大澤誉志幸の最高傑作はこのScoop以外にない。何故なら捨て曲がないという次元ではなく、名曲以外がないという次元だから。全曲すべてが名曲。ここまでの品質は大澤誉志幸という「1アーティストの作品の中で」という次元ではなく、どんなアーティストであってもこのようなすべての曲がハイレベルというのはなかなかないこと。
また、いちいち編曲がすごい。それまでの大村雅朗の積み重ねてきた経験や努力が反映されてる。効果音の工夫たるや目を見張るのみ。早すぎる死をただただ惜しむのみ。
さらに楽曲能力のすごさに加え、銀色夏生のとてつもない歌詞の数々。もちろん洋楽に影響を受けていることは明白だが、それでも自分のモノにしておりトチ狂っているほどの名盤だ。
Track1:Scoop
ものすごい曲。Aメロ・Bメロ・サビとかそういう枠、型を超えた表現。
この時代にスクープというテーマ。ポップの中のポップ。アナウンサーとタイプライターの彼女たちはハンバーガーの形した勇気を持ってるのか。
Track2:スローダンス
まず曲以前に、前曲のポップポップさからの次の曲として選択が素晴らしい。有無を言わさないスムーズなリズムパターンで一気に別のシリアスな空間へいざなう。普通ならもっと後に入れそうな題材の曲。
イントロから強引なほどに気分を変えさせるリズムチョイス。陰湿でキャッチーなサビ、サビ後半の大量なコトバの詰め込み。素晴らしい。
Track3:午前二時を過ぎたら
イントロのキャッチーなコーラス、素晴らしい質のサビから入り、サビからガラッと変えたAメロ。Bメロは長いのに簡単に覚えてしまえるメロディ構成。フェードアウトをチョイスするセンス。これまたポップ!
Track4:I Love You.....
これまたものすごい曲。他の誰でもない、大澤誉志幸を体現するメロディライン。光り、そして遠くへ消えていくような喪失を表現した見事なサビ。サビ後半の「寒いから」の「ら」と重なるコードが喪失さと曖昧さをうまく表す。共鳴、振動、鐘の音。編曲のすごさも光るバラッド。
Track5:ハートブレイク・ノイローゼ
陰鬱な中毒になるような曲。「夜が覚えていたせいで、あなたは昔を思い出す」「選ばれなかった黄昏は、いつまでオレを迷わせる」。銀色夏生のすごすぎるリリックの嵐が、精神を病みそうな主人公の歌詞を体現。
Track6:ジュークボックスは傷ついてる
なんというタイトル。そして全く意味のわからない歌詞の連発。しかしそれが良い。ポップソングの歌詞の真骨頂。銀色夏生の狙いは成功してる。意味の繋がりがない歌詞たちだが、センテンス単位で心に引っかかるコトバのオンパレード。
今聞いても新しい。
Track7:Ring Ring
エロティックな中毒楽曲。ここまで短いサビだというのにあまりにも記憶に埋め込まれる。「夜はカーブでショートする」。ものすごいコトバのチカラ。
Track8:ゲームを教えて
サビによる開始の仕方が秀逸過ぎる。荒れ狂ったサックス風なサウンドが効いており、混沌なる状況を表現している。
カオスを創り出す技術がすごい。
Track9:ビリーの災難
大村のアレンジがものすごい。また、サビがこれまたものすごい。これはサビから作られた曲と思われるが、そこまで持っていくAメロ、Bメロを苦労したのだろうと想像できることと、それを見事に創りあげていることに感動する。
Track10:Cab Driver
暖かみと叫びと慈しみを見事に表現しており、抑制された表現が逆に感極まる。最後を飾るに相応しい楽曲。大村の打楽器類とシンセの工夫の極致。