1990年にリリースされた、オリータ・アダムス名盤のリマスター盤です。Bサイド、ライブ、リミックスなどなど、22曲ものボーナストラックを追加した2枚組。
元はブレンダ・ラッセルの曲②「Get Here」で世に名を知らしめた彼女ですが、個人的には③「Circle Of One」の歌声に、当時耳を奪われました。
軽やかで清涼感が心地良いダンスナンバーです。ゴスペルをルーツとした歌の上手さからスローでジャジーなナンバーに定評がありますが、こういうアップテンポなのもいけます。今回のボーナストラックにはリミックスバージョンも4曲収録されて、アップ感倍増です。
また①の「Rhythm Of Life」はタイトル通りリズム感あふれるグルーヴナンバー。リミックスも多数リリースされていたようで、ボーナストラックで10曲ものバージョン違い(!)を収録。個人的にはディスク2の⑨がカッコいい!原曲はダウンテンポながら美しいハウスリミックスに生まれ変わっています。
そしてスローで本領発揮です。④「You've Got To Give Me Room」は静謐で、厳かで、ただ闇雲に歌い上げる「絶唱」ではなく、抑制された歌声が本当に素晴らしい。聴き入るばかりでした。神々しいと言ったら言い過ぎかな?
そう、オリータ・アダムスの凄いところは、感情を抑制しながら歌唱力を最大限に発揮するというスタイルにあるんじゃないかなと思うのです。湯川れい子さんも彼女の歌唱についてそんな風に評していた記憶があります。
それを強く感じたのがエルトン・ジョンのカバー曲⑭「僕の瞳に小さな太陽」でした。オリジナルのアルバムには収録されてなかったですが、今回のリマスター盤のボーナストラックです。
元はエルトン・ジョンのトリビュート・アルバム「Two Rooms」に収録されていました。このトリビュート・アルバムも参加していた面子が豪華で、ロック、ポップ、ソウルなどジャンルも華やかでしたが、歌の上手さ、ヴォーカルの際立ち方はオリータ・アダムスがピカイチだと思いました(個人的には、です)。
前述したように、とにかく抑制、制御、ブレーキ(笑)をかけた歌唱。かといってぶっきらぼうでは無い。うまく表現できないけど、ムダな情感を削ぎ落としてシンプルに「歌」を伝えているとでもいうべきか。初めて聴いた時、心が震えるってこういう事かと、衝撃を受けました(蛇足ですが寝付けない時にオリータ・アダムスの歌声とリンダ・ロンシュタットの「Someone To Watch Over Me」は、効きます笑)。
それ以来彼女がアルバムをリリースする度に追っかけてきましたが、近年はスローペースになってきたようで、今回のようなリマスターものはとても嬉しいプレゼントです。これを機に90年代のアルバムも再発してくれないかな〜。
そして2枚組のリマスターで再発売するなら、今回のような付加価値(大量のボートラ!)は欲しいよなと改めて思いました。リマスターものの見本のような一枚です。