スティーヴ・アウディの講演は何度か聞いたことがあり、明快でわかりやすいので感心した。そこで、懸案の圏論の独習のため、この教科書、第2版を買って、全体の筋をざっと確認(それができるように、各章の冒頭に短い要約があって行き届いている)、最初の2章ほどを読んでみた。第1章を読んだだけで全体の質が予想できるような、明快でわかりやすい記述である。特筆すべき事は、抽象的な定義だけで済ませるのではなく、すぐに続けて、読者がある程度知っていそうな数学や論理学などの分野から、その定義に当てはまる実例がいくつも紹介されて、定義の意味がつかみやすいように親切な工夫がされていること。
また、圏論(カテゴリー理論)とは一体何を目指しているのか、という本質的な問いにも、実にわかりやすい、しかも手短な言明がズバリと付け加えられており、「あ、なるほど」と感心させる。圏論とは、"structure-preserving transformation" を特徴づけ、その条件を満たすような構造を明らかにするもの。"Transformation"とはあるものを別のものに移し替える函数 function といってもよい。函数、関係が主役で、関係づけられる対象は何でもいいのだ。そのため、一般の理論のように「しかじかの対象がどのように振る舞うか」を解明するもの、と見当をつけると、圏論のポイントを誤解してしまう。哲学系では「カテゴリー」というとカント的な分類概念を連想してしまいがちだが、そうではなく「関係づける函数、関係そのもの」が主役となるのである。10章に渡る記述にも、大きな筋書きがあって、9,10章の山場に向かう様子が最初に予告されている。読み進むのが楽しみである。なお、本書には邦訳もあるが、英語が苦手でない限り、できるだけ、わかりやすい英語で書かれた原書を読むことをおすすめする。日本語訳がまずければ、読む楽しみも半減してしまうという危惧がある!
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