原著はSOCIOLOGY:The Basicの第2版。初版は2010年刊で、第2版は2016年刊。本訳本は文庫オリジナルである。
著者のケン・プラマーも監訳者の赤川学氏も、専攻はセクシュアリティ研究のようである。
本書は8つの章からなり、著者はこれを社会学的迷宮への8つの旅としている。8章の後に、結論がついている。
各章の最後に、要約、さらなる探究、読書案内がついている。要約は章の内容の要約になっている場合と、なっていない場合がある。
ほかに、各章にコラム形式のボックスがついている。このボックスには、結構重要な事項や、まとめ的内容が書かれているので要注意である。さらに、各章に0から数個の表が載っている。この表もボックス同様に要注意。
一、概要
〇第1章 想像力ー自分が作ったわけではない世界で行為すること
①社会学は社会を体系的に、懐疑的に、そして批判的に考えるための想像力を涵養するもの。
②社会学は大きなものから小さなものまで何でも研究し、批判することと称賛することのどちらもできる。
③社会学は、我々が決して自分で作ったわけではない世界に生まれるのだとしても、その世界で行為し、それを変えられるという発想を決して手放さない。
④社会学はアウトサイダーの立場を取る。
〇第2章 理論ー社会的なものを思考する
ここは社会的なるものと、その探究理論。
外部としての社会的事実と、内部に成長する役割取得、相互主観性の説明の後、社会化と自己、自己と相互作用、社会的存在としての身体と続き、社会理論の説明に入っていく。
社会理論はおおむね表2-1に沿って述べられており、この表2-1は大変参考になる。社会的紐帯、アノミー、社会関係資本、機能主義、構造主義、制度、コンフリクト理論、役割理論、ドラマトゥルギー、記号論、言説、諸文化、合理的選択理論、抑圧された無意識、複雑性と流動性など。
ボックスの「社会的身体」が面白い。
〇第3章 社会ー21世紀を生きる人間
近代現代の簡単な社会学史のあと、21世紀世界と人間の考察。過密状態の地球と高齢化社会、農村生活からグローバルシティへ。ネオリベラリズムとその破綻、デジタル社会とメディア化、環境破壊、脱世俗化世界における神の回帰、グローバルな暴力、テロリズム、男性性暴力、移住移民等。
この章はボックスが7つもあり、そのうち、「グローバル化とグローカル化」、「資本主義の有害性」、「批判的デジタリズム」が面白い。
〇第4章 歴史ー巨人の肩の上に立つ
駆け足の欧米社会学史。
19世紀における古典的社会学→20世紀初めの専門職化した社会学→戦時下の社会学→第二次大戦後の社会学→1968年前後(50年代後半から80年代初頭)の社会学と→80年代から現代の社会学と展開される。現代の社会学は多様化しており、その原因は、ポストモダニズム、多文化主義、フェミニズム参入、カルチュア・スタディーズの台頭、ポストコロニアル理論、クィア理論の参入等である。ボックスで「21世紀の社会学」としてまとめられているのは、1,グローバル化、2,デジタリズム、3,多領域性、4,価値意識、5,大学をこえてである。
著作リストを男性と女性(フェミニズム)に分けているのが面白い。
〇第5章 問いー社会学的想像力を育むには
たぶん、この章が一番面白く、一番難解かなと思う。
冒頭のボックスに「社会学的想像力を生み出すための問い」として12のアドバイスがあげられ、この順に解説される。1根底にある社会構造、2社会的な行為と意味、3ミクロ/行為とマクロ/構造を架橋、4生きられた文化に共感、5物質世界を調べる、6時間と歴史の意識を養う、7偶有性、変化、流れを見る、8社会生活を場所と空間の中に位置付ける、9生活誌につなげる、10権力を真剣に受け止める、11複雑性、多数性、矛盾について考える、12不平等のマトリックスを分析、である。
〇第6章 リサーチー経験的な者に批判的に関与する
ここは社会学者のスキル、つまり、商売のコツの伝授。ただし、前半は認識論や社会科学の本質の話。後半になって、デジタル調査、データ処理と評価、ナラティブ解釈と実践的になっていく。最後に、社会学者、学生へのより地に足がついた(大変親切な)アドバイスが12個載っている。
〇第7章 トラブルー不平等の苦しみ
世界の不平等、社会的不平等について、詳細に論じる。
社会的不平等は、1 階級秩序、2 ジェンダー秩序、3 人種秩序、4 年齢階層と世代秩序、5 国家、6 性の秩序、7 障害と健康秩序である。このうち、2のジェンダー秩序を支える観念とアイデンティティは「性差別とジェンダー・アイデンティティ」だが、6の性の秩序の場合は「異性愛中心主義、同性愛嫌悪、異性愛規範、セクシュアル・アイデンティティ」である。
〇第8章 ビジョンー社会学的希望を創造する
ここは社会学者の現代の役割、新しい領域、未来、モラル等で、興味深い。社会学者の対話の作法(つまり、モラル)として、12のガイドライン(著者は12という数字が好きなのかな)が示されている。
〇結論 社会学的創造力ー21のテーゼ
本書の要約と挑戦的課題を21のテーゼにまとめたもの。1つだけ引用する。
