PHILE WEB(ファイルウェブ) プロによる商品レビュー
音楽でも映像でも活躍するPCスピーカーの入門機
「Companion2 Series III multimedia speaker system(以下、Companion2 III)」は、PCにぴったりなマルチメディアスピーカーシステム。デスクトップ、ノートPCを問わず、ディスプレイの横に並べてフィットする80W×190H×150Dmmのサイズを備える。PCリスニングを主眼に置いたモデルだけあって、筐体全体がわずかに上向きとなっており、PC前で音楽を聴くニアフィールド・リスニングを想定して設計されている。
特徴は、DSP搭載によるボーズ独自の「TrueSpace ステレオ・デジタル・シグナル・プロセッシング回路」による広がりあるサウンドだ。
まず、iTunesに取り込んであった圧縮音源の宇多田ヒカル『Automatic』を聴いてみると、そのサウンドは低音に肉厚なビートを刻ませつつ、広がりあるサウンドを伝えるタイプ。特に低音は一般的なスピーカーと比べても積極的に音圧感を出す“迫力志向"で、ノートPCの内蔵スピーカー等からのアップグレード機として用いた場合、その圧倒的な音質差を実感するだろう。ストリングスは、スピーカーの設置位置を遙かに超えたスケール感で広がり、女性ボーカルは繊細ながら声をソリッドに立たせるタイプ。特に音空間の広がりを求めるなら一級品だ。
現在の音楽リスニングにどれだけ通じるかという点では、“ハイレゾ"音源への対応度も気になるところ。スペック上は特に“ハイレゾ"準拠が謳われていないCompanion2 IIIだが、USB-DAC経由でハイレゾ音声入力を試したところ、音質差は如実に表れた。
96kHz/24bit版の宇多田ヒカル『Automatic』を聴くと、先ほどの圧縮音源と比較して低音のビートはより締まりある“情報量志向"のサウンドに、シンバルの金属の刻みも繊細なリズムが聴き分けられる情報量を備える。ボーカルの鳴りは圧縮音源とは若干異なり、ソリッドさよりむしろ音楽空間のなかで存在感を発揮する傾向だ。
PC用スピーカーとして常用できるCompanion2 IIIだけに、そこで鳴らすことを想定している“音"は本格的な音楽リスニングだけではないだろう。例えばYouTubeで公開されている映画予告編のサウンドを鳴らすといった使用シーンもちろん考えられている。
公開予定の大作SF映画の予告編PVをPCブラウザで再生してみると、PCの画面外にまで余裕で広がるBGMは絶品。迫るように聴こえるセリフと正確な音空間が生み出され、効果音のスケール感も抜群。こういった映像作品は「TrueSpace ステレオ・デジタル・シグナル・プロセッシング回路」を搭載するCompanion2 IIIの得意なソースなのだ。
ボーズのPCスピーカーの入門機として、11,500円のモデルだが、「マルチメディアスピーカー」という名称の通り、音楽だけでなく映像作品でも活躍する実力を備えている。定番ロングセラーモデルは、やはりその音質の高さで支持を集め続けていることを実感した。
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元記事URL:http://www.phileweb.com/review/article/201512/17/1886.html
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文:折原一也
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執筆日:2015年12月17日