英国人ジョージ・オーウェルが1949年に恐らくソ連を念頭に全体主義国家の恐怖を書いた本。ビッグ・ブラザーの支配するオセアニア国で主人公は日々歴史の書き換え作業に従事する。これは何千年間もC国がC国と称する前から行って来たことであり、お隣のK国では全体主義国家でないのに戦後行われ自国の真の歴史がわからなくなってきていることを想起させる。
オセアニア国では最下層の国民以外はテレスクリーンにより日常の行動、言動、表情が監視されているがある日主人公は思想警察に逮捕され、何十日か何百日にわたって思想改造のための拷問を受け続ける。これは1949年に作者が全体主義国家の恐怖を知らしめるために書いた想像の世界だったはずだが、現代のC国U族自治区で日常的に民族浄化(ジェノサイド)のための収容所で行われている行為を先取りしている。「1984年」の中では、収容所内でレイプが行われる記述はなかったと思うが、2021年2月にはC国U族自治区の収容所で繰り返しレイプが行われていると英国BBCが伝えているので、事実は小説よりもさらに酷い状態になっている。そしてHK地域でC国により逮捕されたA嬢がそのような目に合わないよう日本を含む国際社会は監視を強めなければいけない。
A国の2020年大統領選挙では、組織的かつ大規模な不正が行われた結果JB氏が大統領となり、その就任挨拶では、「民主主義はもろくて壊れやすい、我々は民主主義を守っていく」というようなことを言っていたが、この話し方は「1984年」の最後に付録 ニュースピークの諸原理として詳述されているニュースピーク(新語法)そのものと感じた。ニュースピークとは、語彙を極端に少なくするなどにより思考方法を制限し、自由な思想を抹殺し、語彙の少なさにより考えることすらできなくさせる語法だ。その新語法のなかの婉曲表現法では、言ったことが正反対の意味を表わすというのがある。JB陣営が行ったことは、民主主義を守るために必要な公正な選挙を行わず、不正選挙により政権を奪取したクーデーターとも言うべきものであるのに、我々は民主主義を守っていく、と行動と正反対のことを言っている。これはまさにニュースピークそのものであろう。ジョージ・オーウェルは社会主義国家ソ連を念頭において「1984年」を書いたはずなのに、いまや自由・民主主義国家であったはずのA国では、主流メディアは真実を報道せず、SNSは反JB陣営の発言には検閲を加えアカウント凍結に追い込むなど全体主義国家への道をひた走っている。作者も予期しなかったことではないかと思ったが、オセアニア国の設定は現在のA大陸も含むことになっているので、実は作者はそこまで予測していたのだろうか。作者の慧眼に恐れ入るとともにA国の今後の行方を憂うものである。
この商品をお持ちですか?
マーケットプレイスに出品する

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8) 文庫 – 1972/2/1
- Kindle版 (電子書籍)
¥0 Kindle Unlimited 会員は、このタイトルを追加料金なし(¥0)で読み放題 ¥770 Kindle 価格 獲得ポイント: 8pt - 文庫
¥200 より
国内送料無料、Amazonプライム対象商品。amazon.co.jp 配送センターより丁寧に梱包し迅速に配送致します。 Amazonカスタマーサービスセンターが年中無休でお問い合わせ対応を致しますので、安心してお買い求めください。 初期不良品は返品可能です。 1999年5月41刷。 中古品のため商品は多少のキズ・使用感がございます。記載ない限り帯・特典などは付属致しません。万が一、品質不備があった場合は返金対応致します。(管理ラベルは跡が残らず剥がせる物を使用しています。
- 本の長さ422ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1972/2/1
- ISBN-104150400083
- ISBN-13978-4150400088
この商品を見た後に買っているのは?
