ミステリー仕立てでMBAのプログラムのさわりを体感できるというのが、本書のおもしろいところである。舞台は、シカゴ大学のビジネススクール。日本人留学生の3人組と米国人の学生とが、「ブリッジプログラム」と呼ばれるトレーニングで地元企業のコンサルティングをすることから、大きな犯罪に巻き込まれていくというストーリーだ。
ブリッジプログラムとは、シカゴ大学ビジネススクールの看板となっている人気のプログラムなのだという。大学の卒業生が経営している会社を中心に、シカゴ周辺の優良企業をリストアップし、グループでその会社の問題点の改善に取り組むという、実地に役立ちそうなプログラムだ。このようなトレーニングの様子を描きつつ、学生同士の会話や授業の様子などを織り交ぜながら、ビジネススクールではどのようなことを、どんな雰囲気で学んでいくのかがかいま見える仕掛けとなっている。
また本書の欄外には、シカゴ周辺の様子や、スクールのこぼれ話のような脚注が入っている。シカゴ大学のビジネススクールに通ったと思われる著者ならではの脚注には、くすっと笑えるユニークさがある。
ミステリーとしてはなんとなく先が読めてしまう内容であるが、全く関係のないものがのちのち大きな鍵を握ることになったり、思いがけないどんでん返しがあったりと、展開の上手さが引き立っている。一気に読み通すことができるので、「MBAって、誰がどんなことを勉強しているの?」という素朴な疑問を解消するのに有用だ。(朝倉真弓)
MBAの授業をライブで伝えられないか? 学生同士のカジュアルな会話を通してビジネススクールのエッセンスを伝えられないか? 楽しく気軽にドキドキしながら伝えられないか? そして『MBA娘 殺人事件』ができあがった。
主人公は経済誌の敏腕女性記者の葵。葵はMBA取得のために留学したシカゴ大学で殺人事件に遭遇する。ルームメートのエミとともに事件の解決にあたるのだが、事件を深く知りすぎてしまった葵に、徐々に殺人犯の魔の手が迫ってくる……。
警視庁から留学してきた武庫山、謎の同級生のロバート、愛犬のロットワイラーの金太郎が加わって事件は意外な方向に進んでいく。過去と現在、シカゴと東京、企業の乗っ取り屋とベンチャーキャピタルの戦い、時間も場所もダイナミックに展開する。
ミステリーを読みながらマーケティング、アカウンティング、戦略のエッセンスを理解することができる。先生や生徒のやりとりを生き生きと描写し、MBAの厳しさや楽しさを、読者がバーチャルに体験できるように工夫が凝らされている。
ぜひ、読んでみて下さい。(山本御稔)
内容(「MARC」データベースより)
シカゴ大学ビジネススクールを舞台に日本人留学生「葵」が繰り広げるドタバタ痛快ミステリ。ビジネススクールで学ぶ知識・論理だけでなく、留学の全てを疑似体験できるよう構成。MBA入門書としても使える一冊。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
山本/御稔
大手監査法人でコンサルタントとして勤務。1961年生まれ。同志社大学経済学部卒、シカゴ大学経営大学院MBA、ペンシルベニア大学ウォートン校年金マネジメントコース修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)