「ベストSF 2012」上位作家競作
読んだ小説のみ……(連載の皆さんGJです)
「コヴハイズ」チャイナ・ミエヴィル/日暮雅通訳
火災事故などで一旦は海に沈んだ石油プラットフォームがある日を境に甦り、陸地に向けて歩み始めた。その目的は地中に自らの卵を産み付けることだったが…… 現象が発生した理由の説明は(出来るとも思えませんが)切なく、それが不可思議なムードを盛り上げています。奇想、ここに極まれり、ですね。個人的には今年一番の収穫の予感がします。
「小さな供物」パオロ・バチガルピ/中原尚哉訳
環境汚染が進んだ世界では母親が体内に取り込んだ化学物質が胎児に流れ込み、多くの奇形が生まれるのだった。それを避け、障害のない子供を生みためには予備分娩(最初に身篭った子供――神経毒で脳が破壊されている――に母親内の汚染物質をすべて引き受けさせる)必要があったが…… SFとして描かれているので悲壮感はやや緩和されていますが、すぐ隣の真っ暗な現実感が迫ってきます(視点人物に対する著者の扱いが若干気になりますが――つまり舞台が「ねじまき少女」の国ではないので――)これも秀作でしょう。
「霧に橋を架けた男〈後篇〉」キジ・ジョンスン/三角和代訳
不慮の事故もあり、また視点人物に近しい若い命も霧に奪われますが、橋は完成し、土地の人々のものとなります。しっとりとした情感を持って終了です。
「コルタサル・パス」円城塔
ネットの向こうに相手はいないのだった。いや、それは物理的には決して出会えない非存在者だった。が、虚構推進の一形態である矛盾推進を利用すれば、それが可能に…… 神林長平が言葉で行った実験を叙述で行おうとしているのかとも思いましたが、わかりません。小説に限らず引用が多くてキラキラした感じがします。西田哲学とか出てきたら面白いかも……
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