についてコンサルタントや講演などを行っている。
またオックスフォード大学サイード・ビジネススクールで「協働型経済」コースを教えている。
関 美和
翻訳家。杏林大学外国語学部准教授。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。
訳書に『シェア〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略』レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース、『ゼロ・トゥー・ワン』ピーター・ティール(以上NHK出版)、
『Airbnb Story』リー・ギャラガー(日経BP社)、『誰が音楽をタダにした』スティーヴン・ウィット(早川書房)など。 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B07F3MTV4M
- 出版社 : 日経BP (2018/7/20)
- 発売日 : 2018/7/20
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 2479 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 418ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 159,507位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 19,425位ビジネス・経済 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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様々な事例を挙げながら、企業や社会システムと生活者の間の信頼の構築について、紹介されている点は、示唆に富んで参考になりましたが、結論は自分の頭の中にしか無いという難解さが、読み進みにくい本でした。そういう意味では、この本は「信頼」には値しませんでした。
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上位レビュー、対象国: 日本
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ベスト1000レビュアー
Amazonで購入
18人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2019年1月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
様々な事例を挙げながら、企業や社会システムと生活者の間の信頼の構築について、紹介されている点は、示唆に富んで参考になりましたが、結論は自分の頭の中にしか無いという難解さが、読み進みにくい本でした。
そういう意味では、この本は「信頼」には値しませんでした。
そういう意味では、この本は「信頼」には値しませんでした。

様々な事例を挙げながら、企業や社会システムと生活者の間の信頼の構築について、紹介されている点は、示唆に富んで参考になりましたが、結論は自分の頭の中にしか無いという難解さが、読み進みにくい本でした。
そういう意味では、この本は「信頼」には値しませんでした。
そういう意味では、この本は「信頼」には値しませんでした。
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ベスト500レビュアー
「シェリングエコノミー」に見るが如く、信頼がテクノロジーによって姿を変え、「新しい信頼」がビジネスを変えつつある。2008年に「シェア」を著した筆者の頭を離れなかったことは、「何が他人への信頼を可能にするのか」という問いであり、「信頼」にフォーカスした本書は、我々に数々の「気づき」を与えてくれる。
アリババが中国におけるeコマースを普及させる上で最も大きなチャレンジだったことは、商取引のベースが人脈やコネであった中国の商慣習であったが、エスクローの要素を取り入れた決済手段(アリペイ)を編み出したこと、売手を「トラストパス認証」で差別化したことなどから、信頼を構築し、それを収益化して行った。
その中国で政府が、国民の格付け制度を導入するという動きは、驚くには値しないが、政府に対する批判を封じ込める国が今後どうなっていくのか、という点については暗澹たる気持ちで見守るしかない。
「信頼とは期待に対する自信である」『信頼は「既知のもの」と「未知のもの」の隙間を埋めるもの」であり、その隙間を埋める信頼は、アイデアとプラットフォーム(企業)と個人という3つの積み木重ねによって埋められるものである』
『信頼を得る為には、カリフォルニア・ロールのように、見慣れた物を使いつつ、少し形を変えたものから入り、その人にとってのメリットを訴求し、信頼のインフルエンサーのメカニズムを活用することが有効である』など、信頼に関する深い考察に触れることは、現代のビジネスがテクノロジーと信頼をベースにしていることを鑑みると、ビジネスパーソン必読の書と云える。
アリババが中国におけるeコマースを普及させる上で最も大きなチャレンジだったことは、商取引のベースが人脈やコネであった中国の商慣習であったが、エスクローの要素を取り入れた決済手段(アリペイ)を編み出したこと、売手を「トラストパス認証」で差別化したことなどから、信頼を構築し、それを収益化して行った。
