一般に病気の種類には外因性(外傷性だから怪我に近い)、内因性(いわゆる原因不明)、
そして心因性(心理学的原因によるもの)などがありえますが、本書で扱っているような、
いわゆる精神病は内因性であり、大きく分けて統合失調症とうつ病(気分障害)からなります。
さて、統合失調症とはそもそも1905年頃、ブロイラー(独)という医師が最初に記述したものであり、
そのため笠原嘉氏(精神科医・精神医学者)などは「ブロイラー氏病」とでも呼んでおくと書いているぐらいです。
この病気は長らく「精神分裂病」などと呼ばれてきましたが、2000年頃を境に呼称が変わり、
現在に至っています。近年の科学的成果によると、結局脳内神経伝達物質であるセロトニンバランスが崩れ、
興奮伝達性のドーパミンへの抑えが効きにくくなるなど、一義的には興奮性を呈するのですが、
実はこの病気の本質はその後に続く強く深い陰性症状にあり、
その態様いかんによって晩年軽快に至ったりもしますが、一般には波状に推移することが多いようです。
よって、ファーストチョイスとしては崩れたセロトニンバランスを回復に導く安定剤のような薬剤が処方され、
経過観察となるケースが多いです。かつては類破瓜病とも呼ばれ、若年期に好発しやすい点が特徴で、
発症の初期には「誰かに付け狙われている」といった妄想様観念や、
「人の声のような変な音が聞こえる」といった幻覚状態を経験することが多く、
それらの重要な兆候が外部からは看過されがちである点、注意を喚起しておきます。
それらはセロトニンバランスの崩れという内的因子が本人に主観的に経験される形、
即ち統合失調症の症状なので、まずは専門家に受診をおすすめしておきます。
一方、当方は特に専門とはしていませんが、うつ病があり、それは大きく双極性と単極性があり、
いわゆる躁うつ病というように陰陽の状態を交互反復するか、または「大うつ病性エピソード」といった具合に、
比較的うつ状態のみが中心となるケースもあり、こちらも種々の病像があります。
本書はこうした経緯を踏まえ、種々の精神病に対する科学的・理学的アプローチとともに、
精神医学的アプローチを採用し、比較的一般の方が精神病の世界に近づきやすいように配慮したものであり、
極めて有意義な書物だと思います。科学誌「ニュートン」の特性を生かし、
誌面全体が躍動的でカラフルな構成となっているので、見やすいことこのうえなく、
その意味でもおすすめです。読者方はぜひ本書で精神病に関する知識を深め、
余計な偏見を払拭し、科学的な病気観・治療観を養っていただけたら、と思います。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。
