20代に考えるべきこと、すべきこと できる人になるための勉強法・仕事術・キャリアデザイン 単行本 – 2009/11/18
國貞 克則
(著)
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本の長さ232ページ
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出版社日本能率協会マネジメントセンター
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発売日2009/11/18
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ISBN-104820717545
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ISBN-13978-4820717546
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
著者について
東北大学機械工学科卒業後、神戸製鋼入社。
海外プラント事業部、人事部などを経て、MBA取得。
2001年独立。著書:『財務3表一体理解法』『財務3表一体分析法』等。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
1961年生まれ。東北大学機械工学科卒業後、神戸製鋼入社。海外プラント事業部、人事部などを経て、1996年米国ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。2001年ボナ・ヴィータコーポレーションを設立。中小企業の経営指導や大手企業の管理職教育が得意分野(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
About this Title
2-1.若いうちは「仕事の意味」なんて考えなくていい
会社に入ってくだらない仕事が続くと「こんな仕事に意味があるんだろうか」と考え始めるようになります。若い皆さんがそんな気持ちになるのはよくわかります。
私も若い頃はそんなことを思うことがよくありました。私は新入社員の頃、エンジニアとして見積書に添付する技術資料を作るのが仕事でした。といっても英文の技術資料を入社間もない私に作れるわけがありません。先輩や上司が作る資料の体裁を整えるのです。見積書を毎回イチから作るのは大変なので、過去の類似資料を切り貼りして作るわけです。私が社会に出た1983年当時はいまほどコンピューターが行き渡っていませんでしたから、いまのようにコンピューター上でコピー&ペーストなどできませんでした。まさに切り貼り。昔の資料をコピーして、それをはさみで切り取って貼り付けていきます。来る日も来る日もそんな仕事をしていると、「こんな仕事に意味があるんだろうか」と考えはじめるわけです。
しかし、いま振り返ってみれば、あの当時あの部署で私にできたのはそれくらいの仕事でしかなかったのです。英語もできない、技術の経験もない私が技術資料を作れるはずがありません。ではどんな仕事があるのか。切り貼り程度しかなかったのです。
「こんな仕事に意味があるのか」などと言う人は、自分が置かれた状況と自分の能力が客観的に見えていない自信過剰な人です。立派な大学を出たからといって会社に入ってすぐに重要な仕事ができるわけがありません。
「こんな仕事に意味があるのか」と言うもうひとつのタイプは、成果が出ておらず現状から逃げ出したいと思っている人でしょう。本当は自分の力が足りなくて成果が出ていないのに、それを仕事のせいにしようとしている人です。
そもそも「こんな仕事に意味がない」と言うのは、人生経験の乏しい人が狭い視野の中で判断しているに過ぎません。私は、エンジニアとして入社したのに途中から人事部に移りました。MBAを取得したのに独立して始めた仕事は竹とんぼ屋でした。そして次に中小企業の社長さんのお手伝いをし、いまは会計の本を書いています。全くでたらめのキャリア、過去の経験が何ひとつ次につながっていないキャリアです。
