一ノ瀬大悟は伊福部昭の音楽に影響されたと聞いたことがある。日本が世界に誇るモンスターキャラ=ゴジラの威嚇の声は猛獣の鳴き声とコントラバスの音を合成して創りあげたとも聞いたことがある。一ノ瀬大悟はライブ中に悪役プロレスラーのように
歯でビールの栓を抜き観客を楽しませつつゴジラのような哀しげな声と怒りと焦燥もコントラバスのサウンドでほとんど無意識にセンスだけで聞かせてくれる奏者であるが、ファン待望の1stアルバムはうっかり聞き流すとアコースティックなリゾートミュージック、よく聞くとゴジラ・サウンドが巧みに入り快感を刺激し、じっくり聴き込むと「素人は聞くな」の意味が良く理解できる超個性的な音楽が聴取感覚を拡大してくれる。私はこのアルバム「MILD」にすっかり中毒し他のサウンドが聞けなくなってしまった。一ノ瀬大悟デュオはゴジラのようなコントラバスと制御されたガットギターだけで音楽の新しいマーケットを開拓してしまったのかもしれない。