アクションゲーム『7BLADES』のノベライズ。主人公は「地獄極楽丸」と「鉄砲お百合」の二人で、ゲームではどちらも平等の扱いでしたが、この小説では7:3の割合で、大部分が極楽丸のパートを占めています。ただし、ゲームの方では物語が冗長過ぎた感があったので、一本のストーリーとしては綺麗にまとまっています。
『極楽丸編』ではほぼ原作ゲーム通りの展開を見せます。陰陽師や南蛮人の内面や黄金教の詳細が語られます。ゲーム上では極楽丸の基本装備は『麒麟』という、いわゆるバランスタイプの武器がムービー等で使われていましたが、本作ではプレイヤーの評判が良かったからか、広範囲かつ攻撃力のある『玄武』がメイン武器として扱われています(黄金王に折られる役目も担当)。
そして『極楽丸編』最大の特徴として、女忍者「綾音」が実質的なヒロインとして活躍します。ゲームでは終盤まで極楽丸(とプレイヤー)には名前が知られず、その悲劇的な最後とクリア特典の操作キャラとしての性能の良さから、ファンからの人気も高かった為か、小説内では、極楽丸への好意、比丘尼や半蔵への恩義がしっかり語られており、忍者としての使命や捨てきれない情の間に苦しむ心理描写が描かれる等、正しくヒロインと言ってもよいポジションです。極楽丸の方もお百合の存在が無かったら、彼女を伴侶に選んでもいいと思う程。
『お百合編』は、極楽丸編の合間に短編的な扱いで挿入されています。アシストキャラである『賞金稼ぎ団』や「謎の少女」関連の描写はバッサリカット。ゲーム本編以上に『極楽丸編の裏話・設定補完』の面が押し出されています。が、その代わり短い尺でもお百合の内面描写はしっかり描かれています。お百合はゲーム終盤で露呈した精神的な脆さが早期に描写され、貧しい孤児時代のトラウマや凄惨な賞金稼ぎ屋時代の様子が描かれます。
またお百合はメイン銃を、『恋猫→青嵐→星月夜→虎落笛』と強化更新していきますが、本作では最後まで『恋猫』のまま。消費型は『石榴』が登場。
総評として、ゲームで疎かだった登場人物の内面描写に力を注がれており、不満点だった駆け足展開や世界観の補完がされています。読んだ当初はボリューム不足を感じましたが、前述の通り大切な所はしっかり描写されているので、丁度良い長さになっています。
もう大分古いゲームの小説ですが、あの時のワクワク感や奇天烈な世界観をもう一度味わいたいという方にお勧めです。
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