作風は(ものによっては限りなく近いが)無調ではないにせよ、この現代の、それも最先端たる作曲家で、これだけの前奏曲とフーガを描けるのはカプースチンぐらいだろう。
今までも、エチュード、プレリュード、ソナタなどで古典音楽に立ち向かっていただけに、相手がかの大バッハでは分が悪いかな?と心配もしたが、ふたを開けてみれば無問題。しっかりとカプースチンらしい作品に仕上がっています。
主題と応答はハッキリと聞き取れるが、それらが混ざると、もはやジャズにしか聞こえないのが面白い。でもしっかり声部書法を守っていて、それが楽曲の統一感、古典感を演出する。
個人的には、「裏のコード」がより使われるようになった気がする。前奏曲とフーガの合間、必然的に段落の区切りとなるところ、カプースチンはさらりと裏のコードを鳴らして次に進むあたり、何とも洒落ている。