国債急落で私たちの年収はどこまで下がるか?収入減と増税・インフレで生活水準はさらに悪化。年金は大幅削減、支給年齢はますます引き延ばされる。ヘッジファンドの攻撃で日本が救われる理由とは?税制を変えるだけで、日本は再び豊かになれる。御用学者や評論家が教えてくれない“日本経済の真実”。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
中原/圭介
金融・経営のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」のエコノミスト兼ファイナンシャルプランナーとして活動。金融機関や企業への助言・提案や富裕層の資産運用コンサルティングを行う傍ら、執筆・セミナーなどで金融教育・投資家教育の普及に努めている。経済だけでなく、歴史や心理学など、幅広い視点から世界経済の動向を分析し、経済予測の正確さには定評がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
About this Title
■はじめに
最近、書店に行くと、「日本は財政破綻する」といった内容の本が並んでいます。連日
のように欧州の財政危機が報じられ、その内容は深刻さを増すばかりです。国民の間にも
危機感が広まっているのかもしれません。
しかし私は、日本が財政破綻することはないと考えています。
その理由は本文を読んでいただくとして、日本がたとえ財政破綻を回避できたとしても、
国民の生活は確実に苦しくなります。
この本を手に取った人のなかには、目次をパラパラと眺めて「国債の暴落なんて、自分
にはあんまり関係なさそうだな」と思った人もいるでしょう。
ところが、それは大きな間違いです。
国債の暴落も財政の危機も、私たちの生活に大きな影響を与えるということを、本書を
読んで実感してもらいたいと思っています。
そして、その苦しみの度合いは、まさに今後数年の政治や行政の動向に握られています。
私たちは、もっと政治や行政に関心を持たなくてはいけません。もし自分の給与が下がる
としたら、その要因には政治家や官僚が考える政策や、彼らがつくりだす制度が深く関わっ
ている可能性が高いからです。
政治や行政の動きは、私たちの暮らしに直結しています。それらの影響によって、国民
の生活は豊かにもなるし、貧しくもなるものです。
行政は誤った政策を行い、そのツケを国民にまわすことがよくあります。それは、行政
と民間では、発想のプロセスが正反対なので仕方ありません。
民間では、先に分析と考察があり、そこから結論を導き出します。しかし、行政では多
くの場合、先に結論があり、それにもっともらしい理由をつけるために、説得力のある資
料やデータを集めるという作業が延々と続けられます。
だから、政策が誤るのは当たり前なのです。
なぜこんなことが許されているかというと、政治に携わる人材の質が民間と比べて低す
ぎるばかりか、政治家の国民に対する責任感が著しく欠如しているからです。とくにこの
数年は、嘆かわしいほど政治が行政をまったくコントロールできていません。
財政、経済成長、年金制度、税制、少子高齢化、雇用というそれぞれの問題は、表向き
は個別の問題のように思えるかもしれませんが、実はすべての問題が裏では相互に作用し
合い、密接につながっています。
現在の日本は、それぞれの問題を別々の省庁が担当する「縦割り行政」ですが、それで
はこの国が抱えている問題を決して解決することはできません。
本書では、「どうすれば日本の財政危機を回避できるのか」「どうすれば日本の将来を明
るいものにできるのか」という視点から私の考えを語っていますが、日本を変えるために
は、それぞれの問題を切り分けて考えていては限界があります。
「日本全体を豊かにするためにはどうすればよいか」という大きな視点で捉えなければ、
根本的な問題の解決は難しいでしょう。財政、年金制度、税制、少子高齢化などといった
問題を大きな枠組みでひとつの問題として捉え、思い切った改革を実行しなければ、この
国は落ちていくだけです。
思い切った改革を断行するには、やはり強い政治の力が必要です。しかし残念ながら、
今の政治は官僚の言いなりで、まったく本当の意味での政治ができていません。
私は、何の計画性もない、ただの増税には反対です。この国の疲弊したシステムを改め、
国民が豊かになるための増税には賛成ですが、今の政権は何の意味も見出せない理念なき
増税をしようとしています。
「日本が抱えるすべての問題はつながっている」という意識を、国民ひとりひとりに持っ
てもらいたいと考えています。日本が奈落の底に落ちないようにするためには、私たち自
身が少しでも賢くなり、世論に働きかける必要があるからです。
本書が微力ながらもその手助けをできれば、とても嬉しく思います。