上位の肯定的レビュー
5つ星のうち5.0教科書を読めなくとも入試を突破できる危険
2018年12月22日に日本でレビュー済み
本書の中盤において、第五世代コンピュータに公的資金がザブザブ注がれた事実が説明されている。
プロジェクトは大失敗だったにも関わらず、総括が全くされていないのだ。
情報学の知人から聞いた話だが、スパコン研究というのは既得権益の世界なのだそうだ。
ゼネコンのように一部の学者が権力を握り、資金力さえあれば計算能力が向上する、知的生産性の低い分野なのだとか。
失敗から学ぼうとせず、公的資金や権力を独占することが目的化した闇が、垣間見える。
本書を読んで感銘を受けたのは、(スパコン研究者とは対照的に)著者が東ロボの限界を早々に見極め、ムダにスペックの向上を目指さなかったことである。
バカな国民に対する説明はそこそこにして、大言壮語して自分の地位を確保することなど簡単だったにも関わらず。
著者は東ロボの失敗から(現行の)AIの限界を見出し、同じ課題が大多数の日本人にも当てはまることに気付いた。
そしてAIが人間の職を奪うという近未来の危機に、教育というかたちで取り組むことを決断した。
旧帝大を除けば、大学入試はパターン認識(AIが能力を発揮する)で対応できてしまうという事実は指摘されていたことである。
パターンが変わると凍り付いて問題文を読むことすらできない、そのような学生は教育現場のあちこちで見掛ける。
アシカやオウムに算数の問題を解かせるように、ある程度の問題なら意味を理解しなくとも(訓練だけで)解けるということなのだ。
その点でReading Skillが塾通いと相関しないという結果は、大変興味深い。
進学塾というのは子どもの長期的な将来はともかく、かたちだけ点数を取らせれば親の(当座の)要求には応えているのだから。
またReading Skillを求められる有名私立中学の入試が、はじめから優秀な子どものスクリーニングとして機能しているという指摘も面白い。
私自身高等教育に携わる人間として、また我が子が入試改革に翻弄される親として、著者の活動を支持して行きたい。