藤子不二雄といえば、断然F派だった。内外のどのSF作家と比較しても遜色のない傑作群は、日本の宝だと思う。
それに比べてⒶはなにほどでもない、と若いころは考えていた。
が、年を喰って冷静に物事を俯瞰するようになってからは、
我孫子は藤本とは別の意味で凄い業績の持ち主だということに気付いた。
『怪物くん』『ハットリくん』などのギャグから『シルバークロス』などのアクションまで、
初期作品はどれをとっても面白い。『黒ベエ』は海外の異色作家を思わせる黒い連作群だ。
『プロゴルファー猿』は少年誌初のゴルフ漫画で、大ヒット作だ。
青年誌に舞台を移してからも様々な作品をものしている。
本人の告白で初めて気づいたが、藤本が資料を読み込んで想像力を飛翔させる書斎派だったのに対して、
我孫子は酒にゴルフに海外旅行と遊びまくって創作の糧とする実践派だったらしい。どちらが上というものではない。SFファンとしてはFに軍配を上げたくなるが、Ⓐだって印象に残る作品は山ほど描いている。
海外旅行が珍しかったころに書かれた一連の作品は、実践派の面目躍如といったところだ。
子供時代から現在までを語った自伝は、とても読みごたえがある。
菜食の原因(お寺の息子だった)とか、魔太郎が途中から呪術使いになってしまった理由とか、トリビアが嬉しい。
長年のファンならば必読の名著といえる。
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