「1Q84」は、互いに絶対的な存在である男女の愛とそれを阻む性欲を描いた「スプートニクの恋人」、同様に絶対的な存在との愛とそれを引き裂くある種の人間が持つ歪んだ欲動を描いた「ねじまき鳥クロニクル」の流れを汲む、絶対的な存在の男女の愛の物語。
前2作との大きな違いは、その絶対的な存在が遥か昔に一瞬の時と手を重ねただけで、以来、接触がないことと男女に同等の重みが置かれている点。村上さんは本書に多くのこれまでの自作と尊敬する作家の生き様とその作品の重要なエッセンスを詰めに詰め込みました。恐らく、かつて無い程の総力戦で書き上げた作品だと思います。
ですが、結果として本2作は世界レベルの文学作品足りえず、自作も越えていません。栞紐の色を見れば分りますが、Book1(黄緑)、Book2(橙)を経た次作のBook3(青)が、世界的に価値観の変化を必要とされる2009年という時代を象徴する文学(芸術)であることを願います。
〜以下、過去各品との関連、読後にお読み下さい〜
1.「スプートニクの恋人」の「すみれ」は作家志望で比喩的に自分の血を流した後、漸く「僕」の愛に辿り尽いたかに見えますが、本書主人公「天吾」のように愛が届かなかった「僕」はその性欲を不倫で処理してきた
2.もう一方の主人公「青豆」の唯一無二の友人の自殺と「ノルウェイの森」の相似
3.本書の宗教団体やDVに苦しむ妻達と「ねじまき鳥クロニクル」の皮はぎボリスや妹(長女)を自殺に追いやり下の妹(主人公の妻)を性的・精神的な破綻に追いやる兄ワタヤノボルの狂気(歪んだ欲動・性欲)の相関
4.上述のワタヤノボルの使い走りの牛河が本書でも悪を代表する宗教組織の使い走りとして登場
5.村上さんが尊敬するドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」、最も深く関わった作家レイモンド・カーヴァーが行っていた小説の朗読(天吾のふかえりへの朗読)、カーヴァーが最も尊敬していた作家チェーホフの引用(多用)
6.地下鉄サリン事件のインタビュー集「アンダーグラウンド」からの手を握ることの深さの引用
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