私の所有する輸入盤には、ボブ・ベルドンによる8ページのライナー・ノーツがある。これは情報としても分析としてもよく書けている。以下は主にその抄訳。
デューク・エリントンが音楽の進化のペースを規定した。エリントンは活動初期に、先進的すぎると評されていたのである。例えばブバー・ミレイ(Bubber Miley)はトランペットにワウワウを導入した。ソニー・グリア(Sonny Greer)は、カウベルやウッドブロックなどを備えた巨大なドラムセットを導入した。
次にジャズの方向性を変えたのはチャーリー・パーカーとディジー・ガレスピー。
マイルズはキャリアを通じてスタイルを変え続けた。“On The Corner”は1972年発表。1926年生まれのマイルズは当時46歳。スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ジェームズ・ブラウンの影響を受けたファンク・アルバムである。カールハインツ・シュトックハウゼン(ループによる繰り返し)の影響も受けている。ジョン・マクラフリン(ギター)、ジャック・デジョネット(ドラムス)、デヴィッド・リーブマン(ソプラノ・サックス)、ハービー・ハンコック(エレクトリック・ピアノ、シンセサイザー)、バダル・ロイ(タブラ)らの多彩なメンバーを、エリントンのようにうまく起用している。そして作品としてまとめたのはプロデューサーのテオ・マセロ。
全曲がマイルズの自作曲。時代を切り拓く快作である。