アダム・グラントという人は、非常に明るい人だ。TEDトークで、自分が子供の頃の黒歴史を公表することでも、笑いを取るためなら堂々と発表することも厭わないところがいい。この本を読んで気づいたのは、彼がお笑い芸人が好きだということ、彼の人となりが良く分かる。テレビゲームマニアなのは意外だったが(笑)。
この人の面白いところは、人の行動の心理を色々なベクトルで考える多様さがあることだ。レビューには他の方々が結構良い要約をしているので参考になる。実は、この本と「
GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代
」は、私が好みとする秘蔵のキーブックなのだ。最悪主義者の私が、このアダム・グラントという人を好むというのは変に思うかもしれないが、この人ほどの人間通であるのは、単なる楽観主義とは違うと私は思っている。どこかシニカルで皮肉屋ではあるからこそ、それを「笑い」に代える効用を理解しているからだろう。最悪主義者のシオランでも「人間という人間に、うんざりしている。それでも、私は笑うのが好きだ。そして、私は、ひとりでは笑うことができない」という名言がある。うんざりしても、ひとりでは笑うこともできないのだから。
話を戻すと、TEDトーク「Adam grant the surprising habits of original thinkers」を視聴すれば、この本の要約のダイジェストにもなっているし、大変簡潔に述べられているので、この本を読む前に視聴すれば、私の様に2時間とかからずに読了するだろう。この本を読んでみようと思った動機が、面白く感じてこの本を当たろうと思ったからだ。勿論、TEDで述べられていない内容もあるが、ワービー・パーカーの話も、レオナルド・ダ・ヴィンチの話もTEDトークで同じ様に述べていた。この本に関しては、解説から読み、8章から1章に戻るというかなり特異な読み方を実践した。実はこの本の欠点を言えば、参考文献リストが無いことで★1つ減らしたのはそれが理由だ。
オリジナルな人は、先延ばしが創造性の源になるとか、何でもオープンせず、秘匿することも必要とか、起業するときには本業を捨てずに慎重に行動するべきだとか、実に私好みでうれしい内容だった。私も書評を繰り返しているが、書くことは嫌いではないだが、何らかの行動が伴わない臆病さに嫌気が差していたので、この本は勇気づけられる思いだったことは正直に告白しておきたい。
監訳者の楠木建氏の言う通り、いちいち述べていることが「普通のこと」ばかりなのだが、斜めに切る視点がこの本を非凡にしている。つまり既存に皆で言われていることを疑ってみる、という視点だ。ダンカン・ワッツ「
偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)
」とかになると、非常に寸鉄釘を刺す様な獰猛さがある。その考え方のベクトルは同じなのだが、アダム・グラントの文章はどこか温かみや優しさを感じる。
これは何だろうと考えた。組織心理学者であるアダム・グラント氏も色々な企業を訪問して、コンサルをすることもある様だが、恐らく聞く力と人への共感力が高いからなのだろう。TEDトークを聞く限り、非常にトークの引き付けがうまく、観客の求めていることをよく理解している。この本のまえがきに、シェリル・サンドバーク(フェイスブックCOO)の推薦文が書かれているが、やはりコミュニケーションの達人とべた褒めに絶賛している。まえがきを読むと、この人、女性に絶対にモテると思うのは私だけではないはずだ(笑)。
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