いくつかの輸入盤店から送られて来ていた通販リストに見掛けないバンド名とオリジナルLPのタイトルが掲載、何故か気になり最も安い店舗から取寄せ。
ヴォーカリストのモゴモゴした声と歌が気色悪く、1、2度聴いて「失敗したなあ」と思ったが、ポピュラー音楽にあるまじきシンプルなジャケット・デザインと紙のざらざらした手触りに魅せられて暫く手許に置くことに。
その後、『ミュージック・マガジン』誌の“ポスト ジョイ・ディヴィジョン”みたいなタイトルの記事に触発されて、ターン・テーブルの上に繰返し載せて聴くうちに、当時アルコールと薬漬けがまだマシだったマーティン・ハネットのプロデュースによる独得のサウンド構成と、際限なく滲み出て来るどうしようもない暗さに侵され病み付きになってしまった。
今思えば何処かに対価を取り戻そうとするセコさがあったような気もして、何でも手っ取り早く試聴可能なネット社会の現在、こういう音楽への没入の仕方って少なくなっているかも。
オリジナルは全10曲、トータル・タイムが39分28秒、リマスター効果で音の抜けがかなり好くなっている。
土台のリズム隊が割と堅固だからウワモノの自由度が高められ、ポスト・パンクらしいミディアム・テンポでダークかつソリッドな独得の音楽空間を構築。
特にラストを飾る10曲目の「 I Remember Nothing」は各種効果音が乱れ飛んでいるようで、その実きっちりと計算された緊張感を醸し出している。
完成度が高く、やっぱ、時代のパラダイム・シフトを象徴する名盤だワ。
イアン・カーティスの縊死後、メンバー全員が「こんな暗い歌詞だったのか」と間抜けなことを口々に語っている映像があるが、如何にも混沌としたあの時代らしい。
DISC2は1979年7月13日の金曜日にマンチェスターのファクトリーで行われたライヴ音源で、ボックス・セットに収められたものと同じ内容。
全12曲トータル・タイムが44分39秒、1stアルバムから7曲演奏。
音が籠っているものの攻撃的なギター・バンドだった特性が前面に出ていて、オリジナルとの違いを楽しめるし、決して悪くはないと思う。