しかしながら、この歳になって私が書いた会計の本がベストセラーになったのは、学生の頃に私が数学をしこたま勉強し、MBAで会計の基礎を学び、起業した時に自分で財務3表を作ってシミュレーションをし、中小起業の社長さんに会計を教える方法を真剣に考えたという経験があったからです。そして、サラリーマン時代に会社派遣でMBAの資格まで取らせていただけたのは、どんなくだらない仕事でもいつも一生懸命やっていたのを周りの人が見ていてくれたからでしょう。
そういう意味では、過去の脈絡のない経験がいますべて活きてきています。目の前のことを1つ1つしっかりやっておけば、それらの経験が40歳を過ぎてから実を結んでいくのです。何ひとつ「意味のないこと」などありません。すべての経験や仕事に対する態度がいまにつながっています。
何が将来役に立つかなんてことは、少ない経験しかない人が自分の頭だけで考えてみてもわかりません。人生は人間の頭で考えつくせるほど単純なものではありません。「神が私に修業の場を与えてくださった」くらいのおおらかさを持って、仕事の意味など考えずに前に進んでいってもらいたいと思います。
2-2.転職を簡単に考えない
いまは一度就職した後にでも自由に勤める会社を選べるようになりました。本当にいい時代になったと思います。しかし当時に、情報も多くなり本当にいい会社を選びだすのが難しい時代にもなりました。
どの会社も「社会に貢献するのが我々の使命です」だの「お客様のことを一番に考えています」だのと言います。本当は自分の会社の儲けのことしか考えてない会社ですらこんな綺麗ごとを言います。
若い人は純粋ですし、人生経験が少ないですから、どれが本当なのかわかりませんし、すぐだまされます。また、本当にいい会社に入っても、ひどい上司の下で長く働かなければならないこともあります。
ですから、私の子供達が就職する年齢になったら「就職先はあまり神経質になる必要はないよ。ダメと思ったら変わればいいんだから」と言うでしょう。さらに、本人自身の考え方や価値観も歳をとると共に変わっていくでしょうから、別に一生涯ひとつの会社で過ごす必要はないと思います。
コンサルタントとしていろんな会社に顔を出していると、会社によってこうも考え方や雰囲気が違うかと思うことがよくあります。仕事や会社に適応できない場合、それは本人のせいばかりではなく、会社や上司のせいである場合もあるでしょう。会社になじめず苦しんで、自分にばかり矢印を向けているまじめな若い人に会うと、「働くところは別にもあるよ。場を変えてみて人生が変わることもあるよ」と言ってあげたくなることもしばしばあります。
しかしながら、同時に若い皆さんに伝えておきたいことは「簡単に転職など考えないでほしい」ということです。なぜなら仕事は何をしても同じだからです。ある仕事で成果を出せない人が仕事を変えたからといって成果が出ることはまずありません。
また、ひどい上司の下で働くこともあながち悪いことではありません。そんな人の下で余裕を持って働くコツをつかめれば、将来どんな上司がこようとも心配することはありません。さらに、ひどい上司であっても上司をうまく使えるような技を身につければ、皆さんの将来はバラ色です。
「楽しくないから転職する」という人がいますが、仕事などそもそも最初から楽しいものではありません。最初から楽しい仕事なんてすぐに飽きてしまいます。仕事が楽しくなるというのは、目の前のことを一生懸命やって成果が出せるようになり、それが周りの人に認められ賞賛され、さらに大きな責任を任されるようになって初めて楽しくなるものです。
そして、そうなるにはどんな仕事でも3~5年はかかります。私はだいたい3年おきに仕事の種類を変えてきたと言いましたが、新しい仕事に移るといつも戸惑います。そして伸び伸びと仕事ができるようになるにはいつも3年くらいはかかりました。独立してコンサルタントになってからは本当に成果が出るまでには5年かかりました。半年や1年くらいで、仕事が「楽しくない」とか「意味がない」とか言うのは早過ぎます。
目の前の与えられた仕事を本当に成果が出るようになるまで覚悟を決めてやってみてください。そうなるまでにはたぶん3年や5年はかかるでしょう。転職を考えるのは一人前になってからです。転職が成功するのは、素晴らしい成果があげられるようになって、周りの人から本当に惜しまれて辞める場合です。逃げるようにして辞めないでください。