その中国で政府が、国民の格付け制度を導入するという動きは、驚くには値しないが、政府に対する批判を封じ込める国が今後どうなっていくのか、という点については暗澹たる気持ちで見守るしかない。
「信頼とは期待に対する自信である」『信頼は「既知のもの」と「未知のもの」の隙間を埋めるもの」であり、その隙間を埋める信頼は、アイデアとプラットフォーム(企業)と個人という3つの積み木重ねによって埋められるものである』
『信頼を得る為には、カリフォルニア・ロールのように、見慣れた物を使いつつ、少し形を変えたものから入り、その人にとってのメリットを訴求し、信頼のインフルエンサーのメカニズムを活用することが有効である』など、信頼に関する深い考察に触れることは、現代のビジネスがテクノロジーと信頼をベースにしていることを鑑みると、ビジネスパーソン必読の書と云える。
2018年9月13日に日本でレビュー済み
タイトルにいかに信頼を攻略したかとあるが、最先端企業の例では未だに攻略されていない問題点として取り上げられているものがほとんどである。
1章信頼の壁を飛び越える ではジャックマーの成功の裏には彼の信頼を構築するコミュニケーション能力について
2章信頼が地に落ちるときでは アメリカで問題になった治療と称して人体実験をしていた人権問題で政府が信頼を失ったことを
3章初めてなの耳慣れたもの ではブラブラカーを例に 新しい形の信頼 信頼の飛躍 信頼の積み木重ね について説明しカリフォルニアロールがなぜアメリカで受け入れられたのか? エアビーアンドビーが信頼を獲得するまでの流れを説明している
4章最終責任は誰に? ではユーバー利用者の殺人事件を例に誰が飛躍した信頼が裏切られたとき責任を津べきかについて問題定義されている
5章偽ベビーシッター事件 では著者のベニーシッターが偽の経歴を使い自信をベビーシッターしていた事件の体験から
ベビーシッターとしては菅家ぺ期だった人をどうやって犯罪者と見抜きべきだったかという信頼の確認方法に対する話であるが、最近のべビーシッターアプリで評判を確認すれば防げたということが言いたいらしい。
6章闇取引でも評判がすべて ではダークウェブでも評判が命であるという事からAmazonのレビューなどが有効であることにについて
7章人生の格付け では中国の国民格付け制度について説明しプライバシーのないディストピア化する世界について不安をあおる一方フェイスブックなどでビッグデータが有効活用されている点を指摘
8章われわれはボットを信じる
人工知能など研究の経緯をまとめた話
あとは仮想通貨の説明
1章信頼の壁を飛び越える ではジャックマーの成功の裏には彼の信頼を構築するコミュニケーション能力について
2章信頼が地に落ちるときでは アメリカで問題になった治療と称して人体実験をしていた人権問題で政府が信頼を失ったことを
3章初めてなの耳慣れたもの ではブラブラカーを例に 新しい形の信頼 信頼の飛躍 信頼の積み木重ね について説明しカリフォルニアロールがなぜアメリカで受け入れられたのか? エアビーアンドビーが信頼を獲得するまでの流れを説明している
4章最終責任は誰に? ではユーバー利用者の殺人事件を例に誰が飛躍した信頼が裏切られたとき責任を津べきかについて問題定義されている
5章偽ベビーシッター事件 では著者のベニーシッターが偽の経歴を使い自信をベビーシッターしていた事件の体験から
ベビーシッターとしては菅家ぺ期だった人をどうやって犯罪者と見抜きべきだったかという信頼の確認方法に対する話であるが、最近のべビーシッターアプリで評判を確認すれば防げたということが言いたいらしい。
6章闇取引でも評判がすべて ではダークウェブでも評判が命であるという事からAmazonのレビューなどが有効であることにについて
7章人生の格付け では中国の国民格付け制度について説明しプライバシーのないディストピア化する世界について不安をあおる一方フェイスブックなどでビッグデータが有効活用されている点を指摘
8章われわれはボットを信じる
人工知能など研究の経緯をまとめた話
あとは仮想通貨の説明
2019年3月13日に日本でレビュー済み
「いかに〈信頼〉を攻略したか」というサブタイトルから、GAFAやアリババ、ウーバーのような企業が、いかに人の信頼をビジネス化したか・・・その成功と繁栄の物語のようなつもりで読み始めるだろう。
たしかにそんな話が前半は続く。
これまでの制度への信頼(法律家や金融などに対する信頼)が、金融危機とかパナマ文書によって崩壊した。しかし信頼は失われていない。これからはテクノロジーの力によって信頼の性質が変わるんだ・・・と。
ここまで読んで、ああこの本はテクノロジー礼賛の本なんだな・・・と思ってしまうと、途中でみんな疑問符が浮かんでいくだろうと思う。
というのも、「テクノロジーによる新たな信頼」の星ともいえる暗号通貨がまず(盗難や、価格変動リスクなどから)全く安全とはみなされていないし、あるいは創立10周年を迎えたウーバーだって凄惨な事件が起こっているじゃないか。
ちっとも「制度への信頼」の代替になんてなってない・・・。
と思っていると、本書の中盤以降は、やはりそうしたテクノロジー信頼への問題や、乗り越えるべき課題がずっと語られる。
それは技術的なものだったり、扱う人間の生々しいモラルの問題だったりもする(バイブレーターの使用履歴の流出の話なんかドキドキしながら読んじゃいましたよ)。
そういう問題はテクノロジーでどう乗り越えれば?
