これを聴いて発表された1997年の記憶が蘇るひとが果たしているのか、と思われる程にサウンドが全然古くなっていないのがまず驚きです。個人的に当時はかなり奇異に聴こえた(まあ相当尖ってるっていうのは分かりましたが)のははっきり記憶しているけれど、それは相当先をいっていた証拠なんじゃないでしょうか。今だにまだまだ我々が追いかける立場な音という感じです。同じく演奏する側からすれば、実演部分の断片がサウンドに巧く作用していてオリジナルCDで聴いても絶妙なバランスの仕上がりだと思います。ファーストを最近のCDで聴いてみたくなり購入、サウンドが一枚剥けたようないい音で楽しめたので、続けて本作も買ってみたんですが、印象はこちらは例のLP盤の針の摩擦音の効果音が前より前面に出ていて、前衛的な印象が更に強調された感じの音です。でも耳には痛くない。情報量が旧CDより増えてるんだと思います。本作はブラス導入曲やベスが謡い方のバリエイションで枠を拡げた感はありますが、基本的に1stの延長線上にあります。ただトレンドを意識した進歩というのではなく、彼ら自身の足元の深化という風なのがいい。本当に必要なものしか入ってない。誇張することもなく意識した変貌もなく淡々と自身の深みへと到達せんとする凄さが耳を捉えます。個人的には彼らのベストは本作だと思っています。
3rdは本作で完熟したサウンドの自己解体と捉えていますが、そちらも推薦盤です。おそらくは彼ら自身10年のブランクが必要だったんですね。エイドリアンのギターが素晴らしく、普通のギターサウンドに足しも引きもしていないにも関わらず見事にサウンドに溶け合ってます。実力のあるミュージシャンです。