転職を斡旋する会社の人は甘い言葉をかけてきます。「君にはもっと活躍できる場があるよ」「いまの会社は君には向いてないんじゃないか」「いまは転職してキャリアアップを図る時代だよ」など。しかし、結局は人材紹介会社の人は皆さんが転職しないと儲けにならないのです。自分にとって何が大切なのかを自分でよく考えてください。
2-3.1つの道はすべてに通じる
「一村を救いうる方法は全国を救いうる。その原理は同じである」これは二宮尊徳の言葉です。二宮尊徳の像はいまの若い人達はあまり見たことがないかもしれませんが、昔は多くの小学校に、薪をかついで本を読みながら歩いていた像が置いてありました。あれが二宮尊徳です。二宮尊徳は努力家として有名ですが、彼の大きな業績は貧しい村をたくさん救ったことでした。その彼の言葉が「一村を救いうる方法は全国を救いうる。その原理は同じである」なのです。
1つの道はすべてに通じる。全く同感です。コンサルタントとしての私に自信を与えてくれたことは、顧問先の一社を倒産の危機からよみがえらせることに成功したことでした。たった1つでいい。どの会社でもいいから会社の中に入り込んで、地べたにへばりついて、歯を食いしばって、何度うまくいかなくても、成果が出るまで頑張る。そこで得られた経験がすべてに通じていくのです。だから皆さんにも、どんな仕事でもいいから自他共に認める成果が出るまで踏ん張ってほしいと思います。
それも、自分が好きなことで頑張れるのはあたりまえです。私が心底スゴイなと思うのは、希望もしていない部署で好きでもない仕事を頑張れる人です。嫌いなことを続けられる辛抱強さ、意味のない仕事を意味のあるものに変えられる想像力。そういったものがあれば、どんな会社でどんな仕事をしていようといずれ成果が出せるようになります。
そして、成果が出るようになれば自分の周りの景色が一変します。1つ上の高みから自分が歩んできた道を見下ろせるようになります。視界は晴れ渡り、自分が悩んでいたことがいかにちっぽけなことだったのかがわかるようになります。
その、自分の力で何かを乗り越える経験、それこそが皆さんの大きな財産になります。MBAで勉強することなんかとは比べものにならないくらいの貴重な財産に。「1つの道はすべてに通じる」。自分の力で何かを乗り越えてください。
2-4.何をしてもダメなら逃げたっていい
「幸せの青い鳥」なんてどこを探しても見つかりません。「幸せ」は探すものではありません。そんなことは昔からたくさんの人が言ってきました。
既に述べましたが、仕事なんて何でもいいんです。目の前のあたりまえのことに感謝し、目の前の自分の仕事を一生懸命やり、成果を出しお客様や周りの人に認められ、さらに大きな責任を任されて自分が成長していく。それだけで人は幸せになります。
仕事を通して自分のレベルが上がり何か新しいものを創造したり、高いレベルの仕事によって誰かの役に立ったり誰かを幸せにできれば、それ以上の何を望む必要があるでしょうか。だから仕事選びなんかする前に、偶然めぐり合った自分の仕事を大切にし、自分の仕事が好きになるように精進してもらいたいと思います。
しかし、どう頑張ってもそうなれないと思うなら早めに逃げ出したらいいと思います。
この本は仕事を通して幸せになるための考え方や方法論を説明しています。学問的に言えば「内発的動機付け」について説明しようとしています。つまり、仕事自体や仕事を通して幸せになるための方法論です。「内発的動機付け」の反対は「外発的動機付け」です。これは仕事の外にあるもの、例えばアメとかムチを使って仕事をやらせるというものです。しかし、アメとかムチを使って仕事をやらせられたら、なかなか幸せにはなれないでしょう。
「内発的動機付け」理論の大家にエドワード・デシという先生がいます。彼は人が内発的に動機付けされるポイントは「有能感」「自律的」「関係性」だと言っています。つまり、自分が有能だと思えること、自分の思い通りにできていること、周りとの人間関係が良好であること、という3つです。