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1972/2/1)
- 発売日 : 1972/2/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 422ページ
- ISBN-10 : 4150400083
- ISBN-13 : 978-4150400088
- Amazon 売れ筋ランキング: - 128,143位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
この商品を買った人はこんな商品も買っています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.4
星5つ中の4.4
119 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年2月9日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
9人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2018年10月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
全体主義で独裁国家の狂った世界で生きる主人公の話だ。この独裁国家で日夜行われている歴史修正、公文書偽造、文化、言語、思想の破壊、奴隷産業etcが、今の日本でより洗練あるいは巧妙かつ悪質化した形で行われていることにただならぬ戦慄を覚える。さすがに日本だけが(悪い意味で)特別だとは思えない。このようなことは大なり小なりあらゆる国で行われているのだろう。希望も救いもまったくない純然たる絶望の話なのだが、本を閉じて現実に戻ってきても、一体どちらがファンタジーなのか、どちらに生きる方がマシなのか、わからなくなる。
2006年3月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本ででてくるオセアニア国は、すべてが管理されている社会だった。
頂点に君臨するビッグ・ブラザー。人々はビッグ・ブラザーを崇め、言語は統制され、性生活も管理されていた。
そしてスクリーンに映し出された存在しない仮想の敵を憎むことを強要させられていた。
その監視された世界で主人公ウィンストンは、ジューリアに出会う。
「われわれは精神を支配しているからこそ物質も支配しているのだ。 現実というのは頭蓋骨の内部にしか存在しないのだよ。
君も段々に分って来るさ、ウィンストン。
われわれに出来ないことは何一つない。
姿を隠すこと、空中を浮遊すること--何だって出来る。
その気になりさえすれば、私はこの床上からシャボン玉のように浮揚できる。
しかし私はそれをやりたくない。党がそれを望んでいないから。
自然の諸法則に関する十九世紀的な考え方は放棄しなくちゃいけない。
われわれが自然の諸法則を造るのだ」(346頁)
管理されている社会、怖いですよ。
頂点に君臨するビッグ・ブラザー。人々はビッグ・ブラザーを崇め、言語は統制され、性生活も管理されていた。
そしてスクリーンに映し出された存在しない仮想の敵を憎むことを強要させられていた。
その監視された世界で主人公ウィンストンは、ジューリアに出会う。
「われわれは精神を支配しているからこそ物質も支配しているのだ。 現実というのは頭蓋骨の内部にしか存在しないのだよ。
君も段々に分って来るさ、ウィンストン。
われわれに出来ないことは何一つない。
姿を隠すこと、空中を浮遊すること--何だって出来る。
その気になりさえすれば、私はこの床上からシャボン玉のように浮揚できる。
しかし私はそれをやりたくない。党がそれを望んでいないから。
自然の諸法則に関する十九世紀的な考え方は放棄しなくちゃいけない。
われわれが自然の諸法則を造るのだ」(346頁)
管理されている社会、怖いですよ。
2014年4月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
以前から気になっていたが、なかなか読み始める切っ掛けに
恵まれなかった小説。先日ある大学のオープンキャンパス法学講座で、
最近の世相を鑑みこの本が話題になり、手軽なkindole版も
出ている事からやっと読んでみる事に。
右でも左でも極端に走って、ぐるっと180度向こう側にまわれば
行きつく先は同じような全体主義の世の中。
気が弱い自分にはとても生きて行けそうにない世界。
この本は、そんな世界は絶対にアカン! と言っている。
民主主義は非効率などと仰る方もいる。
でも人間は弱い。志のある者でも一度強大な権力を握ると保身や
自己欲求の抑えが効かなくなるものだ。
そんな弱い人間同士、足の引っ張り合いや、お互いに牽制をさせて、
極端な世の中に走らせない制度が民主主義だと思う。
最初の理想とはちょっと違うかもしれないが、人間の不完全さを
考えれば、多少遠回りでも民主主義は今の所ベストな制度なのだ。
くれぐれも、思考停止させるようなワンフレーズの甘言、
勇ましくも極端なお言葉には耳を傾けまい。
恵まれなかった小説。先日ある大学のオープンキャンパス法学講座で、
最近の世相を鑑みこの本が話題になり、手軽なkindole版も
出ている事からやっと読んでみる事に。
右でも左でも極端に走って、ぐるっと180度向こう側にまわれば
行きつく先は同じような全体主義の世の中。
気が弱い自分にはとても生きて行けそうにない世界。
この本は、そんな世界は絶対にアカン! と言っている。
民主主義は非効率などと仰る方もいる。
でも人間は弱い。志のある者でも一度強大な権力を握ると保身や
自己欲求の抑えが効かなくなるものだ。
そんな弱い人間同士、足の引っ張り合いや、お互いに牽制をさせて、
極端な世の中に走らせない制度が民主主義だと思う。
最初の理想とはちょっと違うかもしれないが、人間の不完全さを
考えれば、多少遠回りでも民主主義は今の所ベストな制度なのだ。
くれぐれも、思考停止させるようなワンフレーズの甘言、
勇ましくも極端なお言葉には耳を傾けまい。