野崎まどといえば超展開である。
今作は前半のターニングポイントに一つ目の超展開が仕掛けられており、
その圧倒的な描写には大いに唸らされた。さすがである。
だが、終盤の怒涛のどんでん返しは正直やりすぎだ。
説明不足の状況でそれを繰り返すと、読者は展開についていけなくなる。
最後のどんでん返しは一つあれば十分ではなかったか。
また、シリアスな雰囲気だったところに急にラノベのラブコメのようなどうでもいい会話が混じったりと、
ギャップのある表現が目立つのも不満だった。
ストーリーの都合上、超常的な能力を出さざるを得ないから、
そういう軽いノリを入れてバランスを取っているのかもしれない。
ただ、そこで気になるのは本作のテーマとの兼ね合いである。
主人公たちが作中で最後に生み出したものは、(ネタバレを避けた表現をすると)
我々の想像を超えた別次元のものである。
主人公たちは、それをあくまで現実的な方法で生み出した(莫大な費用がかかっているにせよ)。
だが一方で、作中には「人の心が読める人間」や、さらには「不死の人間」などという
超自然的な存在が登場する。
これでは主人公たちが生み出した存在の凄みが薄れてしまわないだろうか?
それの偉大さ、恐ろしさをせっかく丁寧に表現できているのに、
その他の超自然的な存在が邪魔をしているように思えてならなかった。
この作者は一時的にトップスピードに持っていく力は凄まじいものがあるが、
全体的にうまくまとめるのは苦手なのだろうか。
面白く読めたが、残念な点も多い、不思議な読書であった。
2 (メディアワークス文庫) Kindle版
-
言語日本語
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出版社KADOKAWA
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発売日2013/12/26
-
ファイルサイズ1842 KB
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商品の説明
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
野崎/まど
東京都墨田区生まれ。2009年『「映」アムリタ』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
東京都墨田区生まれ。2009年『「映」アムリタ』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
数多一人は超有名劇団『パンドラ』の舞台に立つことを夢見る青年。ついに入団試験を乗り越え、劇団の一員となった彼だったが、その矢先に『パンドラ』は、ある人物の出現により解散してしまう。彼女は静かに言う。「映画に出ませんか?」と。役者として抜擢された数多は、彼女とたった二人で映画を創るための日々をスタートするが―。果たして彼女の思惑とは。そして彼女が撮ろうとする映画とは一体…?全ての謎を秘めたまま、クラッパーボードの音が鳴る。
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00HEB9126
- 出版社 : KADOKAWA (2013/12/26)
- 発売日 : 2013/12/26
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1842 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 425ページ
-
Amazon 売れ筋ランキング:
- 87,543位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 259位メディアワークス文庫
- - 10,445位日本の小説・文芸
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
5つ星のうち4.5
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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ベスト500レビュアー
Amazonで購入
演劇青年・数多一人が人気劇団「パンドラ」の入団試験に応募するところから物語は始まる。
冒頭からテンションが高く惹きつけられるが、ストーリーはあらぬ方向に進み、目くるめく野﨑ワールドが展開する。
過去五作の主要人物が総出演する。
「刃牙」の最大トーナメントか仮面ライダー大戦か。
これをやりたいために今までの創作活動があったのか?と思われるほどだ。
賑やかで楽しいし、お馴染みのキャラたちに再会できて嬉しい。
特に伊藤先生の進化についての講義が面白かった。終盤の対決も盛り上がる。
何度もどんでん返しを食らう。途中まではいいが、最後の奴だけは余分ではないか。