いくら頑張っても、自分よりはるかに優秀な人がまわりにたくさんいる場合、昇格が遅れ自分で意思決定できるような仕事ができない場合、ひどい上司の下で仕事を続けなければならない場合などは、いくら自分に矢印を向けて頑張ってみてもどうしようもない場合があるでしょう。はたまた、社長が「顧客をうまくだますことが営業成績を上げるコツだ」なんてことを本気で言う会社だってあります。
そんな状況であればその環境から逃げ出すこともひとつの方法です。繰り返しになりますが、何事でも自分を責めて自分を追い込むタイプの人には「別の職場という選択肢もあるんだよ」と言ってあげたくなることがよくあります。社風は会社によって大きく異なりますし、小さい会社であれば社長の考え方によって会社の雰囲気はまるで違います。
私はいままで皆さんに厳しいことばかり言ってきました。それはいつわりのない私の気持ちです。しかし、私自身人生の中で何度も苦しい状況から逃げ出してきました。本当にどうにもならない状況で自分に矢印を向けすぎると病んでしまいます。人間まずは元気が大切です。心身共に健康でさえあればたいがいのことは何とかなります。環境を変えれば元気になることがあることも事実です。
「死ぬ気で頑張れば何事もなんとかなる」というような精神論を振りかざす人がいます。確かにそうかもしれません。しかし、「私は死ぬ気で頑張ってきた」と言うような人は本当に死ぬ気でやったことがない人も多いような気がします。本当に死ぬ気で頑張ってきた人はむしろ淡々と「俺は無茶をし過ぎて体を壊してしまった。あまりバランスを欠くとよくないよ」なんてことを言われるものです。
多くの人は自分の過去を美化しがちです。本気で頑張ってない人に限って「自分は頑張った」と言います。悪人に限ってキレイごとを言います。お金を欲しがる人に限ってお金儲けを批判します。その例がこの本を書いている私自身かもしれません。他人が言う極端な精神論や美談を真に受けてはいけません。
転職するかどうかということはとても難しいことです。各人の個性や状況があまりにも大きく異なりますから他人は何とも言えません。
「ちょっと苦しいくらいで逃げ出したりしてほしくない。辛抱していれば必ずどこかで先は開けてくる」私は基本的にそう思っています。50歳近くになるとわかってきますが、人間の価値を左右するのはどれだけの苦労をしてきたかということです。苦しい局面から逃げずにもがき苦しみ、最終的に何かを掴んだ人には人間力が宿ります。
しかし、いくら努力しても工夫してもどうしても先が見えてこなかったり、高い成果を残せるようになってもなお自分の仕事が好きになれないようなら逃げ出してもいいのではないかと思います。
2-5.負のエネルギーが人を突き動かす
「失敗することはいいことだ」と多くの人が言います。なぜ失敗することはいいことなのでしょう。失敗しないように周到に準備計画することがビジネスパーソンの仕事ではないでしょうか。
私が独立してしばらく経った頃、大学時代の先輩から彼が勤務する大学で学生向けに就職の心構えについての講演を依頼されました。その頃は「俺が日本を変えてやる」くらいな気概を持っていましたから、就職に関する講演だというのに、講演テーマは「元気だそうぜ日本!」でした。
講演はもちろん上から目線。MBAに留学して帰って間もない頃だったこともあり、「日本の学生も企業に就職するのではなく起業するくらいの気概を持て」といった内容だったと思います。
これが全然受けない。話し始めて10分もすると、学生は「もう聞きたくない」といった感じでみんな下を向いてしまいます。これはいかんと思ってギャグを言うのですが全く受けない。そうしているうちに何を言っても全く反応してくれなくなりました。私のほうは生まれて初めてのパニック状態。目の前が真っ白になりました。目の前が真っ白になるといのはカメラのシャッターの絞りがすぼめられるように視野が外側からどんどんと狭くなり、まわりの部分の景色が真っ白になっていくのです。
もう完全にパニック状態ですから、1分ほどしゃべってはまた1分ほど何も言わずに立ちつくす。思いなおしてまた新しい話をするが3分ほどで何も言えなくなってまた長い沈黙が続くという繰り返しです。同席してくれていた先輩が見かねて「國貞君もういいよ。君の気持ちはわかった」と助け舟をだしてくれて、講演は予定した時間の半分も経たないうちに終了しました。
