お気に入りのワインショップの店主が本を書いた。神戸岡本の『R-the wine shop』の渡辺さんだ。お若い(と見える?)のに世界各地のワインの知識が半端でなく、合わせる料理や飲み頃の温度はもちろん、2日目、3日目にワインの味がどう変化するかまで、いつも懇切丁寧に指南してくれる。と言って決して型にとらわれず、また押し付けでもない、あくまで客の好みとレベルに合わせたワイン選びをサポートしてくれる。
タイトル『3日目のワインがいちばんおいしい』はそんな渡辺さんのスタイルと本書のコンセプトを実にうまく表現している。一言で言えば、それはワインについての「思い込み」を捨てよということだ。「ワインは時間が経つとまずくなる」という「常識」は必ずしも正しくない。特に日常の食卓にのぼることの多いヴィンテージの若い果実味豊かなワインは適度な酸化(=熟成)が味わいに丸みをもたらすという。
日本の風土や食文化に合わせたワインの楽しみ方を提案しているのも本書の特徴だ。「赤ワインは常温で飲むもの」という「常識」も欧米と日本では前提が異なる。湿度の高い日本では、赤ワインでも少し冷やした方が飲み易いし、逆によく冷えた白ワインは欧米では長い食事時間の中で適度な温度に変化するが、日本では時間が短か過ぎる。だから20〜30分前に冷蔵庫から出して常温に馴染ませるとよい。「肉には赤、魚には白」という「常識」も食材の特徴をふまえることが肝要だ。欧米のように赤身のステーキなら別だが、サシが入ったブランド和牛はむしろ白ワインの方が合わせやすいという。かつて品質が劣るとされた日本産のワインも、近年は日本の食材にマッチした繊細な味わいのあるものが多いという。
渡辺さんは自身のFBで本書をビギナーに向けて書いたと書いている。半分は正しいが、勿論半分は謙遜というもの。プロや玄人はともかく、欧米の「常識」を鵜呑みにした世の「ワイン通」にとっても「目から鱗」の発見が少なくない筈だ。「普段着」でワインを楽しみたい全ての人にお奨めする。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。