「21 社会学は誰にとってもよりよい世界という希望をもたらす。よりよき世界の未来想像を収集し、新しい社会的世界をエンパワーし、批判的市民として行為するための実験行為を行う一助となるようなツールを提供する。・・・」
二、私的感想
〇たいへん面白かった。勉強になった。
〇社会学の歴史、理論、現在、制限、物の見方、考え方、スキル、作法、未来まで何でも書いてある。
〇内容はかなり膨大だが、ボックス、表、アドバイスという形で著述内容があちこちにまとめられていて、理解しやすくなっている。
〇最後についている用語解説は10頁ほどだが、通読すると面白い。たとえば「対話の作法」とは「単独の一致した声ではなく、複数の異なる声の存在を認識すること」である。
21世紀を生きるための社会学の教科書 (ちくま学芸文庫) (日本語) 文庫 – 2021/1/9
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本の長さ490ページ
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言語日本語
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出版社筑摩書房
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発売日2021/1/9
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ISBN-104480510311
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ISBN-13978-4480510310
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2021/1/9)
- 発売日 : 2021/1/9
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 490ページ
- ISBN-10 : 4480510311
- ISBN-13 : 978-4480510310
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個人の人生に起こることには社会的な背景がある。個人的なことに思えても、それは、じつは、社会的なことなのだ。
「失業のライフストーリーによって明らかになるのは、個人の失敗ではなく、より広い経済の仕組みである。同性愛は個人の病理ではなく、法律とジェンダーの社会的意味によって深く形成されている。」(p.258)。
その人が努力をしてこなかったり能力がなかったりしたから仕事につけない、と言うがそうではない。まず、こういう言い方自体が、社会が築き上げたものだ。客観的な真理のようなふりをしているが、社会が作り上げた「お話し」だ。
失業は、雇用者がその人を解雇するから生じる。この意味でも、失業は個人的なことではなく、社会的なことだ。解雇の理由も、不況であるとか、この人が努力しないとか能力がないという「お話し」に便乗しているか、いずれにしても社会的なものである。
「人間は女と男という性に二分される。恋愛、性愛はこの二者間で行われる。女と女、男と男が恋愛や性愛の関係になるのは自然に反する」。これも、社会が作り上げた「お話し」だ。この「お話し」によれば、「同性愛」は個人の病理とされてしまう。
法律も「結婚は女と男のあいだで」と定義する。そもそも「同性愛」という言葉も「結婚は異性愛による」と決めた法律や社会の「お話し」が生み出したものであるかもしれない。同性愛も異性愛も区別せず、ただ「愛」があると考えるのなら、「同性愛は個人の病理」などとされることはないのではないか。むしろ「同性愛は病理」という「お話し」こそが社会の病理ではないか。
社会学は、わたしたちがあたりまえ、自然と思っていることが、じつは、社会が作り出した「お話し」であることを明らかにする。そして、この「お話し」が人を苦しめているなら、その「お話し」によらない社会を目指そうとする。
「社会学者は当たり前の社会を疑い、問いを投げかけ、それを今ここの世界とは別のあり得た世界とつなげる」(p.385)。
同性愛を病理する社会が当たり前なのではない。同性愛を病理ではない、あるいは、当然とする社会もあり得たのだ。そして、これからも、あり得るのだ。失業を個人の努力や能力の問題にせずに、経済や政治の失敗とする社会もあり得るだろう。
簡単ではない。しかし、描き出さなければならない。
「ユートピアには決してたどり着けないかもしれないが、そのビジョンは重要だ」(p.414)。
ユートピアはどこにもないが、今よりましな社会、今よりましな「お話し」は、たしかにあるのだ。現代社会にも、かつてよりひどくなった部分だけでなく、ましになった部分もある。
「失業のライフストーリーによって明らかになるのは、個人の失敗ではなく、より広い経済の仕組みである。同性愛は個人の病理ではなく、法律とジェンダーの社会的意味によって深く形成されている。」(p.258)。