というと、本書の中では「わたしたちは未踏の領域にいる」「死に至る事故でないことを願うだけ」。
こう言われると、現状ではやっぱり制度への信頼が必要なんだろうなと思う。
暗号資産取引所が破綻なんかしたら、僕らはやっぱり政府、法制度による救済を求める。
ウーバーの運転手がきっと殺人なんか起こさないだろうと思うのは、金銭的なインセンティブだけじゃなくて、そんなことしたら制度によって裁かれるとやっぱり信頼しているからだ(金銭的インセンティブだったら誘拐したほうが儲かるかも知んない)。
だから本書でしきりに言われる「制度への信頼の崩壊」は、(まだ)その段階まで来ておらず、崩壊していないからこそ、そうしたビジネスが成り立つのだと思う
とはいえ、「それじゃやっぱり制度が大切なんだね、テクノロジーなんてやっぱやめとこ!」となるのも間違っている。
今後、テクノロジーがどのくらい信用に足るようになるか、それは神のみぞ知るが、「腐ったみかんが紛れ込んでしまうことはあるし、それは仕方ない(P176)」とあるように、なんでも過度期というのはある。
それを克服することを諦めていたら、今頃オンライン決済なんてのも無いだろう。
(個人的には、オンライン決済というのはテクノロジーで取引相手を信用するシステムではなくて、第三者(プラットフォーム)を信じることで、取引相手を「信じなくてもいい」システムだと感じる。そして、そういうプラットフォームを信じるのに必要なのは、やっぱり制度への信頼なんじゃないかな)。
テクノロジーが創出する新たな信用を持ち上げる一方、テクノロジーでも解決しようのない問題について半分以上のページを割くのは本書の正直なところ。
文章も上手なので各種のテクノロジーの理解もすすむし、興味も湧く。
また、翻訳も実に読みやすく問題はない。
たしかにそんな話が前半は続く。
これまでの制度への信頼(法律家や金融などに対する信頼)が、金融危機とかパナマ文書によって崩壊した。しかし信頼は失われていない。これからはテクノロジーの力によって信頼の性質が変わるんだ・・・と。
ここまで読んで、ああこの本はテクノロジー礼賛の本なんだな・・・と思ってしまうと、途中でみんな疑問符が浮かんでいくだろうと思う。
というのも、「テクノロジーによる新たな信頼」の星ともいえる暗号通貨がまず(盗難や、価格変動リスクなどから)全く安全とはみなされていないし、あるいは創立10周年を迎えたウーバーだって凄惨な事件が起こっているじゃないか。
ちっとも「制度への信頼」の代替になんてなってない・・・。
と思っていると、本書の中盤以降は、やはりそうしたテクノロジー信頼への問題や、乗り越えるべき課題がずっと語られる。
それは技術的なものだったり、扱う人間の生々しいモラルの問題だったりもする(バイブレーターの使用履歴の流出の話なんかドキドキしながら読んじゃいましたよ)。
そういう問題はテクノロジーでどう乗り越えれば?