逃げるようにして大学を後にして駅まで行ったのですが新幹線が出た直後。駅のベンチに座りうつむいたまま顔を上げることができなかったのをよく覚えています。
この経験の何が良かったか。私はこの経験で少し謙虚になれたような気がします。その後、その同じ先輩から「産学連携で仕事をしている相手先の会社の経営状態がよくないので手伝ってもらいたい」という話をもらいました。もう私は「何でもします」という気持ちでした。「元気だそうぜ日本!」なんて言っている場合じゃない。その会社の問題が自分の得意分野であろうがなかろうが関係ない。こんどこそ満足のいく成果を出さなければならないと強く思いました。
失敗は「悔しい」「申し訳ない」「負けたくない」というような思いを募らせます。人類は長い狩猟民族の時代を経てきています。人のエネルギーが高まるのは「楽しい」と感じる時より「負けたくない」と感じる時ではないでしょうか。狩猟民族時代に猛獣たちとの戦いに負けてしまえば、それは死を意味します。この「悔しい」とか「負けたくない」とかといった感情は「楽しい」という感情とはレベルの違う強いエネルギーを我々にもたらす根源ではないかと思います。
いま私は年間100本ほどの講演や研修をしています。いまそれができるのは間違いなく、あの大学での目の前が真っ白になった経験があったからだと思います。
最近縁あって、明治維新の際に賊軍との汚名をきせられた会津藩や庄内藩の目から見た歴史書を読みました。歴史は勝者の視点で記録されると言われます。私も明治維新は薩長の若人の活躍しか知りませんでしたが、歴史の表舞台に現れない側にこそ誠に立派な方が多かったことをいまになって知りました。元東京大学総長の山川健次郎氏は会津藩の白虎隊の生き残りですし、元陸軍大将の柴五郎氏は会津藩が敗れて下北半島斗南に移封された過酷な時代を幼少期に経験しています。
彼らを突き動かしていたのは、楽しいことでも好きなことでもないでしょう。エネルギーの源泉は「屈辱」「恨み」「誇り」「責任」といった感情ではないでしょうか。経営学の分野でも、「後に偉大なリーダーになる人は幼少期に屈辱的な経験をしている」という研究成果があります。山川健次郎氏や柴五郎氏のような過酷な経験を持つ人は現代には少ないでしょうが、人間を突き動かす大きなものに「悔しさ」という情念があることはまず間違いないでしょう。
考えてみれば、長州藩もその昔、いまの山口県の狭い領土に押し込められました。その300年の屈辱の蓄積が幕末に爆発したのかもしれません。現代の中東問題も過去の屈辱にその端があるように思えます。歴史は人間の悔しさによって作られたものかもしれません。
2-6.失敗が人を本気にさせる
NHKに『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組があります。プロと言われる人達の仕事ぶりを紹介する番組ですが、プロと言われる人達は過去に必ず大きな失敗をしています。そして、その失敗から大切なものを見つけたり、その失敗が人生の大きな転機になっています。
私は会社を辞めて独立してから1年ほど経った夏の終わりの頃、久しぶりに東京の五反田でサラリーマン時代の仲間と飲み、最終電車に乗り遅れたことがありました。当時は仕事でも全く成果があがらず収入もほとんどない状況でした。その時、財布にお金がなかったわけではありませんが、当時きりつめて生活していた家族のことを考えるとタクシーでは帰れず、五反田駅の近くの小さな川のほとりのベンチで始発電車を待ちました。みじめでした。本当にみじめな気持ちでいっぱいでした。苦労して大学まで出してくれたなれの果てがこの姿かよと、両親に申し訳ない思いと自分に情けない思いでベンチにへたりこんでいました。そして「自分の力で稼げるようになりたい」と生まれて初めて強く思いました。
人間は追い込まれた時にはじめて本気になるのだと思います。人間が本気になれば出るエネルギーのレベルが違います。本気になっている人はうしろ姿を見ただけでわかります。人間はそう簡単には本気になれません。失敗して、追い込まれて、本気になれることはとても大切なことです。人間は本気にならなければ本当に価値あることはできないのではないかと思います。