これだけ読ませておいて、それはないだろ!絶賛する人もいれば、怒って最低点をつける人もいるだろう。
大きな不満点があるが、一気に最後まで引っ張っていく力量を評価して、★4個とします。
冒頭からテンションが高く惹きつけられるが、ストーリーはあらぬ方向に進み、目くるめく野﨑ワールドが展開する。
過去五作の主要人物が総出演する。
「刃牙」の最大トーナメントか仮面ライダー大戦か。
これをやりたいために今までの創作活動があったのか?と思われるほどだ。
賑やかで楽しいし、お馴染みのキャラたちに再会できて嬉しい。
特に伊藤先生の進化についての講義が面白かった。終盤の対決も盛り上がる。
何度もどんでん返しを食らう。途中まではいいが、最後の奴だけは余分ではないか。
これだけ読ませておいて、それはないだろ!絶賛する人もいれば、怒って最低点をつける人もいるだろう。
大きな不満点があるが、一気に最後まで引っ張っていく力量を評価して、★4個とします。
2016年8月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
他のレビュアーの方々が、実に熱く語られており、自分が改めて付け足す要素はありませんが、「アムリタ」から本作までの全ては、文学という表現でしか出来ない、ある意味、究極の表現だと感じました。もっともっと有名になって良い作品だと思います。これから読まれる方は、是非「アムリタ」から読まれる事をオススメします。
ベスト500レビュアーVINEメンバー
Amazonで購入
他のレビューに重ねて書かれているが、読む順序が大切である。大切なので何度でも書いておこう。(私も先行レビュアーに感謝)
この本「2」を読む前に最初に「[映]アムリタ」を、その後「舞面真面とお面の女」「死なない生徒殺人事件」「小説家の作り方」を読み、「パーフェクトフレンド」を楽しんでおくことは必須である。
そこで今巻を読むと、過去作の登場人物がわんさか出てきて個性豊かに振舞う中でダイレクトに「[映]アムリタ」に繋がり、映画創作に始まり映画創作で閉じる全6冊の円環構造が完成する。それは自らの尾を飲むウロボロスではなく、円形になった蛇が自らより進化した子蛇を口から生み出す形だ。この子蛇も円を重ねるように成長し、同じように孫蛇を吐き出すだろう。ぐるぐる螺旋を描きながら進化し続ける創作者たちの物語と言えよう。
しかし残念ながら次の輪は著述されないだろう。何故なら次の輪は我ら現代の人間の理解を超える高度な創作をめぐる話になるからで、いかに野崎まどとはいえ、今は書けない。
そんな創作の限界を探求した超天才映画監督 最原最早の物語である。
純粋なミステリーではないものの、説明抜きの直感的人間の行動を論理的に解明していこうと試みるので、読後感は推理小説のそれに似ている。いつもの重層的どんでん返しもあり、著者は読者の期待を裏切らないし、これまでの巻と諸々が完璧に整合しているし、見事である。ただ、そのために理が勝ちすぎていて、感動より納得が先に来てしまうのがちょっと残念。最原最早が持つ人の枠を越えた魅力、例えば艶やかさや可愛らしさをもうちょっと確認できると、最後の衝撃がもっと大きくなっただろう。この衝撃度だけでいえば「[映]アムリタ」の方が上だと思う。(まあ、最初に読んだからかもしれないが)
ところで、前5作には全て最後にあれはどうなったのかなと悩む「解明されないもの」が説明するまでも無いとして残されていたが、今巻ではそれらのオープンマターを相当拾ってくれているのがすごい。ひょっとしたら第1作の時から、遅くとも「パーフェクトフレンド」を書く前に、「2」の構想は出来上がっていたに違いない。逆に言えば、今巻を読まないと実は前5巻を読み切ったことにならないということである。だから読むしかないのですよ、あなた。但し、順序を守って最後にね。
この本「2」を読む前に最初に「[映]アムリタ」を、その後「舞面真面とお面の女」「死なない生徒殺人事件」「小説家の作り方」を読み、「パーフェクトフレンド」を楽しんでおくことは必須である。
そこで今巻を読むと、過去作の登場人物がわんさか出てきて個性豊かに振舞う中でダイレクトに「[映]アムリタ」に繋がり、映画創作に始まり映画創作で閉じる全6冊の円環構造が完成する。それは自らの尾を飲むウロボロスではなく、円形になった蛇が自らより進化した子蛇を口から生み出す形だ。この子蛇も円を重ねるように成長し、同じように孫蛇を吐き出すだろう。ぐるぐる螺旋を描きながら進化し続ける創作者たちの物語と言えよう。
しかし残念ながら次の輪は著述されないだろう。何故なら次の輪は我ら現代の人間の理解を超える高度な創作をめぐる話になるからで、いかに野崎まどとはいえ、今は書けない。
そんな創作の限界を探求した超天才映画監督 最原最早の物語である。
純粋なミステリーではないものの、説明抜きの直感的人間の行動を論理的に解明していこうと試みるので、読後感は推理小説のそれに似ている。いつもの重層的どんでん返しもあり、著者は読者の期待を裏切らないし、これまでの巻と諸々が完璧に整合しているし、見事である。ただ、そのために理が勝ちすぎていて、感動より納得が先に来てしまうのがちょっと残念。最原最早が持つ人の枠を越えた魅力、例えば艶やかさや可愛らしさをもうちょっと確認できると、最後の衝撃がもっと大きくなっただろう。この衝撃度だけでいえば「[映]アムリタ」の方が上だと思う。(まあ、最初に読んだからかもしれないが)