というと、本書の中では「わたしたちは未踏の領域にいる」「死に至る事故でないことを願うだけ」。
こう言われると、現状ではやっぱり制度への信頼が必要なんだろうなと思う。
暗号資産取引所が破綻なんかしたら、僕らはやっぱり政府、法制度による救済を求める。
ウーバーの運転手がきっと殺人なんか起こさないだろうと思うのは、金銭的なインセンティブだけじゃなくて、そんなことしたら制度によって裁かれるとやっぱり信頼しているからだ(金銭的インセンティブだったら誘拐したほうが儲かるかも知んない)。
だから本書でしきりに言われる「制度への信頼の崩壊」は、(まだ)その段階まで来ておらず、崩壊していないからこそ、そうしたビジネスが成り立つのだと思う
とはいえ、「それじゃやっぱり制度が大切なんだね、テクノロジーなんてやっぱやめとこ!」となるのも間違っている。
今後、テクノロジーがどのくらい信用に足るようになるか、それは神のみぞ知るが、「腐ったみかんが紛れ込んでしまうことはあるし、それは仕方ない(P176)」とあるように、なんでも過度期というのはある。
それを克服することを諦めていたら、今頃オンライン決済なんてのも無いだろう。
(個人的には、オンライン決済というのはテクノロジーで取引相手を信用するシステムではなくて、第三者(プラットフォーム)を信じることで、取引相手を「信じなくてもいい」システムだと感じる。そして、そういうプラットフォームを信じるのに必要なのは、やっぱり制度への信頼なんじゃないかな)。
テクノロジーが創出する新たな信用を持ち上げる一方、テクノロジーでも解決しようのない問題について半分以上のページを割くのは本書の正直なところ。
文章も上手なので各種のテクノロジーの理解もすすむし、興味も湧く。
また、翻訳も実に読みやすく問題はない。
2018年11月2日に日本でレビュー済み
集権化された社会では信頼は制度に任されていた。
だが、金融危機でわかったように、信頼を当局にまかせるのはもはや無理な時代だ。
「制度」が信頼できない時代になったのだ。
信頼はもはや人生に「もしあったら便利」なおまけではない。
日常生活の活動の多くは信頼によって成り立っている。
食べること、運転すること、働くこと、買い物。
飛行機に乗ること、医者に行くこと、秘密を打ち明けることも、すべてが信頼のもとに成り立っている。
デジタル化は信頼を強くし、分散して持つ世の中を作った。
新しいテクノロジーが生み出す分散された信頼は、人間関係のルールを置き換えている。
それは、世界やお互いへの見方を変え、ある意味で私たちを昔の信頼の形態へと引き戻している。
誰が信頼に値するかは自分たちが決めることだ。
テクノロジーにより、信頼はデータとなり、ビッグプレーヤーに集権されている。
それを良しとするのか、新たな枠組みを考えなければならないのか。
選択するのは我々だ。
だが、金融危機でわかったように、信頼を当局にまかせるのはもはや無理な時代だ。
「制度」が信頼できない時代になったのだ。
信頼はもはや人生に「もしあったら便利」なおまけではない。
日常生活の活動の多くは信頼によって成り立っている。
食べること、運転すること、働くこと、買い物。
飛行機に乗ること、医者に行くこと、秘密を打ち明けることも、すべてが信頼のもとに成り立っている。
デジタル化は信頼を強くし、分散して持つ世の中を作った。
新しいテクノロジーが生み出す分散された信頼は、人間関係のルールを置き換えている。
それは、世界やお互いへの見方を変え、ある意味で私たちを昔の信頼の形態へと引き戻している。
誰が信頼に値するかは自分たちが決めることだ。
テクノロジーにより、信頼はデータとなり、ビッグプレーヤーに集権されている。
それを良しとするのか、新たな枠組みを考えなければならないのか。
選択するのは我々だ。