私は現在、社長の右腕業、研修講師業、執筆業の3つの仕事をやっていると言いましたが、どの仕事も比較的順調にいっており、仕事も人脈もどんどん拡がっています。いま調子よくいっていることの「種」はすべて、独立直後の追い込まれていた時期に生まれたものです。「財務3表一体理解法」という勉強法のキッカケもマネジメント研修のコンテンツもすべてあの追い込まれて四苦八苦していた時代に生まれています。
成功の種はいつも追い込まれて苦しんでいる時期に作られています。それは私の例だけではなく成功しているほとんどの人に言えることでしょう。これが皆さんに失敗することを勧める理由のひとつです。
2-7.挑戦し続ける
このように失敗には大きな意味があります。若い人には失敗を恐れず前に進んでもらいたいと思います。失敗することには大きな意味がありますが、自ら進んで失敗しに行く人はいません。マゾヒストでもないかぎりそんなことをする人はいないでしょう。また、周到な準備もせずに失敗するのは問題外です。それは、そそっかしいか、ものごとを深く考えてないか、怠慢なだけです。
価値ある失敗をするために大切なことは挑戦することです。挑戦とは未知のことに挑むということですから、挑戦すれば思いもよらなかったことに直面します。また、自分のレベルを超えようとすることですから簡単にうまくいくわけがありません。ですから、挑戦するとだいたい失敗するようになっています。
プロスポーツ選手でも、料理人でも、建築家でも、大きな成果を出している人は挑戦し続けています。プロ野球の世界でもサッカーの世界でも素晴らしい選手達は日本で約束された地位を捨ててアメリカやヨーロッパに渡っていきます。料理の世界でもその道を極めている人達は、自分の得意分野の料理とは違う国の料理を積極的に取り入れています。和食の達人がフランス料理を学び、フランス料理の達人が和食の技を取り入れています。素晴らしい人はいつも、よりレベルの高い所、より幅広い世界、より斬新なものへと常に挑戦し続けています。
逆に、挑戦が止まると人は退化していきます。世の中は変化していますから、停滞はただ停滞を意味するのではなく退化を意味します。歳をとると新しいことに挑戦しなくなります。過去の遺産で食いつなごうとします。そうして人は輝きを失っていくのでしょう。
ダーウィンは「この世に生き残るものは、最も力の強いものでもなく、最も頭のいいものでもなく、変化に対応できる生きものだ」と言いました。我々凡人にとって本当に勇気の出る言葉です。恐れることなく挑戦し続けてもらいたいと思います。
2-8.むしろ「やりたくない」道へ行く
第1章で、好きなことをやろうとする必要はないと言いましたが、50歳の声を聞くこの歳になると、むしろ「嫌いなことをやらないと人間がダメになる」とか「苦しいことをやらなくなったら人間は終わり」とかと思うようになりました。
中小企業のコンサルタントをしてきて、私の人生にとっての最大の収穫のひとつは、「成功の種は苦しい時に育まれ、失敗の芽は調子のいい時に生まれる」というこの世の法則を身をもって理解できたことです。
私は現在、社長の右腕業、研修講師業、執筆業の3つの仕事をやっていると言いましたが、この中で一番楽しいのは執筆業です。本を書いている時ほど楽しいことはありません。しかし、だからといって自分の仕事を執筆業だけにしてしまうと執筆の仕事はできなくなると思っています。なぜなら、私の本のコンテンツはほとんどが中小企業のお手伝いという現場での試行錯誤から生まれてきているからです。
一方、私の3つの仕事の中で一番自分に合ってないなと思っているのは研修講師業です。いままでに何度も辞めようと思いました。しかし、最近では研修講師業というのは天が私に与えてくれた修業の場なのではないかと思うようになりました。
以前は、研修講師は毎回同じことを繰り返す創意工夫の少ない仕事だと思ったり、話を聞いてくれない人にイライラしたりしていました。しかし、本当に立派な先生は児童・生徒・学生・受講生に対して、自分の講義の内容を効果的に伝える方法を工夫し続けています。本当に素晴らしい先生の話は面白いし、一瞬で聴衆を引き付けます。私にはそんな能力もなければ努力もしていないのに愚痴ばかり言っていたわけです。