その人が努力をしてこなかったり能力がなかったりしたから仕事につけない、と言うがそうではない。まず、こういう言い方自体が、社会が築き上げたものだ。客観的な真理のようなふりをしているが、社会が作り上げた「お話し」だ。
失業は、雇用者がその人を解雇するから生じる。この意味でも、失業は個人的なことではなく、社会的なことだ。解雇の理由も、不況であるとか、この人が努力しないとか能力がないという「お話し」に便乗しているか、いずれにしても社会的なものである。
「人間は女と男という性に二分される。恋愛、性愛はこの二者間で行われる。女と女、男と男が恋愛や性愛の関係になるのは自然に反する」。これも、社会が作り上げた「お話し」だ。この「お話し」によれば、「同性愛」は個人の病理とされてしまう。
法律も「結婚は女と男のあいだで」と定義する。そもそも「同性愛」という言葉も「結婚は異性愛による」と決めた法律や社会の「お話し」が生み出したものであるかもしれない。同性愛も異性愛も区別せず、ただ「愛」があると考えるのなら、「同性愛は個人の病理」などとされることはないのではないか。むしろ「同性愛は病理」という「お話し」こそが社会の病理ではないか。
社会学は、わたしたちがあたりまえ、自然と思っていることが、じつは、社会が作り出した「お話し」であることを明らかにする。そして、この「お話し」が人を苦しめているなら、その「お話し」によらない社会を目指そうとする。
「社会学者は当たり前の社会を疑い、問いを投げかけ、それを今ここの世界とは別のあり得た世界とつなげる」(p.385)。
同性愛を病理する社会が当たり前なのではない。同性愛を病理ではない、あるいは、当然とする社会もあり得たのだ。そして、これからも、あり得るのだ。失業を個人の努力や能力の問題にせずに、経済や政治の失敗とする社会もあり得るだろう。
簡単ではない。しかし、描き出さなければならない。
「ユートピアには決してたどり着けないかもしれないが、そのビジョンは重要だ」(p.414)。
ユートピアはどこにもないが、今よりましな社会、今よりましな「お話し」は、たしかにあるのだ。現代社会にも、かつてよりひどくなった部分だけでなく、ましになった部分もある。
2021年1月21日に日本でレビュー済み
「Sociology: the Basic,Second Edition」の邦訳で、原著は、2016年。初版は、2010年。同著者の「Sociology:A Global Introduciton」は未訳。
全8章と結論の21テーゼ。
一章は、ボックス記事や図を挟みながら、内容を語り、最後に、要約、さらなる探究、読書案内、と構成されます。読者案内の邦訳があるかは、参考文献より分かります。かなりの数の読書案内があるので、興味を持っているものを探すのに良いと思います。
C・ライト・ミルズの「社会学的想像力」の影響が大きいのは明らかです。邦訳が文庫化しています。
第一章は、どういう社会学があるのかを紹介していきます。トマトやトイレやテレフォンの社会学や飛行機の社会学と戦争や貧困を対象にする社会学と、大小様々な研究のあり方を示します。
第二章は、理論です。社会学の対象である「社会的なるもの」の考え方とミクロ・メゾ・マクロ社会学を説明し、社会を見る時に有効なメタファー(有機体、コンフリクト、ドラマ、言説、ゲームなど)を紹介します。
第三章では、21世紀社会は、どういうふうに変化してできたか、今現在どういうものか説明し、21世紀における主要な社会的な問題を上げていきます。テロリズム、環境問題、人口問題、デジタル化問題、合理化・管理化問題、暴力、ネイション・ステイツ問題など。
第四章は、社会学の200年の歴史です。コント、スペンサー、デュルケーム、マルクス、ウェーバー、ジンメル、シカゴ社会学、デュボイズ、批判理論、機能主義、C•ライト・ミルズ、『1968年』、ポストモダニズム、多文化主義、ジェンダー研究、クィア理論、カルチュラル・スタディーズ、ポストコロニアル研究。
第五章から第七章は、社会学的想像力を生み出す、伸ばすために何を追求すべきか、述べます。
第五章は、社会学の研究における問いかけの仕方です。問いの12個のうち、最後の不平等のマトリクスは、第七章となります。問いは、社会構造、社会的行為とその意味、行為と構造の関係、文化、物質世界、歴史など。
第六章は、リサーチです。リサーチの大枠として、3つのスキルを解説します。認識論的作業、経験的作業、分析的な作業の3つのスキルです。
第七章は、不平等についてです。マルクスからブルデューの階級問題、資源へのアクセス可能性への視点、機機会構造の七つの主要原因、不平等の主観的な側面(内面)、不平等に至る過程(無力化、他者性、搾取、暴力)を見ていきます。
第八章は、社会学の未来のあり方です。社会学の規範論的な学問のあり方を問います。どういうふうに社会をより良くしていくのか、そして、その価値観と価値中立性の兼ね合いを問います。
