先ず、本作の制作過程から解説。
自分も最初勘違いしてたが、しょうもない映画のでは無くマニアックな怪獣フィギュアメーカーのアルバトロスが宣弘社の版権を買った事で、宣弘社のSF特撮作品のリメイク企画が立ち上がる。
その任を任されたのは、ゴジラ映画の造形(ビオランテ)で注目を浴び、早くからCGもやり始め、TYOに買収された後、TYOが円谷も買った為にそちらに吸収される形で消えたビルドアップ社長であった岡部淳也である。
岡部は円谷の副社長という待遇だったが、バンダイ傘下になった後辞職し、この映画の制作のブラストを設立する。
当初は「シルバー仮面」「レッドバロン」「アイアンキング」の三作品をMIXしたリメイクの企画であったが、岡部の提案で絞った形となった。
それはシルバー仮面をベースに巨大ロボットとしてのレッドバロンを付加したものとなったのは、本作を見れば判るだろう。
また、かなりシルバー仮面リスペクトな設定で、敵は実相寺が監督した1,2話をモチーフにし、登場人物などオリジナルに似せた部分とわざと変えた部分は拘りが見える。
光三(オリジナルではタロウの篠田三郎がやっていた)は宇宙人を見破れる眼鏡は同じだが、光一とひとみが未来に残った為、機械工作や司令塔も担当する知性派と云うかオタクっぽいキャラに。
同じ理由で光一の銃はシルバー仮面である光二の武器に。
オリジナルではひ弱設定で途中で出なくなった末っ子のはるかに関しては、当時、新進アクション女優として名前が売れ始めていた山本千尋の起用もあり、何か光二より強いんじゃねぇかってくらいのキャラになっている。
逆にレッドバロン部分はキャラの名前とか兄が作った辺りと、オリジナルでの親父(紅健太郎)の話を兄(健一郎)に一部置き換えて入れてあるくらいか。(その親父の話関係はセリフなどにも反映されており、そこは割とマニアック)
むしろ、最後に入れたアイアンキング要素の方がリスペクトを強く感じられた。
前述の様に、監督の岡部淳也が円谷プロと色々あった人なのは、本作が宣弘社特撮のリブートである点で因縁を感じる。
円谷が業績不振や円谷英二の死去でスタッフが抜けていく中、月光仮面をはじめ、かつては人気作を出していた宣弘社はアニメの方にシフト気味になり、久々にやったドラマはイマイチ伸びず、そこに円谷のウルトラマンなどのスタッフが集められて作られたのがシルバー仮面である。
その流れはアイアンキング、レッドバロンと続くが、その後、宣弘社が抜け、実際に制作していた元円谷側の日本現代企画が継いでマッハバロンを作り、またそこから分裂したところがガンバロンを制作。
一時代を作り、阿久悠や伊上勝(若い人には井上敏樹の親父のが判り易いか)を輩出した宣弘社も名前だけの権利管理会社になっていった。
さて、前置きと云うか周辺情報ばかりになってしまうのが古いおたくの悪いところなので、今度は本作について書いていこう。
主役の渡部秀はオーズの人。
平成ライダー主役の大半の様に、その後は微妙なポジションだな。
序盤で死ぬ役だが、アマゾンズの藤田富も出てる。
今回は頭の悪いキャラでオーズとは印象が違うが、主役と書いたもののどうもレッドバロン比率が低いし、最後まで頭悪いのは悪意でもあったのか、昭和の番長キャラみたいなのにしたかったのか…
シルバー仮面な大東駿介は、まぁ人気のある若手だが、個人的には深夜辺りの漫画原作とかのしょうもないドラマによく出てくる人な認識。
平成特撮俳優の多いトップコートから移籍したんでライダーとか出そうで出てないとか思ったら、最近の映画で出てたんだな。
メインキャラでは役者慣れしてるし良い感じ。
はるかの山本千尋は太秦ライムライト(これも未見なら良い映画なのでオススメ)で知ったが、戦隊ライダーウルトラも制覇してるし令和を代表するアクション女優になっていくかもね。
今回は演技の方はまだまだな感じか。
アクションも長くないし、CG合成で演舞っぽさが強い。
敵役で出てる松崎悠希はハリウッド映画やドラマで見る人だよね。
調べたら藤田富と同じ事務所なんだね。
折角、北村龍平が協力してるなら、大東と松崎の戦闘を北村に撮ってもらった方が良かったかもね。
いや、昔の北村の作品みたいなツッコミどころは多くなってるんだけどもw
その他ちょい役で有名な人が何人か出ているが、注目すべきはアインキングの主人公である静弦太郎を寺脇康文がやっていたところか。
リブート企画なので続編を匂わせる終わり方だったが、アイアンキングは今やると色々波乱を含みそうな内容だし、本当に続編作る気があるかは判らないが、あるなら寺脇らの活躍する話を期待したい。
内容的にツッコミを入れたくなる場面も多いのだが、80分と云う長さで登場編として上手くまとめてあるのは悪くない。
最後の70~80年代的なテーマの入れ方も強引だが懐かしい。
何より、かつての子供たちにもアピールしつつ、しょうもない名前だけのリブートが多い中で一定以上のクオリティの作品になっている本作は、もっと多くの特撮ファンに観ていただきたいので★5とさせてもらう。