この本を最初は原文で読んだ、難しくて、堪らずに邦訳版に切り替えたのだった。野中香方子さんの翻訳は、アマゾン•コムの書評を見る限りにおいては評判がよくないが、私にとっては上出来に思える。
アマゾン•コムの書評を幾つか見ると、星五つもそうでないものも、程度の高いものが多いと感じた。中国との軋轢だけを気にしているのではなく、日本の国際的な立ち位置を考えている人達が沢山居るのだと心強く感じた。
これからこの本を読む人の為に、邪魔にならない程度に内容を紹介する。
アメリカの中国専門家として著名な、マイケル・ピルズベリー氏が、自身の反省も含めて、中国にだまされてきたアメリカの対中政策の誤りを真摯に述べたものである。最初は、ようやく中国のずるさに気がついたか、と快哉したが、次第にアメリカ人のアジアに対する無知に腹が立ってきた、とは言え、振り返ってみれば、人のことは言えない、「力を隠し、無力なふりをせよ」(本文より)と、弱者で貧者の振りをする中国に多額の政府開発援助(ODA)を供与していたにもかかわらず、少しも感謝されなかった日本である。昔からぶれずに反中国の警告を発してきた政治家は、石原慎太郎氏くらいではないだろうか。
著者は、「中国人は、自国の対中政策を批判するアメリカ人は政治的見解の相違から分裂し、決して互いに協力しないということを喜んでいる」と述べているが、同じことが日本にも言える、例えば、日本の首相が靖国神社に参拝することを好まない日本人が居る限り、中国は参拝を批判するだろうし、沖縄の革新団体が「独立」の言葉を発すると、尖閣諸島への接近を始める、など日本の政治家或は庶民の動きをよく観察して行動していると思う。
Shelia A. Smithというアメリカ人の、「Intimate Rivals Japanese Domestic Politics and a Rising China」という本があり、これは日本と中国との確執を公平に見て書いた秀作だが、著者が公平に書くことにより、中国の不当な対日外交あぶり出されるという、まことに快い本だった。これは昨年(2015年)読んだ本だが、次第にアメリカ人の間で、中国は自分たちが考えているような国ではない、と思い始めたのではないかと思うのだった。
思いを同じくするのは、中国がこれ以上に経済大国になった時に、多くの国々が軍事征服ではなく経済政策で中国の圧力に屈していくだろうという、著者の見解である。実は中国が衛星破壊をして宇宙に危険なごみをまき散らしたにもかかわらず、人口の多い中国での興行収益を上げる為に、ハリウッドは、ソ連を悪玉にした、「ゼロ・グラヴィティ」をいう映画を作っている(本文より)。日本でも、政冷経熱、という言葉があった。
そう言う警告と自戒の思いを込めて、この本を読んだ方がいいと思う。繰り返すが、翻訳は悪くない、要はどれだけこの問題に関心を持っているかである。
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