社会学者のあり方から、社会学の成果を利用する人まで述べて、未来のユートピアへの間断ないプロセスを求めていきます。
【感想】
ケン・プラマーは、セクシュアリティやクイア研究で有名らしく、日本では生活史・ライフ・ヒストリーの研究で知られているようです。
入門書で著者の専門に偏る場合がありますが、この本は、特に、そういうことはなく満遍なく広く社会学を取り扱っています。
物足りないところもありますが、全体が分かりにくい社会学の概観を知るには、よい本だと思います。
【参考】
入門書としては、コリンズ「脱常識の社会学」、バウマン「社会学の考え方」、バーガー「社会学への招待」とかが文庫にありますね。ハードカバーならば、ギデンズ「社会学」も定番です。
あまり古典の純粋な理論書から社会学にアプローチするのはオススメしません。面白くないでしょうから。
「孤独な群衆」「脱学校の社会学」や「自殺論」とか「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」など、適当に興味の持てそうな実際の研究の本を開いた方がいいです。
もっと下世話に、「日本の童貞 」とか「スカートの下の劇場」とかでもいいですけど。
「タテ社会の人間関係」や「空気の研究」など現代の日本人らしい社会学系の本も面白いと思います。
全8章と結論の21テーゼ。
一章は、ボックス記事や図を挟みながら、内容を語り、最後に、要約、さらなる探究、読書案内、と構成されます。読者案内の邦訳があるかは、参考文献より分かります。かなりの数の読書案内があるので、興味を持っているものを探すのに良いと思います。
C・ライト・ミルズの「社会学的想像力」の影響が大きいのは明らかです。邦訳が文庫化しています。
第一章は、どういう社会学があるのかを紹介していきます。トマトやトイレやテレフォンの社会学や飛行機の社会学と戦争や貧困を対象にする社会学と、大小様々な研究のあり方を示します。
第二章は、理論です。社会学の対象である「社会的なるもの」の考え方とミクロ・メゾ・マクロ社会学を説明し、社会を見る時に有効なメタファー(有機体、コンフリクト、ドラマ、言説、ゲームなど)を紹介します。
第三章では、21世紀社会は、どういうふうに変化してできたか、今現在どういうものか説明し、21世紀における主要な社会的な問題を上げていきます。テロリズム、環境問題、人口問題、デジタル化問題、合理化・管理化問題、暴力、ネイション・ステイツ問題など。
第四章は、社会学の200年の歴史です。コント、スペンサー、デュルケーム、マルクス、ウェーバー、ジンメル、シカゴ社会学、デュボイズ、批判理論、機能主義、C•ライト・ミルズ、『1968年』、ポストモダニズム、多文化主義、ジェンダー研究、クィア理論、カルチュラル・スタディーズ、ポストコロニアル研究。
第五章から第七章は、社会学的想像力を生み出す、伸ばすために何を追求すべきか、述べます。
第五章は、社会学の研究における問いかけの仕方です。問いの12個のうち、最後の不平等のマトリクスは、第七章となります。問いは、社会構造、社会的行為とその意味、行為と構造の関係、文化、物質世界、歴史など。
第六章は、リサーチです。リサーチの大枠として、3つのスキルを解説します。認識論的作業、経験的作業、分析的な作業の3つのスキルです。
第七章は、不平等についてです。マルクスからブルデューの階級問題、資源へのアクセス可能性への視点、機機会構造の七つの主要原因、不平等の主観的な側面(内面)、不平等に至る過程(無力化、他者性、搾取、暴力)を見ていきます。
第八章は、社会学の未来のあり方です。社会学の規範論的な学問のあり方を問います。どういうふうに社会をより良くしていくのか、そして、その価値観と価値中立性の兼ね合いを問います。
社会学者のあり方から、社会学の成果を利用する人まで述べて、未来のユートピアへの間断ないプロセスを求めていきます。
【感想】
ケン・プラマーは、セクシュアリティやクイア研究で有名らしく、日本では生活史・ライフ・ヒストリーの研究で知られているようです。
入門書で著者の専門に偏る場合がありますが、この本は、特に、そういうことはなく満遍なく広く社会学を取り扱っています。
物足りないところもありますが、全体が分かりにくい社会学の概観を知るには、よい本だと思います。
【参考】
入門書としては、コリンズ「脱常識の社会学」、バウマン「社会学の考え方」、バーガー「社会学への招待」とかが文庫にありますね。ハードカバーならば、ギデンズ「社会学」も定番です。
あまり古典の純粋な理論書から社会学にアプローチするのはオススメしません。面白くないでしょうから。
「孤独な群衆」「脱学校の社会学」や「自殺論」とか「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」など、適当に興味の持てそうな実際の研究の本を開いた方がいいです。
もっと下世話に、「日本の童貞 」とか「スカートの下の劇場」とかでもいいですけど。
「タテ社会の人間関係」や「空気の研究」など現代の日本人らしい社会学系の本も面白いと思います。