やりたくないというのは自分の弱点を見せつけられるからでしょう。つまり、「やりたくない」と思う分野にこそ開発の余地があるということです。やりたくないからこそ発見があり工夫や創造が生まれるのだと思います。
「私の仕事は教育ではなく研究だ」といって学生の指導をないがしろにしているような大学教授は、研究の分野でも大きな成果を上げていない人が多い気がします。逆に、「自分は社長には向いてない」という経営者に限って素晴らしいマネジメントをしているものです。世の中は面白いですね。
2-9.自分の頭で考える習慣をつける
古典と言われる書物や人類が語りついできた言葉には真理が多いように思います。しかし、私たちが常識だと思っている多くのことは真理ではありません。なのに、多くの人は常識を真理のように思っています。
戦略論の勉強をすると「SWOT分析」という言葉がでてきます。自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)、市場の機会(Opportunity)と驚異(Threat)を分析して戦略を作り出していくというものです。物事を分析し論理的に考えるということは極めて大切です。しかし、私はSWOT分析だけで戦略は作れないと思っています。私は、SWOT分析で素晴らしい戦略を生み出したという話を聞いたことがありません。せいぜいあるのは、既に生み出された戦略をSWOTで後付けの分析をしたものぐらいでしょう。
なのに、だれも彼もが戦略策定にSWOT分析を使おうとします。それはどうしてでしょうか。皆がそうしている。つまり、SWOT分析をすることが戦略策定の常識になっているというのがひとつの理由ではないでしょうか。私は、意外と多くの人が自分の頭で考えていなかったり、自らの視点で世の中を批判的に見ていなかったりするのではないかと思っています。
就職指導の世界ではいつの頃から、「自己分析」と「業界研究」が就職先探しの基本スタイルになっています。自分を分析し業界を研究して自分にピッタリあった就職先を探そうというものです。
考え方は戦略論のSWOT分析と全く同じです。ビジネスの世界でSWOT分析が機能していない以上に、就職先決定にはこの「自己分析」と「業界研究」は機能しないでしょう。なぜなら、「自分とは何か」などということは一生かかって探っていく類の難解な問いであり、20歳そこそこの人が1~2ヵ月考えたからといってもわかるはずがないからです。自分の適性がそのまま自分が選ぶ仕事にフィットするのかどうかもよくわかりません。
「業界研究」はもっと難しい問題です。いくら書物で研究し、いくら人の話を聞こうが、仕事の本質は実際にその仕事を何年もやってみないとわからないからです。
就職指導の現場を見ると、机の前で「自分とは何か」と頭を抱えて考え込んで全く固まっているような状態の学生に出会うことがあります。そんな姿を見るにつけ、かわいそうでなりません。
大学も、そして就職指導を専門とする会社も、なんでこんな不毛なことをやらせているのだろうかと思ってしまいます。それをやらせている大人自身、「自己分析」と「業界研究」を徹底的にやって就職先を決めてきたでしょうか。なんとなく感じている自分の性格や適性、なんとなく思い描いている業界や会社のイメージ、はたまた偶然やご縁や誤解や思い込み、さらには人に言えない小ざかしい損得計算で就職先を選んできたのではないでしょうか。
就職活動の方法に正しい方法論があるわけではありません。人によっては「自己分析」と「業界研究」が功を奏する人もいるでしょう。分析と論理思考を全面的に非難するつもりはありません。しかし、違和感を覚える人は自分の頭で考えてもらいたいと思います。どのように就職活動をすればよいのかというところから自分で考えてほしいのです。直感で決めてもいいですし、ご縁で決めてもいい、お父さんがやっていた仕事と同じ仕事を選ぶことでもいいんです。どんな方法でもいい、どんな決断の仕方でもいい、自分で考えてほしいと思います。
この「自分で考える」ということが、これから皆さんが長い人生を生きていく上で最も大切なことだと私は思っています。
