詞中においてその背景の多くを語らないのが浜崎あゆみの歌詞ですが、「No way to say」における想いについてもまた同様でした。言葉にすると逆に気持ちを表しきれないもどかしさについて、様々なこころ模様を表したピースで核心を組み立ててゆきます。そのひとつひとつをリスナーは手にする過程で、そこから伝わってくる温度に手を当てながら、左脳と右脳両方を使って想像を膨らませてゆく曲になっています。その方が単純な展開より趣き深いですよね。当に浜崎あゆみの歌詞という感じがした彼女の代表曲です。
一方サビの盛り上がりにおける、震える感情の歌表現も彼女の魅力。この曲は特にサビの抑揚が強いので、ここで作られた倍音が非常に感動的に共鳴しています。彼女の節回しには非常にエモーショナルな歌心がありますが、すると倍音の単純な整数的快感だけでなく、その人間的な感情が増幅して伝わるゆらぎを、そこに感じるような気がします。「No way to say」のドラマチックさは決して歌詞やサウンドだけじゃなく、彼女の歌心がその魅力を多く振り撒いているのではないでしょうか。