――― ・・・好きなんだ あんたが好きなんだ 春 もう苦しませたくない
あんたはカタギとして生きるんだ ・・・それでいつかは 誰かと 幸せになれ ―――
待望の!!!です。春の辛い別れと新しい恋に震えて泣けました。
『MODS』から1年後の物語は春のスピンオフで単体でも楽しめると思いますが、やはり前作も合わせると
より一層この世界に浸れると思います。
『MODS』では詳しく触れられていなかった時雨と春の出会いと別れ、そして11年前に彼を喪い、不眠で
疲れ切っていた春が彼とそっくりな腹違いの弟・雪鷹の面倒を見ることになって、翻弄されながらも
惹かれてしまうお話はナツメカズキ先生が描く色気のある男達の切なく痛々しい心情に溢れていました。
春がずっと囚われていた時雨の死からようやく踏み出した未来への序章。
こんなことを書くと興覚めされる方もいらっしゃるかもしれませんが・・・どこかで春が心から愛した
時雨が生きていたら・・・とも思ってしまいました。
ネタバレします。
一条組の息子で時雨の腹違いの弟・雪鷹を預かることになった春。
粗野で問題ばかり起こして性格は全く違うのに、亡くなって11年経った今でも想い続けている時雨に
よく似た彼のふとした表情や仕草に心が揺れます。
四六時中、一緒に過ごす中で春の元を抜け出した雪鷹は今回の謹慎の火種となった揉め事の相手に
捕まってしまったところを春に助け出され、春が寝惚けて自分のことを「時雨・・・」と呼んだことで、
亡き兄との関係に気づいた雪鷹は、春が今でも時雨を忘れられないままだと知り、彼を眠らせてやりたいと
思うようになります。
雪鷹に抱きしめられたまま少し眠れた春ですが、雪鷹を預けてきた春が抜けた組の八神が気持ちの変化に
揺さぶりをかけてきます。
そこから、過去に戻って時雨と出逢った頃のエピソードに。
単独でヨゴレ仕事を請け負っていた時雨が一条組から破門されたこと、そして自分を抱いた夜に自分が
託したシロを連れて街を出ようとした時雨が命を落としたことを知った春の絶望が描かれています。
自分が俺が時雨を殺した―――と。
自分を預かる条件として【Rain】を畳むはずだったのに、八神に一杯食わされてしまった春のために雪鷹は
ヤクザとして生きることを選び、八神から春を解放します。
春はそんな彼に取り下げるように詰め寄るのですが、雪鷹は冒頭に挙げた言葉を伝えて―――。
それから店を畳み、夜も眠れるようになった春ですが、それまでみていた時雨ではなく、自分を愛おしそうに
呼ぶ違う男の夢を見るようになっていたところで、偶然会った雪鷹が目の前で襲われて刺されてしまい、大量に
血が流れる中で目を開けない雪鷹の頬に顔を寄せて愛してると気持ちを言葉にします。
意外にも軽傷だった雪鷹が落ち着いたら会いに行ってもいいか?と言った1年後、時雨の墓前には時雨も、そして
雪鷹も作っていた煙草の銀紙で作られた折り鶴が置かれていて。
巻末の描き下ろし『THE NIGHT』は再会したふたりの、もどかしいほど強く求め合う姿が描かれています。
春が自分の指で慣らすのも待てないくらいに激しく何度も求める雪鷹に抱かれる春。名前を呼び合うふたりに、
胸が熱くなりました。
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