メディア掲載レビューほか
2003年8月からスタートした5枚連続リリースのシングル曲をすべて収録した待望の3rdアルバム。台湾ライヴの成功など、ワールドワイドでの活躍も頼もしい彼らの魅力が凝縮された傑作だ。
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)
ニヤリとしたり、こういう見方もあったのかと新鮮な驚きを覚えたりしながら、スラスラと気楽に読むことができる。そのようなエッセイほど、実は書くのにものすごくテクニックを要するものだ。
日常のたわいもない出来事を楽しく読ませる文章テクニック。普通の人がしないような、斬新な角度から物事を眺める柔軟な発想力。普通に正面から書いたらヘヴィになってしまうシリアスな題材を、表面上はあくまでもユーモラスに語ってしまえる、ひねりのセンス。それらの条件がすべて揃って初めて、軽妙なエッセイは成立すると言ってよい。そしてその資質を備えた作家やエッセイストが文章を書くのと同じように、KICK THE CAN CREWはラップをするというわけだ。
したがって、彼らが8月から5ヵ月連続でリリースしてきたシングルが、雑誌に連載したエッセイ的な作品であるとするならば、このアルバムはそれらをまとめたエッセイ集のようなもの。パラパラとページをめくるのと同感覚で、どの曲から聴き始めても肩の力を抜いて気楽に楽しめるし、聴き終えた後は、単純に“ああ、楽しかった”という感触だけが残る。でもそれは、みんなで一緒に盛り上がろうぜ、というノリを昔から得意としてきた彼らだからこそできること。“こんなお気楽な内容のエッセイだったら俺にも書けるぜ”と勘違いしたアホがその文章のタッチを真似て書いてみたところで、結局は足下にも及ばないように、このパーティ感も簡単には真似のできないものなのだ。レコーディング。イベント出演。台湾でのライヴ。彼らにとって2003年は、過労死寸前の一年であったはずだ。にもかかわらず、まだ燃え尽きずに言いたいことを言って、やりたいことをやってるぜ、というノリがこのアルバムにはある。体力、気力、集中力、精力、すべてが減退しまくりのオジサンには、それもまたうらやましい限りである。 (小暮秀夫) --- 2004年01月号 -- 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)