「カエルの王子さま」というお話をご存じだろうか。
このＣＤを聴いていたら、このおとぎ話がふと頭の中に思い浮かんだ。
このお話には色々バリエーションがあるのだが、あらすじはざっとこんな風だ。
魔法によってカエルに姿を変えられてしまった王子さまが、泉の中に落ちた王女さまの毬を拾ってくるのと引き換えに、王女さまに文字通り「寝食共にする」ことを要求する。王女さまは毬を拾ってもらったにもかかわらず、カエルへの嫌悪と恐怖で約束を守ろうとしない。王女さまはＡ）それでも不承不承カエルに口づけをする。あるいはＢ）怒りのあまりカエルを床に叩きつける。（実は物語にはこのふたつのパターンがある。）王女さまのＡまたはＢの行為で魔法は解け、カエルは元通り王子さまの姿になる。そしてふたりは結ばれて、めでたしめでたし。
さて、肝心の「RENT-A-SONG」。本作品の歌たちは、おとぎ話の王子さまがカエルだったころ、水辺でひとり誰にも邪魔されず、楽しげに自由にギターを弾き、気持ちよく歌っていた歌、というイメージだ。やがて水辺を離れ、乾いた陸に上がったカエルの王子さまは、歌をひとつ仕上げるごとに、ステージに１回上がるごとに、レコードやＣＤを１枚１枚世に出すごとに、王女さま（花田氏の楽曲的語彙ならば「女神さま」がふさわしいだろうか）から、ある時には優しい、またある時には情熱的な口づけを受けたりする。同様に、訳もわからないまま床に叩きつけられたり、壁に投げつけられたりの理不尽な目にもあいながら、魔法はだんだんと解け、カエルはそのたびごとに王子さまに変わっていき、、、、物語は続く。
以上は、あくまで筆者の頭の中に浮かんできたイメージ（というか妄想）に過ぎない。しかし、おとぎ話のカエルがたった一夜で王子さまの姿を取り戻す一方で、時にロック的求道者の様相さえ垣間見せる花田氏は、おそらくどこまでもカエルであり続け、とどまることなく王子さまに変容し続けるのではないだろうか。すでに氏が多くの人にとって、素敵な王子様であることは重々承知の上で、筆者はあえてそのように思う。
花田氏は、これらアルバム収録曲のような「素晴らしい」音楽のおかげで、「イバラの道」を歩むことになったとライナーノーツで述べているが、筆者としては、さらに氏に「酒とイバラの日々」を過ごしていっていただきたいと思う。身勝手なお願いで大変申し訳ないことだけれど。
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登録情報
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曲目リスト
ディスク：1
1. ひとつ
2. ケンとメリー~愛と風のように
3. 落陽
4. 感謝知らずの女
5. 借家のブルース
6. おさらば
商品の説明
メディア掲載レビューほか
『レンタ・ソング』とはよく名づけた。その通りに借りてきた歌。つまり彼が少年時代に慣れ親しんだ,山口富士夫,サンハウス,井上陽水,吉田拓郎,BUZZの作品をカヴァーしたミニ・アルバム。ちなみに,バックは元ルースターズの面々。それもおいしい。
-- 内容（「CDジャーナル」データベースより）