上司の言うことを素直に聞いて言われるままにやるのはいいのですが、そんな人は将来伸びていきません。素直はいいことですが、常に自分で考えることが大切です。営業の現場でも技術の現場でも、自分が直面している現場のことを一番よくわかっているのはあなた自身です。あなた自身が考えずにだれが正しい答を出せるのでしょう。自分で考えているかどうかで30歳からの人生が決まると思います。
仕事だけではなくこれからの個人の生活においても自分で考えることは大切です。「大人になったら生命保険に入るのが常識です」「賃貸で生活するよりマンションを買ったほうが得ですよ」などと、いろんな人が皆さんに声をかけてくるでしょう。何が自分にとって大切で何が自分にとって正しいのか。それは自分で考えて自分で決めていかなければなりません。いつも自分の頭で考える習慣を心掛けてください。
登録情報
- 出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2009/11/18)
- 発売日 : 2009/11/18
- 単行本 : 232ページ
- ISBN-10 : 4820717545
- ISBN-13 : 978-4820717546
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上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
『キャリアデザインなんかで悩んでないで、とりあえず始めてみよう』。これが著者の伝えたいことです。
なぜか。『社会には競争があり、仕事には成果が伴い、決して自分が描いたようには進んでいかない。だからこそ、そのために勉強しよう、成果を考えて仕事をしよう、効率も大事だけど、地道な努力を重ね、アウトプットを出していけば、おのずと自分が本当に進みたい方向が見えてくるから。信頼を大事に、感謝の気持ちを忘れず、仕事に一生懸命に取り組めば、結果的に自分らしいキャリア(履歴)が残るから』。
20代ではインプットが少なく、その時点でキャリアデザインを考えても、本当の答えなんて出るはずもありません。むしろ目の前の仕事に全力で取り組めば、仕事の面白さは後で分かってくるもの。「ああ、そうだよな」と思える部分も多く、共感できる内容でした。
「20代のうちは選り好みするよりも目の前のことに全力で取り組む」
「目標を立てて継続的に努力する」
目新しいことはないが、素直な気持ちで読めば現在の生活や日々を見直すきっかけになるでしょう。
ただひとつ気になったのは”時間力を強化する'2”のくだり。
唐突に著者が使い勝手が極めて高いという手帳の固有名詞が出てくる。
その手帳というのが、本書の出版元が出しているもの。
宣伝しているつもりはないとご丁寧に書かれているが、
どうしてもとってつけた感があり、全体の記述への信頼性を失わせていて勿体ない。
まさに良書です。著者の豊富濃密な又幸運苦悩苦難順風様々なる人生から算出産出された珠玉の書です。若人のみならず、青雲の志士も苦難の士も、はたまた吾輩のような老境の端を未だ彷徨徘徊する者にも光明をもたらすものと信じます。
とはいえ、それは深淵典雅なる著者の広大なる無限ワールドの入口に過ぎず。これを機に更なる精進を重ねて、人々の生き方への灯台となり、悩む人々が進むべき道程への灯となる教養書を多数発刊されんことに大いに期待いたします。意欲あるも未だ浅薄未熟の域を超えず、万人が本書によって我が身を省みる良いきっかけとなることでしょう。読み進めば已むを得ず、必ずや何らかの解、示唆、刺激、反省、ほくそ笑み、笑い、自己への蔑み、自らの真の雄叫び、悩みの本質、惻隠の情、大局観と現実観、小局観と宇宙観・・・・何らかの何かが掌に感じられ、またわずかばかり握りしめる密かなる喜びに浸ることもできましょう。本書にもあるように、ひたすら浸る、三昧の境地。過ぎる時に気付かない没頭集中の時が最も幸せでありましょう。幸田露伴の努力論に「努力を忘れて努力する」訓えがあります。
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