忘れもしない昭和46(1971)年の大みそか、「また逢う日まで」の日本レコード大賞受賞が決まった瞬間。タキシードに蝶ネクタイといういでたちで会場にいた尾崎紀世彦=キーヨは、満面の笑みで、両手でもってピースサインをキメてみせたのだった。まさにダブルピース。そしてもちろん、モミアゲもバッチリであった。ダイナミックに聴かせ、実力で勝負する男性歌手といえば、布施明が数年ほど先行して人気を集めていたが、その持ち歌は甘いタッチのものが多かった。よりワイルドな持ち味のキーヨのブレイクは、時代の変化が求めたものだったのかもしれない。
このベスト盤の対象となっている時期、キーヨの持ち歌の大部分は筒美京平氏が作曲していたが、制作サイドの要求と折り合いをつけるかのような歌謡曲調のものも時に織りまぜながら、「愛する人はひとり」「ふたりは若かった」「あなたに賭ける」、そしてひとつの到達点のような「かがやける愛の日に」……、と快作、力作を連打した。「こころの炎…」と両A面でヒットしたカバー曲「ゴッドファーザー~愛のテーマ」がポップス編ベスト『THE BEST』の方に組み込まれ、ここで聴けないのは残念だが、「また逢う日まで」の次に、意表をついて川口真氏に依頼をし、こちらも名曲となり大ヒットした「さよならをもう一度」、東宝映画『エスパイ』主題歌「愛こそすべて」(哀愁の平尾メロディー…)、完全別テイクによる「また逢う日まで」英語版なども聴けるのは、やはりうれしい。
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