元々、日本語で読める書籍の少ないLisp系の本において、このようなドリルは唯一ではないでしょうか。対話形式では「初めての人のためのLISP」がありますが、あの本の'80年代的なノリが苦手だった人には、年代は関係ないこの本を気にいると思います。
前提となる言語はSchemeであり、欄外にCommon Lispでの書き方も併記されているので各種CLの処理系で学ぶことも出来ます。しかし処理系のインストールや操作方法といった事には全く触れられていないので、この本一冊でScheme/CLに入門するのは無理があります。CLなら「実践Common Lisp」や、Schemeなら「プログラミングGauche」と併せて読むと良いでしょう。
この本で鍛えられる関数型プログラミング言語の考え方、つまり再帰やラムダ式といった考え方は、もはやJavaでも通用するのですからプログラマーとしての自分をステップアップしたいと考えている方は学ぶ価値があります。
そして何故ラムダ式を考えるのにJava8では駄目で、古典とも呼べるLisp系言語で学ばなければならないのかについては、これは私見ではありますが、Javaはその20年の歴史の中で経験した人たちの間では「オブジェクト指向言語」としての考え方が染み付いてしまっており、わざわざ考え方を改めるという、脳にとって苦痛な事をしたがらないのではないでしょうか?これは四半世紀前C++が大衆市場に普及した頃、どうしてもCスタイルで書いてしまいクラスなどは触りたがらなかった人々がいたのを記憶しています。
自分が見たこともない括弧だらけのコードを見せられたら、これは慣れ親しんだC系言語族とは全く異なる世界であり、自分の中での「手続き型言語の常識」は全く通用しないと、その国での仕来りを学ぶでしょう。そして全く違う言語を学んでいる中で、おや、この関数型プログラミングの考え方は、自分が慣れ親しんだ手続き型プログラミング言語の世界でいう「グローバル変数を参照しないことで部品が疎結合になる」事と効能は同じだぞ、と気づき、プログラミングスタイルは違えど、その本質に気づくのではないでしょうか。