ところで、前5作には全て最後にあれはどうなったのかなと悩む「解明されないもの」が説明するまでも無いとして残されていたが、今巻ではそれらのオープンマターを相当拾ってくれているのがすごい。ひょっとしたら第1作の時から、遅くとも「パーフェクトフレンド」を書く前に、「2」の構想は出来上がっていたに違いない。逆に言えば、今巻を読まないと実は前5巻を読み切ったことにならないということである。だから読むしかないのですよ、あなた。但し、順序を守って最後にね。
2014年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
毎回、天才であったり不死であったり何かしらの超越したものと周囲の関わり・コミュニケーションを中心に物語が紡がれますが、この作品では最原最早という始まりにしてもっとも超越していた創作の天才の物語です。最終的に一人の天才のために周りのすべての余計な出来事が徹底的にそぎ落とされて、その天才だけがみえる理想形のようなものに近づいていく描写は圧巻でした。創作とは何か、人間とは何か、愛とは何か、感動とは何か、哲学的でもあり根源的でもある疑問にある意味納得できる一定の答えを提示している作品のようにも思います。
創作活動はもちろん、日常の色々なことを試行錯誤しながらだんだんうまくなっていくことはよくあります。しかし、作中にあるように完全な答え、絶対に正しい答えを目の前に提示されて自分には決してそれができないと気付いた時、人間はその事実に耐えられるものではないのだなと感じます。ではこの場合は創作活動についてですが、その答えを知っている天才たちはいったい何を目指すのかについての後半部分は驚きと感動でいっぱいです。どうやったらこのような超常現象に近い人たちの物語を期待以上でかつ破綻なくまとめることができるのかという点でも感心しました。利己的な遺伝子、ミーム等を読んでこの物語に至ることも非常に興味深いです。
他の方のレビューにもありますが、メディアワークス文庫で「アムリタ」から始まる一連の作品の集大成であり終着点にある作品です。今までの作品を読んでからこの作品に臨んだ方が楽しみが多いと思います。この作品によって今までの作品の意味・捉え方もいくつか変わってきます。全作品群を一ヶ月で読んだことは少々もったいなかったかなと思いますが、非常に楽しむことができました。
創作活動はもちろん、日常の色々なことを試行錯誤しながらだんだんうまくなっていくことはよくあります。しかし、作中にあるように完全な答え、絶対に正しい答えを目の前に提示されて自分には決してそれができないと気付いた時、人間はその事実に耐えられるものではないのだなと感じます。ではこの場合は創作活動についてですが、その答えを知っている天才たちはいったい何を目指すのかについての後半部分は驚きと感動でいっぱいです。どうやったらこのような超常現象に近い人たちの物語を期待以上でかつ破綻なくまとめることができるのかという点でも感心しました。利己的な遺伝子、ミーム等を読んでこの物語に至ることも非常に興味深いです。
他の方のレビューにもありますが、メディアワークス文庫で「アムリタ」から始まる一連の作品の集大成であり終着点にある作品です。今までの作品を読んでからこの作品に臨んだ方が楽しみが多いと思います。この作品によって今までの作品の意味・捉え方もいくつか変わってきます。全作品群を一ヶ月で読んだことは少々もったいなかったかなと思いますが、非常に楽しむことができました。
2014年3月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
レビューを参考にシリーズを順番に読み終わりました。
読み終わってみて、結末までたどり着いて。
少し残念です。
天才が創作の果てに成功する成果物が天才を超えているように見えないからです。
作者は天才を想像することはできても、天才が創造する完成物(天才を超える超存在)がどういうものになるかまでは、想像することはできなかったのでしょうね。(概念としては言及していますが表現出来てはいないと思います。)
もちろんそんなことは誰にも出来ないとおもいますが。
そこに目を瞑れば、そこにいたる物語はとても面白かったです。
読み終わってみて、結末までたどり着いて。
少し残念です。
天才が創作の果てに成功する成果物が天才を超えているように見えないからです。
作者は天才を想像することはできても、天才が創造する完成物(天才を超える超存在)がどういうものになるかまでは、想像することはできなかったのでしょうね。(概念としては言及していますが表現出来てはいないと思います。)
もちろんそんなことは誰にも出来ないとおもいますが。
そこに目を瞑れば、そこにいたる物語はとても面白かったです。